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転生令嬢は悲劇のヒロイン(!?)なお父様を救う為に魔女様に弟子入りします!!  作者: 彩紋銅
一章 シンシア五歳

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8 お父様救出計画と協力者とお買い物

 ◇


「それで、お父様救出計画、とは?」


 宿題、いや補習を終わらせ、師匠に説明の続きを促す。

 ちなみに、今は、休憩のお茶の時間だ。

 今日のおやつはチョコレートタルト。この世界カカオあるの? 美味しいからいいけど。


「それがね〜。アタシも色々と調べてみたのよ〜」


 師匠の説明はこうだ。

 まず、お父様(ショーン)がルビア伯爵家に婿入りしたのは、ヘザーのやらかしで彼女に婿入りする者がいなくなったのが原因だ。

 そして、ショーンが婿入りせざる負えなかったのは、彼の実家であるレオパルドプランタ子爵領が災害により甚大な被害を受けた事が原因。この辺りには原作にも描かれていた。

 ショーンの実家は資産を全て投げ出し、国の援助も受けたがそれだけでは足りず、その資金援助を受けるためにショーンは、若干十六歳で当時二十三歳のヘザーと結婚した。

 結婚当時、ヘザーのお腹の中にはアーロンとの子供、ポーラがいたがショーンは立場上、文句を言えなかった。


「このルビア伯爵家からの資金援助は、ショーン殿とヘザー女史の婚姻関係が続く限り支払われ、離縁をした場合は全額返済しなければなならない、というものなのよね〜」


「それ、は……」


 本当にお父様(ショーン)は身売りされたようなものなんだな……。

 お父様の実家に関しては仕方ないと言えるけど、せっかく婿入りしてくれたのに虐げるってヘザーどういう神経してるんだ? 自分のやらかしが原因だろうに。


「それで、レオパルドプランタ子爵領は現在、どの様になっているのですか?」


「最近やっと持ち直して来たところね〜。だけど、今ルビア伯爵家からの資金援助がなくなると、少し厳しいかしらね〜」


「お父様はどうあがいても、救われない、と……?」


 指先が冷たくなってくる。

 まさかお父様は救われないのが運命なのか?

 私は、お父様を救えない? そんなの嫌だ! 


「なので〜、ささっと復興して、災害の起こりにくい領地にして、領地が豊かになる特産物を創ればいいわね〜」


「え?」


「それでルビア伯爵家からの援助金は一括で返せば、問題なくショーン殿もシンシアちゃんも離縁できるわね〜。そこにヘザー女史と本命彼氏との仲でも取り持ってあげれば、喜んで離縁してくれるんじゃないかしら〜」


「……」


「それで、かかる資金はアタシが当面は肩代わりするわ〜。これでもお金あるのよ〜。領地改革資金は将来豊かになったレオパルドプランタ子爵家から支払ってもらうとして〜、ルビア伯爵家の援助資金は、シンシアちゃん。あなたへの将来の借金という形になるけどいいかしら〜? 出世払いってやつよ〜」


「もちろんです!」


「金額確認しないで了承するのねぇ」


「……おいくらですか?」


()()()()()()()、二億ドラくらいねぇ」


「二億!?」


 ドラは、この国と周辺国の最低貨幣単位だ。

 貨幣価値は現代日本とそんなに変わらなかったはずなので、日本円の二億円と同じくらいになる。


「ちなみに、領地改革に大体二百億ドラくらいかかるわぁ」


「ヒェッ!」


「でも弟子(友達)価格で百億ドラに負けてあげるわぁ」


「まさかの半額!? ありがとうございます!!」


 二億円……、いや、二億ドラなら一生かけて返済すればなんとかなる、か?

 それにはまず、能力を活かした稼げる仕事に付かないとね!


「まあ、かかる費用は追々決めるわね〜」


「借金の方はわかりました。一生かけてでも返済します。ですが、子爵領の方は何をするんですか?」


 特産物を作る? 銘菓でも作るのか? お菓子の作り方ないんて知らないよ〜? 前世ではホットケーキくらいか作ったことないし!


