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5 特異魔法ってなに?

 ◆


 魔女様の弟子になり、私は屋敷を抜け出して魔女様、いや、師匠の工房へ通う事になった。

 そしてまずは魔法について、教えてもらっていた。

 勿論、家族や使用人には内緒で。

 通うと言っても、ホワワにより師匠の工房に転送されているだけなので、徒歩ゼロ秒だが。


 あれからお父様はお母様の夜の相手はしていないっぽい。

 覗き見をしたわけではない。フワワ経由で師匠から教えられた。

 どういう訳かというと、お母様は寝る前に必ず酒を飲むらしく、フワワがそこに睡眠薬を入れて朝までぐっすり眠らせているらしい。

 薬は師匠お手製で、転送魔法でフワワに送っているそうな。

 すごい。

 流石に昼間の仕事の方はどうにもならないが、夜の負担が無くなり、最近のお父様は顔色が良いので少し安心した。


 それでも一ヶ月もすれば睡眠薬に耐性が出来てしまうので、それまでにお父様を助ける計画を立てて実行しなければならない。


 そして今日は、自分の魔力の属性や特異魔法、ついでに聖女適性を調べる事になった。

 平民、貴族問わず、大抵の子供は五歳から十歳くらいの間に自身の魔力量、魔力の属性、特異魔法の有無、そして女の子なら聖女の(浄化)能力の有無を神殿にて調べるのが一般的らしい。

 一応、協力金みたいなものが支給されるので、拒否する人は基本的にはいない。


 調べ方は、王都なら神殿。地方なら最寄りの小神殿もしくは教会などで行われる。

 やり方は鑑定水晶に触れるだけ。

 赤なら火、青なら水、黄なら土、緑なら風、黒なら闇、白なら光属性となる。それプラス、聖女の適性があると虹色に光るらしい。

 因みに、複数の属性に適性がある場合は、その分の色の光が輝くとのこと。

 測定した時点で適性がなくても、修行したり精霊と仲良くなると使えるようになることもあるとか。


 特異魔法はその人が特別に持っている魔法。

 普通の魔法では再現不可能なものすごく珍しいモノから、普通の魔法を術式無しで発動できる程度のモノまで様々。

 持っている人も少ないが、当たり外れもあるので、持っているからといって一概には喜べなかったりもするらしい。


 聖女の能力は、瘴気を浄化するというモノ。

 完全に血筋による発現になるので、適性が無い場合はどうあがいても聖女にはなれない。

 治癒などが使える光属性の魔法と親和性が高いので、聖女は光属性の適性がある場合が多いらしい。


 なお、聖女としての能力は瘴気の浄化のみらしく、その能力は聖女神から下賜されたもので、聖女神の管轄となる。その他の属性は、精霊によって使用許可を得たもので、精霊王の管轄になるらしい。

 瘴気が浄化出来るのは聖女だけなので、その他の魔法が使えなくても重宝され、無償で聖女教育を受けられる。この為、聖女は適正適性さえあれば身分にとらわれず、女性が活躍できる人気職らしい。


 特異魔法、聖女適性は持っていない人の方が多いが、魔力と魔力の属性自体は誰でも持っているので、必ず何かしらの結果は出るそうな。

 血縁があると、似たような特異魔法が発現する事もあるとか。


「でも魔女(アタシ)なら、神殿なんて行かなくても調べられるんだわ〜。魔女って大体なんでも出来るからね〜」


 そう言って師匠は、大人が両手で持てるぐらいの大きさの、透明の玉をテーブルの上に置いた。

 転がらないように、玉の下には転がらないように小さな座布団(クッション)が敷かれている。

 前世でいう水晶玉、でいいのだろうか? 曇りもクラックもないので、人工水晶かガラス製に見える。

 天然石ならめっちゃ高額になりそうな一品だ。


「これは?」


「鑑定水晶、それの小型版ってところかしら〜。これのでっかいのが神殿にあるのよ〜」


 ああ、これが!

 五歳児の私からすると、これで小型版!? って位の大きさだ。

 神殿の鑑定水晶はどれくらいの大きさなんだ?

 ……まあ、見る機会は無さそうだな。

 

「なるほど〜」


 もしかして結構貴重な品なのかも?


「それじゃあシンシアちゃん。この水晶玉に両手で触れてみて〜」 


「は、はい」


 師匠に言われた通りにする。

 すると手の平が吸い付くというか、何かが抜けていく感じがした。

 そして水晶玉は白い光を放つ。


「あらあら〜。属性は光ね〜」


 光属性は治癒や肉体強化など、肉体に作用する魔法が得意だ。あと防護とか光そのものだっけ。

 そういえば、ルビア伯爵家は治癒魔法が得意な一族なのだった。


 次に水晶玉に文字が浮き上がる。

 『分析(アナライズ)』と『修復(リペア)』?


