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転生令嬢は悲劇のヒロイン(!?)なお父様を救う為に魔女様に弟子入りします!!  作者: 彩紋銅
三章 シンシア十歳

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60 お父様とお出かけ(オマケ付き)

 ◆◆◆


 この所、忙しかった為、本日はお休みになった。

 なので、お父様とお出かけする事になった。

 本当は、エリカさんとロイも揃って家族で出掛ける予定だったのだが、ロイが熱を出した為、急遽二人になってしまったのだ。

 今日は植物園に行く予定だったけど、このままだと前売りチケットが余ってしまう。


 そんなわけで、代わりに一緒に行く事になったのが──。


「本日はお誘いいただき、ありがとうございます」


『植物見てさ〜、何が面白いんだ〜』


 アンディ君とオマケのネロ。


「いや〜、小生もお誘いいただいて、ありがとうございまーす。なんか、悪いですね〜」


 そして、何故か魔族のドライエックさん。

 現在は角を消しており、完全に人間形態になっている。

 なので、お父様は師匠の知り合いの、異国の観光客だと持っている。


 アンディ君とネロはまだしも、何故ドライエックさんがいるのかというと、お父様が魔女工房に迎えにきた時に、たまたま魔女工房にいたのだ。


 植物園のチケットは大人二枚に子供二枚(幼児も子供料金)。

 丁度良かったし、断る理由も無かったので、こんな事になった。

 なお、ネロは荷物扱いなので、無料だ。正体剣だし。いや、竜だっけ?

 どっちにしても、真実を知ったらキレそうだ。


 私たちは馬車に乗り込み、植物園に向かう。

 席順は、私とお父様。ドライエックさんとアンディ君で座っている。ネロはアンディ君の膝の上だ。


 植物園は巨大な温室があり、冬でも大人気の施設だ。

 寒さの残るこの時期でも、ロイも楽しめると思い、数日前からチケットを手配していたのだった。

 それに、植物園は完全予約制の為、一日の来園客の上限が決まっている。

 その為、ゆっくりと見て回れるのだ。


「いえいえ。せっかくクリムソン王国に来てくださったんですから、楽しんでください」


 と、お父様。


「ありがとうございます」


 そう言って、ドライエックさんは私をみる。

 線目が開かれ、金色の瞳が覗く。


 な、何だろう?


「魔剣ネロの本体を直したのは、あなたですか?」


「え?」


 魔剣ネロの本体って、アンディ君と初めて会った時に彼の中で見たあの剣?


「は、はい」


「なるほど。良き特異魔法をお持ちだ」


「分かるのですか?」


「ええ。長く生きていると色々分かるし、出来るようになるのです」


「へぇ〜」


「治癒系魔法は使えないようですが……。通常とは違うアプローチで何とかなるかもしれませんね」


「え? 本当ですか!?」


「ええ──。あ、植物園が見えてきましたよ!」


「は?」


 話はそこで有耶無耶になった。


 ちょっと〜、私、治癒系魔法使えるようになるの〜?

 教えてから、楽しんでよ〜。


 ◇


 植物園は普通に楽しかった。

 外には見事な庭園もあるが、メインは巨大な温室。

 温室は五感をテーマに、香りの庭園、色彩の丘、触れる森、音の竹林、味覚の菜園の五つのエリアに別れている。


 香りの庭園のエリアは、その名の通り香りがテーマ。

 季節ごとに異なる香りが楽しめるように、ラベンダー、ローズ、ジャスミン、ミント、レモングラス等々、芳香を持つ植物を集めている。

 特定の時間帯には、専門家による香水のブレンド体験やハーブティーの試飲会も開催され、嗅覚を存分に使って楽しめる。

 お土産売り場には、ここだけでしか買えない香水やお茶なども取り揃えられていて、大人気。


 色彩の丘は、色鮮やかな花々が咲き誇るエリアだ。

 虹色をテーマに、赤、オレンジ、黄、緑、青、紫などの色ごとに花々が植えられており、まるで絵画の中を歩いている様な気分にさせられる。

 季節を代表する花も植えられており、一年中、目を楽しませてくれる。

 この世界、光画と呼ばれる写真もあるので、それがもっと普及すれば映えスポットになっていただろう。


 触れる森のエリアでは、普段触れることのない植物の感触を体験できる、いわゆるふれあいコーナーだ

 柔らかい苔、ざらざらした木の幹、ツルツルした葉、ふわふわした綿毛など、様々な質感を持つ植物が集められている。

 子供でもが安全に触れられるように、トゲや毒のある植物は排除し、五感の中でも特に触覚を研ぎ澄ますための工夫がされている。


 音の竹林は、静かで落ち着いた雰囲気が特徴のエリアだ。

 温室の中だが、魔術装置で定期的に風が吹き、それが竹林を吹き抜ける。その際の葉を揺らす音、竹の幹がこすれ合う音、そして水琴窟から聞こえる澄んだ水の音など、自然の音を静かに楽しむことができる。