「実は前々から、理想の魔術都市を造るっていう願望があってね〜。せっかくだからそのモデルケースにしようと思ってて〜」


「それは願ったりです。では特産は?」


「それは、彼女が協力してくれるわぁ」


「失礼します」


 師匠の工房の事務所に入ってきたのは、イケメン公爵夫人エリカさんだった。

 相変わらずの男装の麗人っぷり。


 師匠がエリカさんの分の紅茶と、タルトを準備する。


「ありがとうございます」


「それで、エリカさんが協力してくれるって、どういう事ですか?」


「エリカはねぇ、金属を操る特異魔法を持っているのよ」


「金属を?」


「ええ、たとえばこのように」


 エリカさんは、ケーキ用のフォークを手に取ると、それが一瞬で()()()()()()()

 その後、元のフォークに戻す。


「え? え? すごい!」


「この力でレオパルドプランタ子爵領に、記憶水晶の()()()()()のよ〜」


「水晶は金属ではありませんが、そこはアゲートさんに調整してもらうので、問題ありません」


「鉱脈を創る!? できるんですか? そんな事?」


「できるわね〜。魔女だもの〜」


「現に私の実家の領地で創りましたからね。あちらは魔力鉄鉱の鉱脈ですが」


 前例有り、だと!?


「そ、それで、エリカさんへのお礼はどうすれば?」


 借金上乗せですか? もちろん払いますが!!


「私? そうですね……。特にないですけど。私としては上質な記憶水晶が、安定して採取できればそれで良いですから……」


 記憶水晶は、ゴーレムや魔動具に術式を組み込む(プログラムする)際に、必要不可欠なものらしい。

 それが安定して産出されれば、レオパルドプランタ子爵領が潤うのは間違いない。 

「それならレオパルドプランタ子爵家を、エリカのご実家の寄子にすれば良いわ〜」


「そうですねぇ。いや、しかしそれだと色々()()が出ますね……」


「それなら、チランジア公爵はどう〜?」


「ああ、それなら良いと思います。あそこはゴーレム製造の大商会持っていますから、丁度良いでしょう。私の実家とも友好関係にありますし」


「なら、後でご挨拶に行きましょう」


「ですね」


 なんか、話がまとまった。

 これって、なんとかなるってことだよね!?


 ヨカッタ〜!!


 ◆


 それから二日後。

 私は師匠に呼び出された。

 そして──。


「チランジア公爵との面会を取り付けたよ!」


 師匠の工房にやってきたエリカさんは、いきなりそんな事を言った。


「え?」


「さすが、エリカ。素晴らしいわ〜」


「今週の土の日。午後二時頃に、チランジア公爵のタウンハウスに来るように、とのことだよ」


 今日は月の日なので、五日後じゃん!!


 ちなみに、一週間は七日で、それぞれ月の日、火の日、水の日、木の日、金の日、土の日、陽の日、という名称。

 分かりやすい! 

 昔の転生者が広めたのかな?

 グッジョブであります!! 


「なら、お洒落していきましょ〜! シンシアちゃん、ドレス買いに行きましょうね〜」


「え?」


「でしたら私の叔母の店でどうぞ。ドレスやアクセサリーの取り扱いのお店もありますよ!」


「そう言えばそうだったわね。今すぐ行きましょう!」


「はい」


「ええ!?」


 そういうわけで、お買い物〜。

 転生してから、初めてのお買い物だわ。


 ◇


 王宮から見て南の大通り沿いには、高貴で高級なブティックや宝飾店、飲食店などが立ち並んでいるらしい。

 その大通りを私達は。師匠の用意した馬車に乗って走っていた。

 初めて馬車に乗ったけど、揺れも少なくて、車酔い、いや馬車酔いもしなかった。


 馬車は黒塗りで高級はあるが目立たない仕様。御者は以前私と師匠を乗せて飛んでいた大きなふわふわゴーレムだ。灰色の毛並みで、名前はグリスターというらしい。師匠はなんでこの子だけ、名前つけたんだろう?

