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第六話

「それで…レビンは一体何の用件で?」



 話を戻そうと話について行けずぼーっとしていたレビンに声を掛けるとレビンは背筋を伸ばしてソファに座り直した。



「実は私の妹を助けてほしいんです」



 その言葉から始まったのはこの国に古く伝わる因習についてだった。



「この国には川の氾濫が起きるというお告げを聞いた巫女が川の氾濫が起きる前に少女を贄にして防ぐという迷信がありました。それは今までただの迷信として語り継がれていただけだったんです。ですが、ここ数年の間に異様なほどに川が氾濫を起こすことが多くなって、巫女が迷信を再開し始めたんです。そして今回の生贄として私の妹が選ばれたのです。」



 レビンは何かを堪えるように眉根を寄せ、手を膝の上で握り締めた。



「何度も巫女に言ったのです。どうか妹を生贄にするのはやめてほしい、と。ですが無理でした。『今までだって身内を贄とされてお前と同じような思いをする者は居たのだ』と言われて何も言い返せなくなりました」


「じゃあ、諦めるの?」


「諦められるわけがないでしょう! 唯一の血を分けた兄妹なんですから!」



 メグの言葉にレビンは食い気味に否定した。その勢いに押されたのかメグは「まぁまぁ、一旦落ち着いて」と言ってレビンを宥めようとする。



「妹を助けてくれるなら報酬は惜しみません。ですから、どうか。妹を助けてください」



 勢いよく頭を下げたレビンに対して僕はどうしようかと考える。メグもアリサも少々面倒臭そうだと言う目をしていた。


 確かに面倒臭そうな話ではあるが、本人は至って真面目で誰かの助けを求めている。だからこそ今聞いた話を聞かなかったことにして放っておくことなど出来なかった。



「分かりました。僕たちに何が出来るかは分かりませんが出来うる限りの協力をします」



 僕の言葉にレビンは泣きながら何度も「ありがとうございます」と言った。




◇◆◇




「それにしてもどうするの? 何か案でもあるの?」


「いや…ない」



 レビンさんが帰ってすぐに起きて来たノエルにここまでの話をして4人で揃って朝食を摂っているとメグがそう言って今回の依頼の話を持ち出した。



「言っておくけど、俺は君らが水の国過ぎたら直ぐに王都に戻るからね?」


『えっ!?』



 メグの言葉に驚いたように声を上げたのは僕とノエルだった。



「メグザリーさん、ノエルさん達と一緒に旅してるんじゃなかったんですか!?」


「あれ? 一緒に着いてくるって…?」



 2人で困惑していると今まで話を聞いていたアリサが口を開いた。



「ルシオ様、ノエルさん。この人は水の国の関所周辺の魔獣討伐のために着いてきたのであって、旅には着いてきません」


『えぇ〜!!?』



 僕とノエルの声が部屋の中に響き渡り、メグは耳を塞ぎながらやや困ったように笑って居た。



「……まさか、メグザリーさんが一緒に旅に着いてこないなんて…」



 やっと僕とノエルの困惑が収まって直ぐにノエルはそう呟いた。僕よりもかなりショックだったようだ。


 朝食も食べ終わって4人でこの先どうするか、と話し始めた時にノエルが恐る恐る手を挙げながら「少しいいですか?」と言った。



「実は気になることがあって……」




◇◆◇




「ノエルさん、もしかしてこれですか?」


「それです! それです!」



 アリサがノエルに声を掛けるとノエルは嬉しそうにアリサが見つけたものを見て声を上げた。


 ノエルが何にそんなに喜んだのかというと、橋の下に少しばかり浮く植物だった。


 植物は割れた大きな葉があり花は色が豊富だが、どれもまだ花は閉じており蕾のままであった。



「これは…睡蓮?」



 水の上に浮かぶ植物を考えればこれしか無かったような気がする。そう思ってノエルに問えば「はい、そうです」と笑顔で言う。



「それにしては少し大きいように思うんだけど…」


「あぁ、それは多分、苔と睡蓮とを掛け合わせた植物だからだと思います。水害が多い地域には割と川に植えられていることが多いです。この植物の最大の特徴は水を急速に吸い上げると花が開くということですね」



 そう言ってノエルは手で睡蓮のような植物を手で示しながら説明をしてくれた。



「Water overflow__水よ溢れろ__」



 ノエルの指先から溢れ出した水が睡蓮の上にかかると、睡蓮は少しだけ花を開かせたがその数秒後にはゆっくりと閉じてまた蕾に戻ってしまった。

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