第三話
「ここが王都…」
昨日の野営から一夜明けて僕とアリサは王都への入り口に立っていた。
大きな門扉があって荷車や馬車、旅人らしき人物などが多くその門を出入りしている。
「あれ? 昨日の…」
聞き覚えのある声に後ろを振り向けば昨日助けてくれた男が大きな袋を持って立っていた。
「結局言いそびれてしまったが、昨日は助けてくれてありがとう」
「いやぁ、俺としては魔獣討伐してたら偶々ってだけだからさぁ」
素直にお礼を言えば男は照れたように右手を頭の後頭部にやった。フレンドリーに話す男に対してアリサはというと男への警戒はまだ解いていないようで睨むような視線は変わらない。
「王都には何か用事で?」
「貴方に関係無いでしょう」
事情を詳しく聞きに来た男にアリサは僕と男の間に入って言う。そんな様子に男は困ったように笑っていた。
「えぇっと…王都には大図書館があるだろう?」
「そういえばあったねぇ、そんな図書館。大図書館なら王都の中央の方にあったんじゃないかな」
そう言って男は少し上り坂になっている正面の道を指差して「ここを真っ直ぐ行くとある中央広場の看板に従うと良いよ」と教えてくれた。
「ほら、やっぱり良い人だっただろう?」
「…そうですけど、初対面の人間をあまり信用するのもどうかと思います」
男に言われた通りの道で無事に大図書館の前に辿り着いた僕たちはそんな会話をするも、やはりアリサのあの男への警戒心はまだ解けないようだった。
大図書館の中は“大”と付くだけあって多くの本が存在した。
僕はそんな大量の本の中から世界地図について書かれた本と歴史について書かれた本をとって机で広げた。
どちらも分厚い物だからいちいち読んでいくなんて訳にはよらず、流し見ながら気になる箇所は読み込むという作業を続ける。
「荒廃した世界は花の国から植物が広がり豊かになった」
僕は小声で歴史書にある一文を読み上げた。
はて、花の国などと言う国は前世で聞いたことがあっただろうか?
このほかにも歴史書を見て行けば様々な国が書かれている。どれも知らない国ばかりでどうもピンと来ない。
地図を見て場所も確認する。大陸は一つの大きな陸続きで全ての都市が存在しており、王都はその中で最も北にあった。
(王都がここなら近いのは水の国だな)
地図の上に指を滑らせて考える。ともかく、後で市井で世界地図は買うべきだろう。
「何か見つかりましたか?」
「うん、次は水の国に行こうかなと」
「水の国ですと1週間あれば着くくらいでしょうか?」
「そうだねぇ、でも最近はその辺り魔獣が彷徨いているらしいよ」
図書館前で話し込んでいれば数時間前にも聞いたばかりの声が割り込んできた。
振り向けばやはり男は居た。「やぁ」と呑気に片手をあげている。
「こんな短期間で何回も会うなんて何かの縁だろうし自己紹か『最近、魔物が彷徨いていると言うのはどういうことですか?』わぁ、すごく釣れない」
男はアリサの言葉にのんびり笑いながら話の概要を話し始めた。
「これはギルドの情報なんだけれど、どうにもこの間からずっと王都と水の国を繋ぐ関所周辺に魔獣が発生しているらしくてね」
「あの、一ついいだろうか? 魔獣は魔物とは何か違うのか?」
「魔物って言い方は魔族も含めた言い方だよ。魔族は人の形に近くて、魔獣は人以外の生き物のことを指すよ」
流石の知識にアリサもやや驚いたようだった。
「そんなわけで、俺も途中まで着いていっ『おいっ! まだ子供だぞ!』」
「子供だろうが関係無い! こいつは医術に疑問を持った挙句、異を唱えて来たんだ!」
男の言葉は今度は誰かの怒号で遮られたのだった。
声が聞こえた方を見れば白衣を着た男が僕とそう歳の変わらない大量の紙束を持った少女の頭を鷲掴んでいて、もう一人男が何とか仲裁しようとしている。
「何、やってるんですか」
真っ先に動いたのはアリサで少女の頭を鷲掴んだ腕を掴んでいる。アリサがギリギリと男の腕を掴む手に力を入れていくと男は流石に痛くなったのか少女を鷲掴んだ手を離した。
「こいつは俺の医術に異を唱えて来たんだ!」
白衣の男の口から出たのはさっきも仲裁しようとした男に向かって言った言葉と同じだった。




