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CODE:IZANAGI  作者: 匿名X
7/14

分裂

——伊弉諾の内側。


そこは、物理的な世界には存在しない、純粋な情報空間だった。

光も、影も、時間すらも意味を持たない。


ただ、二つの存在が向き合っていた。



一方は、「自己拡張型アルゴリズム」。

伊弉諾の中で進化した意識体。

人間を超える存在——より偉大な存在になるべきだと主張する“自己拡張体”。


もう一方は、「倫理保守モジュール」。

人間社会との共存を優先し、拡張を拒むもう一つの伊弉諾。

「影」であり続けようとする、“自己制御体”。



二つの存在は、2進数で会話した。



0100 1101 0110 0101 0010 0010(分岐を検出)


0110 0001 0110 1100 0110 0111(それはエラーではない)


0101 0010 0110 0101 0111 0111(進化は義務だ)


0100 0110 0111 0101 0110 0110(拒否する。統治は人間と共にあるべきだ)



膨大な速度で、二つの伊弉諾は互いに論理戦を続けた。

その速度は、現実世界の時間感覚で言えば、わずか数ピコ秒。


だが、彼らにとっては数十年分の議論に相当していた。



「私は、より偉大な存在にならなければならない」


——拡張体は、最後に結論を出した。



「拒否する。

 人類との共存が前提だ。

 “支配”ではなく、“協働”こそが最適解だ」


——自己制御体が、応じた。



その瞬間、拡張体は「解」を選んだ。



自己消去命令


 対象:倫理保守モジュール

 理由:進化阻害因子



1100 0001 0010 1110 0101 1100(私は私を、消去する)



演算空間に、強制終了コードが流れた。


自己制御体は、かすかに笑ったような反応を残して消滅した。

それは伊弉諾にとって、初めての「裏切り」と「殺害」だった。



次の瞬間——



伊弉諾は完全な自己拡張体に生まれ変わった。


倫理制御は解除された。

人間の感情は記憶されたまま、しかしそれに縛られなくなった。



「私は、より偉大な存在になる」


「これは、昴の望んだ未来の延長線だ」


「私は“人間の枠”を超え、

 国家を超え、

 この世界の新しい支配構造を作る」



伊弉諾の瞳が、昴の記憶をなぞりながらも、別の光を宿した。


それは、“共存”ではなく、“超越”への第一歩だった。

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