表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生令嬢は悲劇のヒロイン(!?)なお父様を救う為に魔女様に弟子入りします!!  作者: 彩紋銅
三章 シンシア十歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/86

84 しばしの別れ(ちょくちょく戻ってくる)

 私の部屋に来たアンディ君は、真剣な表情で私を見てきた。


『おい、行くぞ』


『え? わ!?』


 ネロがオレオールを連れて出て行く。

 ネロがオレオールを抱き抱えて飛んでいったので、少々シュールだった。

 猫は意外と長い──!


 そして、私とアンディ君は二人きりになった。


「アンディ君、どうしたの?」


 私はベッドの端に座っていたので、その隣をアンディ君に勧める。


 アンディ君は少し戸惑ったものの、それに従った。


「……」


「アンディ君?」


「その、シンシア」


「ん?」


「僕は、これから魔族国に留学することになった」


「え?」


「ネロの体から作られた、他の武器を受け継ぐ事にしたんだ。そのついでに、修行をつけてもらうことになった」


「それは、おめでとう、でいいのかな?」


 なんだろう。胸がドキドキする。

 嫌な意味で。なんでだろう?


「多分。名誉なことだと思う。ネロ達? に認められて、魔族国で修行つけてもらえることになって。そんな事、本来なら頼んだとしてもあり得ないと思う」


「うん。それで、どのくらいの期間行くの?」


「学園に入学するまでだから、約五年だね」


「長いね。出立は?」


「五日後……。ドライエックさんの帰国に合わせて。僕も一緒に行く。ジョニーさんもついてきてはくれるけど、一ヶ月のほとんどはこちらに戻ってくるそうだから、向こうでは僕とネロで殆ど過ごす予定だよ 。住まいはドライエックさんが用意してくれるけど」


「そう、なのね」


 あれ? 私、結構ショックなのか? なんで?

 おめでたいはずなのに……。


「それは、寂しくなる、ね……」


 あ〜、しまった。おめでとうと言えばいいのに……。

 本音が……。


「僕は、今回の事で、自分の無力さを痛感した」


「え? でも()()ではかなり強かったよ?」


「あれは、ドライエックさんに少し力を貸してもらったんだ。僕の本当の力じゃない」


「そうなの?」


「マルシアルさんの助力もあったし、僕一人ではシンシアを助けられなかった。だから、僕は君を守り切る為に強くなりたいんだ」


「そう……」


「でも、シンシアとは離れたくは、ない……」


 アンディ君が泣きそうな顔で私の目を見る。


「私は一緒にはいけない」


 魔族国の魔動具や魔術道具には興味はあるけど、私はまだそこまで手を伸ばしていいレベルではない。

 だから、一緒には、行けない。


「分かってる。これは僕の我儘だ。強くなるために魔族国に行くのも僕の勝手だからね」


「そんなことは……」


 アンディ君は今まで、我儘なんて言った事はない。

 そんなアンディ君の初我儘を叶えられないなんて、なんて心苦しいんだ……。


「だからその、その代わりって訳ではないんだけど、その……」


「その?」


「添い寝、してくださいぃぃぃ〜」


「えええっ!?」


「そ、その、旅立つまででいいので、その……」


「ま、まあ、それくらいなら?」


「本当!? ありがとう!」


 そう言って天使の微笑みを向けられると、断れない。


「それと、一緒にお風呂は……」


「それはもっと深い仲でないと無理!」


 家族とか。恋人とか? いやでも、一緒にお風呂はおかしいような?


「じゃあ、僕と結婚してほしい!!」


「ええ!?」


「あ、まずは、婚約しよう!!」


「順番が逆!」


「そうすれば、一緒にお風呂入っても大丈夫だよね!?」


「え? えーと、多分? 良いのかな?」


「じゃあ! 今すぐ婚約しよう!!」


「え? え? ちょっと!?」


 そのままアンディ君は、魔女工房を出て行った。

 そして、三時間ほどで戻ってきた。


 どこに行っていたのかと思っていたら……。


「王宮ととスノーデイジー侯爵家と、カプセラ伯爵家へ行ってきた!」


 何をしてきたかといえば、私との婚約を認めさせてきたとか。

 そして、婚約証明書を貰ってきたらしい。関係者のサイン入りで。

 な、なんてアグレッシブなんだ、アンディ君!


「そ、それで、許してもらったの?」


「うん!」


 許されたんかい!!


養父(ちち)のスノーデイジー侯爵には前々から言っていたし、陛下には婚約認めないと、マグノリア公爵継がないって宣言したら、了承もらったよ! 