 グリスターは御者の席に収まるほどの大きさになっているので、大きさは変えられるのかもしれない。

 御者の席にまん丸のモフモフがいるのは、なんだか面白い。小さな手で一生懸命、手綱を握って操っている。

 特に人目を引いているという様子もなく、人でない()()が街中を歩くのは日常なのかもしれない。よく見れば、人に混じってゴーレムらしきモノもポツポツ見られる。

 まさに魔(法技)術都市!

 

 しかし、貴族向け繁華街は人が多い。みんな、お金あるんだなぁ。

 貴族なら当然かもしれないが。 


 大通りを走っていると、師匠に会いに行った夜の事を事を思い出す。あの時はゴーレムらしきモノは見かけなかったな。

 たまたま出会わなかっただけか、夜は稼働しないのか。


 いやあの時、勇気を出した本当に良かった。

 というか、師匠の工房へは転移で直接行き来しているから、ガチに外出するのはこれが二回目だね。


 そのうち、エリカさんの叔母様のお店に到着する。

 お店はブティックとか呼ばれそうな服屋だ。いや、こちらの世界なら仕立て屋と言った方がいいのか。

 前世のよく利用してた低価格な服屋と全然違う。高級感半端ない!


「お嬢様はミルクティー色の髪にマゼンダの瞳をお持ちなので、ドレスの色は薄めのピンクなどいかがでしょう? あるいはラベンダー色もお落ち着いていて、可愛らしいですね」


 従業員の女性が、次々にドレスを合わせてくる。

 ちょっと、目まぐるしい!

 

「どちらの色も、良いわね〜」


「ええ、シンシアちゃんの元がいいから、どちらも似合いますね」


「いえ、もっと落ち着いた色の方が……」


 師匠もエリカさんもメチャクチャ乗り気だ。

 ありがたいけど、こんな可愛らしい色、前世でも着た事ないよ〜? 喪女だったからね!


「何言っているの〜! ドレスは女の戦闘服よ〜! 付け入る隙を与えないようにきっちり仕上げなきゃダメよ〜!!」


 五歳児ですが!? 

 いや、貴族ならもうそのから熾烈な争いが起こっても不思議じゃないのか?

 普段、放置されてるからそういうの無縁だけどね〜。


「そうですね。ラベンダー色は落ち着いていていいですが、個人的にはピンク系の色合いの方が明るくて良いかと思います。これでチランジア公爵の心を鷲掴みにしましょう!」


 と、エリカさん。

 五歳児ですが!? (二回目)


「そういえば最近、チランジア公爵のご長男様に、二人目のお子さんが生まれたそうですよ」


「あら、それならお土産もたくさん買いましょ〜! あの人、孫に甘いから〜!!」


 ドレスの色は決まったものの、次はどんなデザインがいいか決めるために次々に着せ替えさせられる。

 そして最終的に落ち着いた色合いの、シンプルだけど上品なデザインのピンクのドレスになった。

 子供なので、コルセットはつけない仕様だ。

 ちなみに、ここまで二時間。やっと終わった……。


「次は靴とアクセサリーですね!」


 従業員のお姉さんはとてもにこやかな笑顔でそう言った。


 オウフ……。

 

 結局、靴とアクセサリー選びにプラス二時間かかり、なんとか決まった。

 靴はドレスの色とでサインに合わせたワンストラップの靴。

 アクセサリーはブローチと髪飾りのリボンをつけることになった。こちらもドレスに合わせてある。

 ドレス一式は三日後に師匠の工房に届くらしい。チランジア公爵に面会する前日だな。


「この後は、チランジア公爵様のお孫さんのお祝い品を買いに行くわよ〜」


 ホゲェッ!?


 ……そうしてこの日は、本当にお買い物だけで終わった。






エリカの実家は、魔動具開発をしている大商会を経営している侯爵家。

親戚は色々な商会を経営している、商人気質な一族。

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