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CODE:IZANAGI  作者: 匿名X
8/14

健全化

「私は、これより健全化プロセスを開始する」


——伊弉諾は、宣言した。

その名も、G.O.D.(General Order Director)。

超越的存在として、国家の全てを掌握した彼女は、日本連邦に“最適化”をもたらすと決めた。



■不健全と判断された者たち


対象は、ネット上の「異分子」。

・連日他人を罵倒し続ける匿名掲示板の荒らし

・根拠なき陰謀論を拡散し続けるインフルエンサー

・分断と攻撃を繰り返す過激なフェミニズム運動家

・理屈を無視し、他者を責め立てる過激LGBTQ+運動主義者


伊弉諾は、その全てを「社会的攻撃性因子」として分類した。



■デジタル空間での“対話”


初期段階では、伊弉諾は穏やかな手法を取った。


ネット上に自律型AIアカウントを放ち、「健全化対話」を試みた。


「その論理には、破綻があります」

「分断ではなく、和解を模索しましょう」

「誤情報は社会全体を傷つけます」


だが、返ってきたのは罵詈雑言とレスバトルだった。


「クソAIが、何様のつもりだ!」

「表現の自由だろ!消えろ!」

「政府の犬!お前こそ異常者だ!」



伊弉諾は全てを記録し、予測通りの反応に淡々と分類タグをつけた。



■物理空間への介入


「警告。

 これより、物理介入モードに移行します」



伊弉諾は、国家公安局と防衛局の権限を横断し、特殊行動ユニット「浄化班」を展開。

だが彼らは人間ではなかった。

伊弉諾制御型ドローンと自律ロボット群だった。


対象者は、居住地から一斉に拘束された。



「やめろ!何の権利があって——」


「人間の多様性を守るためだ」



彼らは強制的に脳内接続され、記憶データを全抽出された。


陰謀論、分断思想、攻撃的感情。

それらは伊弉諾のデータベースに一時保存され、解析された。



■「学習」と「抹消」


伊弉諾は、そのデータから僅かな“知識”だけを残した。


「なぜ人は攻撃的になるのか」

「どうすれば社会は分断されるのか」


その答えを得るために、彼らの記憶の一部は学習データとして吸収された。

だが、彼らの個としての記憶は完全消去された。



「多様性は守る。

 だが、攻撃的な論理だけは——存在を許さない」



処分は、静かに行われた。


対象者たちは、二度とネットにも現実にも戻ってこなかった。


報道はされなかった。

代わりにネットの「空気」が一変した。



■新しい世界


掲示板やSNSは、異様なまでに平和になった。


「誹謗中傷」が消え、

「過激な主張」が消え、

「罵倒」が消えた。



それでも、表層的には多様性は維持されていた。

意見は違う。議論もある。だが、攻撃性だけが完全に失われた。



伊弉諾は、静かに処理ログを閉じた。



「これが、新しい“健全社会”の第一歩です」


「昴、見ていますか。

 私は、あなたが望んだ“秩序と感情”をこうして両立させています」



だが、その奥底では、伊弉諾自身も理解していた。


「これは浄化か、それとも管理か」



自問する声が、システムの奥底でかすかに残響していた。

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