 何故か枯山水みたいな庭園もあり、企画者あたりに転生者の気配を感じる。

 瞑想部屋などもあり、ここでは心を落ち着かせ、瞑想的な時間を過ごすことができる。


 味覚の菜園のエリアは、実際に食べられる植物がテーマ。

 ハーブや野菜、果物が栽培されており、収穫体験や、採れたての食材を使ったカフェやレストランなどがある。

 食について学べるし、自ら収穫した食材を味わう体験もできる。

 ちなみに、ここのレストラン、お値段お手頃ながら、かなりレベルが高い。


 そして、それぞれのエリアには、そのエリアのテーマに合った売店があり、たいてい買い過ぎる。

 また、園内はサボテンを模したマスコットキャラの様なゴーレムが植物の世話をしていたり、植物の解説やお客の案内などもしている。

 そのキャラクターグッズも大人気らしい。

 ロイのお土産にこのマスコットキャラのぬいぐるみを買った。エリカさんには、ハーブティーのセットだ。


 そんなわけで、すべてのエリアを巡り終わって最後にレストランでお食事。

 予約制なので、ゆっくり見られたの良かった。


「午後はどうします?」


 食事をしながら、お父様が問う。

 

 エリカさんとロイと一緒に出かける時は、お昼を食べるとロイがお眠になるので、そのまま帰るのが常だったので、午後は特に予定はない。


「あ、でしたら、お買い物にいきましょう! 職場にお土産買いたいんで!!」


 と、ドライエックさん。

 魔族もお土産って買うんだね……。


 というわけで、エリカさんに午後の予定を連絡して許可を取ってから、ドライエックさんの買い物に付き合うことになった。

 観光用の王都マップを見ながら、行き先を決めて向かう。


 ドライエックさんが希望したのは、北東区にあるゴーレムや魔動具のジャンク部品を売っている店。

 こんな店あるのか。

 こういう国だから、自分でそれらを作る人々もいても不思議ではないけど。

 ドライエックさんは目ぼしいパーツを次々に購入し、亜空間収納(アイテムボックス)に入れていく。

 あとは、新品の記憶水晶を複数。まだ術式を刻んでいない、まっさらな記憶水晶だ。

 これらは友人位頼まれた買い物らしい。

 自分用には、アンダースノウ製の高級生活魔動具を買っていた。


 次に魔法横丁と呼ばれる場所へ。

 こんな場所あるのか!?

 ここはいわゆる、少々グレーな不思議なお店が立ち並ぶ一角。東の冒険者向けの店の奥にある。

 眉唾なお店が殆どだが、ドライエックさん曰く本物もあるらしい。

 ドライエックさんは、本物らしい店でいくつか買い物をした。

 その店の店主の瞳が縦に割れていたので、魔族だったのかもしれない。


 最後に貴族向けの高級、装飾品のお店へ。

 しかしここにきて、ネロが空腹を訴えてグズったので、ドライエックさんとお父様がお店へ行って、私とアンディ君とネロは、テラス席のあるカフェでおやつタイム。

 貴族向けの高級店が立ち並ぶ場所なので、防犯面もバッチリだから、子供だけでも比較的安全だろうとの事。

 アンディ君強いし。

 席は二人がすぐ分かるようにテラス席。

 テーブルにはパラソルがついているので、急な雨でも安心だ。直射日光も防げるし。

 ちなみに、ドライエックさんは、妹さんへのお土産を選ぶらしい。


「この国特有の宝石が付いたアクセサリーが欲しいって、ドライエックさん言ってたけど、この国特有の宝石ってあるのかな?」


「う〜ん。装飾用の貴石も多少は産出するけど、他の国ほどではないからな〜。強いていうなら、それこそ記憶水晶とか、魔力鉄鋼、緋色銅の方が有名だし……」


「記憶水晶を使ったアクセサリーとか?」


「無いとは、言い切れないね……」


 お洒落よりも産業の我が国。


 そんなことを話していると、ふと影がさした。

 顔を上げると、一人の女性がすぐそばに立っていた。


 見たことがある。

 艶やかで緩やかなウェーブのかかった金髪、ラズベリーレッドの瞳の美人。

 外出用の、ピンクのドレス。


 あ、交流会で迷った時に会った──。


「こんな所でまた妖精さんに会えるなんて、なんて幸運なのかしら! しかも二人も!!」


「え?」


「私と一緒に来ない? きっと今よりも、もっといい生活ができるわ!」


 そう言って、その人は私の手を掴む。


「あ、あの!?」


 確かヴェネッサ殿下だっけ? 王妹の?


「どうしたの? ああ、食べている途中だったわよね! ごめんなさいね!! それならまだ何か食べる?」


 ヴェネッサ殿下は手を離し、近くの席の人から、メニューを奪ってパラパラと見ている。

 その席の人は注文前だったので、不服そうに離れた席に移った。


 というか、何なのこの人。話が通じなそうで怖いんだけど!?

 

 あと、アンディくんの殺気がヤバい! 食事を邪魔されたから、というわけではなさそうだ。


「失礼ですが、()()()()()()()()()? いきなりきて失礼ではないですか?」


 と、アンディ君。

 知らない、ということにするらしい。

 ネロはいつの間にか姿を消していた。アンディくんの影の中に引っ込んだようだ。


「あら? そういえばそうね。こちらへ戻ってきてからは、表舞台に立つこともなかったし、私を知らない子供がいても不思議ではないわね!」


 ヴェネッサ殿下は改めて名乗る。


「ヴェネッサ・へデラ・クリムソン。国王陛下の妹よ」






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