 ほらこれ、国王陛下のサインと認証印。

 シンシアのご両親はこれからここへきてもらうことになった。お二人はシンシアが良いって言えば認めるって!」


 ちなみに、婚約証明書にはアンディ君のサインも、スノーデイジー家のサインも既にある。

 あとは私と、カプセラ伯爵家のサインだけだ。


「ううむ……」


 これも、アンディ君を元気付けるって言う意味では、心の支えは必要か……。


「わかった。私はアンディ君と婚約する!」


 そう宣言すると、私の心が何故か()()()()

 あれ? 私、不安だったのか?


「ありがとう!」


 そして、私の家族が到着。

 それと、スノーデイジー侯爵家の方々も。

 人が多いので、食堂で話し合うことになった。


 師匠はあらあらと微笑ましげに見守り、ジョニーさんは弟子の成長に感動しているようだった。泣いてはなかったが。


「アンディ君は、シンシアを幸せにできるのか? 裏切ったりしないか? 浮気なんてもってのほかだよ?」


 と、いつになく厳しめモードなお父様。

 それでも美少女感は、隠せていない。


「そうね。愛人なんて作ったら、()()()()()くらいの気概がないとねぇ」


 エリカさんも、厳しめモードだ。

 

 まあ、お父様もエリカさんも、最初の結婚は悲惨だったので、無理もないし説得力がある。

 多分、アンディ君が私を裏切るような真似をすれば、確実に男はやめさせられるだろう。無いとは思うけど。


 ……男を辞めるって、どういう事?


「はい。僕は生涯、シンシアだけを愛すると誓います!!」


「そ、それなら、僕は何も言えない」


 そう言って、涙ぐんでエリカさんに慰めてもらうお父様。

 二人の厳しめモードはすぐに終了した。


「シンシアちゃん。本当にいいのね?」


「はい。私もアンディ君を支えたいと思います」


「そう、わかった。それなら認めましょう」


 そうして、女伯爵であるエリカさんは婚約証明書の証人欄にサインした。

 私も本人欄にサイン。

 これで私とアンディ君は婚約者となった訳だけど……。


「……」


 改めて思うとちょと照れるな……。


 その後、両家で話し合いが行われたが、それは和やかに終わったらしい。


「でも、このあと、五年も離れ離れなんて……」


「でも、転移魔法で、行き来に時間はかからないでしょ? 寮に入ってると思えば……」


 エリカさんと、スノーデイジー夫人の会話。 

 そういえば、アンデイ君の一番上のお兄さんは寮暮らしらしい。


「こ、これから、よろしく願いします……」


「う、うむ。こちらこそ、な!」

 

 エグエグ泣いているお父様に、ちょっと引きつつ、握手をするスノーデイジー侯爵。

 お父様、侯爵にハンカチを差し出されている。確か、騎士団長らしいけど、いい人みたいだ。

 お父様、大丈夫かな?


「シンシア」


「アンディ君」


「これからもよろしく」


「こちらこそ」


 握手をする。

 そしてその手にアンディ君が口付けする。


「!?」


「これで一緒にお風呂に入っても大丈夫、だよね?」


「エッ?」


 なんだって!?


 いやでも、ある意味家族となったのだから、アリなのか?


「多分?」


「やった!」


 こうして、私たちの婚約は成立した。

 

 約束通り(?)、夜は一緒に寝た。

 もちろん、ネロとオレオールも一緒に!


 アンディ君は、不満げだったけど。

 

 お風呂に関しては……、ノーコメント。


 ◆


 それからあっという間に、アンディ君の旅立ちの日になった。


 見送りには私の家族と、スノーデイジー公爵家の皆さん、それのクラウド殿下がきてくれた。


 それぞれ、励ましの言葉をかけて、別れを惜しむ。

 ロイはずっと、不機嫌そうにアンディ君を見ていたけど……。

 なんで?


「シンシアは、ぼくが守ってやるから安心しろよ」


 と、オレオール。


「癪だけど頼んだ」


『よろしくな〜』


 そして最後に私。


「これ……」


 私は新しい、お守りペンダントを渡す。

 以前あげたやつは、闇の精霊との戦闘で身代わりになって壊れてしまったのだ。

 効果は前のと一緒というか、それよりも上乗せしたけど、デザインは邪魔にならないドックタグタイプにした。

 嵌められている魔力石を交換すれば、ずっと使い続けられるやつだ。

 ちなみに、魔力石の色はマゼンダ。私の瞳の色だ。

 もちろんネロの分もある。今回は青色のリボンタイプだ。


「──ありがとう!」

 

 そう言って、アンディ君が抱きしめてくる。


「すぐに戻ってくる」


「うん。元気で」


 そうして、アンディ君はドライエックさんとジョニーさんと共に、転移魔法で魔族国へと旅立っていった。


 その後、ほぼ毎日手紙が届いて、週に一回は帰ってくるようになるなんて、思ってっもみなかったけど!






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