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鵲屋  作者: 鳩胸 錦
11/13

11話 初代鵲屋の店長


証拠集めは1時間かからずに終わってしまった。

日記、短冊、あの親子の言葉。これだけあれば十分

だろう。


「後は駅に行くだけか。地図を開いてっと……」


この住宅街を抜け、道なりに進めば駅に着く。早く

帰って証拠を提出したいが、ちょうど昼時で腹が

空いていた。僕は鮭と書かれたおにぎりの封を開け、

一口かじった。


「……うーん、やっぱりぼだっこが食べたいな。

 ただの鮭だと塩っ気が足りない気がする」


ぼだっこは秋田県の方言で、しょっぱい鮭という

意味だ。弁当やおにぎりに入っていて、一口食べる

だけでどんどんご飯が進む。僕の1番好きな食べ物だ。

地上に来た時は必ず食べて帰る。


「今日は早く帰らないといけないから、また今度

 食べに来よう」


駅に到着した僕は、エレベーターへ乗り込んだ。

そして、僕たちにしか見えない0番と書かれた

ボタンを押した。エレベーターは静かに上昇し、

やがて扉が開いた。


「待っていたぞ」


「べ、ペテルギウス副隊長……!?」


まさか、本当に待ち伏せされているとは思わな

かった。彼が指を鳴らすと、周囲から星雲隊が現れて

僕を取り囲んだ。


「この短時間で戻ってきたということは、諦めたか

 証拠を掴んだかのどちらかしかない。さあ、一緒に

 来てもらおうか」


腕を後ろに回され、僕はそのまま本部へと連れて

行かれた。隊長室へ通されると、室内にはベテル

ギウスさんと僕の2人だけが残された。


「さあ、証拠を出してみろ」


彼は足を組んで椅子に座ると、顎で僕を促した。

短冊の写真、日記、母親と女の子の会話の記録。

集めた証拠を全て提示した。


「……以上のことから、彼女たちは確実に前に進んで

 いると思います」


「クッ、クククク……はははははっ!」


突然、彼は頭を抱えて笑い出した。


「あの仮面にも言ったがな。お前の法律違反を

 無かったことにするためには、副隊長以上の承認が

 必要だ」


笑みを浮かべたまま、言い放つ。


「私は、最初からお前を無罪にするつもりなどない。

 罪人は裁かれるべきだからな」


「っ……」


ベテルギウスさんは立ち上がり、僕の耳元で囁いた。

 

「無駄な時間、ご苦労だったな」


彼が高笑いをして、部屋から出て行こうとしたその

瞬間。


「副隊長以上の承認が必要、ねぇ?」


「む、誰だ」


廊下の方から低い声が響き渡る。

 

「誰?誰だと?おいおい、ちょっと会わなかった

 だけで俺の声を忘れちまったってのかい」


……あれ?この声、どこかで聞いたことがある気が

する。


「誰だと聞いている!」


彼の怒声と同時に、扉が勢いよく開いた。


「星雲隊隊長にして、初代鵲屋の店長………

 シリウスだ」


「なっ、何だと……!?」


男は背にオリオン座の紋章が描かれている白銀の

ロングコートを翻し、ベテルギウスさんを

見下ろした。


「よぉ、半年ぶりぐらいかァ?」


呆然と立ち尽くすベテルギウスさんの頭を軽く

撫でると、彼はゆっくりと僕の方へ視線を向けた。


「ほら、こっち来いよスピカ」


赤い鋭い瞳に黒髪……そして、この特徴的な声。


「お、おじいちゃん!?」


「おう」


オールバックにしているせいで分からなかったが、

あの時から何も変わっていない。正真正銘、僕の

大好きなおじいちゃんだ。


「っていうか、おじいちゃんって星雲隊の隊長

 だったの!?」


「ん?あァ、言ってなかったかァ」


「うん!」


おじいちゃんは豪快に笑って、ぽんと僕の頭を

撫でると机に足を乗せ、どかりと椅子に腰を

下ろした。


「で、どっから説明すればいい?」


「……全部です。全てお話下さい」


ベテルギウスさんは低く静かに言った。

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