「あら〜、特異魔法を二つも持っているのね〜。しかも、分析と修復〜! 魔力量も多いし、素晴らしいわ〜。聖女とその他の属性のないみた〜い。でも、修行すればどの属性も使える可能性があるから落ち込まないでね〜。聖女は無理だけど〜」


 聖女の適性が無いのは想定内。


「分析と修復、ですか? どういう魔法なんですか?」


「分析は物事の状態などを調べる能力。人によって、調べられる内容は違ったりするわ〜。修復は生き物ではなく、()を治す能力。物専用の治癒と思えば良いわね〜。どちらも」アゲートの魔女(アタシ)の弟子に相応しい特異魔法だわ〜」


「なるほど」


 そういえば、師匠は修正とかメンテナンスが得意らしい。


「ルビア伯爵家は、光属性の治癒魔法が得意な一族だったわね〜」


「はい」


「なら、修復はそれが変異したものかもね〜。だとしたら、分析は父方の方の特異魔法かしら〜。シンシアちゃん、お父様のご実家のお名前は〜?」


「えーと、確か……」


 昔、お母様がお父様を罵倒する時に、言っていたな。


「レオパルドプランタ子爵、だったと思います」


「あら〜、丁度いいわ〜」


「え?」


「ウフフ、こちらの話よ〜、気にしないで〜


 ◆


 気づけば師匠と初めて出会ってから、五日が経っていた。

 家庭教師が来る日は工房には来れなかったので、師匠の工房に行ったのは実質三日ほど。 


 この日はついに、魔法の実践を行うこととなった。


 でもまずは、座学。

 この世界は神々や精霊の力がいまだに強く残っているが、神は基本的に人のやる事には不干渉。

 ただし、相当やばいことをすると、神罰的なことを受けることもある。大抵は能力剥奪くらいだが、過去には国が滅んだ事もあるとか。

 精霊は魔力を管理する神の使いみたいな存在。基本的に見えないが、体質や魔力量によっては見えるかも。

 こちらも人のやることには神々と同様不干渉。しかし失礼を働くとやっぱりその地の魔力が枯渇したりして、よくないことが起きるとか。

 その長は精霊王で、神様の一柱。なぜか精霊神ではなく精霊王と呼ばれているらしい。

 その下にそれぞれの属性の長がいるとか。


 瘴気はこの世界に焼き付いた、生きとし生ける全てのモノを殺すための呪い。

 聖女による浄化、もしくは浄化薬によって無効化できるが、土地や物に焼き付いた瘴気は聖女でないと浄化できない。

 瘴気の発生原因は魔力の元である魔素の流れが淀んだり、戦などの多くの死が蔓延していた場所のような明らかに原因がわかる場所のほか、全く何もない場所に突如として発生する事もあるらしい。

 瘴気が濃くなると、魔物が発生する。

 魔物は移動する瘴気発生源で、生き物を見つけると人、動植物問わずに滅ぼしてくるので、完全討伐対象。

 討伐には聖女の同行が必須。

 似た存在に魔獣がいるが、こちらは在来の生き物が魔力によって変異し、繁殖した存在で、瘴気は発しない。

 その肉体から採取される素材は、様々な物に加工される。

 ちなみに、この国で瘴気は特定の場所にしか発生しないので、王都にいれば魔物の脅威はないらしい。

 聖女様達、暇してない?


 ちなみに私の住んでいる国は、クリムソン王国。

 ルベル大陸にあり、魔法技術、略して魔術が発達した国で、特にゴーレムや魔動具製作が盛んな国。

 それを伝えた魔女はアゲートの魔女(師匠)の師匠に当たる人だとか。

 ……師匠、何歳? それとも、前世の話?


 貨幣単価はドラ。

 この通貨はルベル大陸ではどの国も一緒。他大陸のほとんどの国もドラらしい。

 貨幣の種類は小さい順に、鉄貨、小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、白金貨。

 気候には四季があるけど、前世の日本と比べると、冬以外はそこまでキツくないらしい。

 冬は多くの地方領地で(ドカ)雪が降るため、殆どの領地で都市機能が停止する。

 王都近郊はそうでもないけど。

 雪かきにゴーレムは大活躍らしい。

 最近はそれを緩和する魔術装置も作れられているが、自然の摂理を人の手で変えるのはどうかと議論になっているとか。

 ちなみにルビア伯爵家の領地は王都に近いため、大雪の影響は数ない。私は行った事はないので、詳しくは知らない。


 多くの国で上下水道は整備されている。

 なので、蛇口を撚れば水が出るし、水洗トイレも普及している国が多いし、水に流せるトイレットペーパーも有る。

 これは昔、私と同じ転生者や、転移者などがいて、色々()()した結果らしい。

 まあ、田舎などはまた別だが。

 とにかく先人の皆様、ありがとう。


 そうして座学が終わり、ようやく魔法の実践だ!


 魔法を使うには、まずは自身の魔力の流れを認識するところから始める。

 自分の魔力が認識できればあとは簡単、らしい。……師匠の簡単がどれくらいのものかはわからないが。

 一人でやると時間がかかるらしいが、他人に魔力を流してもらうとわかりやすいとか。

 というわけで師匠にやってもらうと確かに、体の中? を巡る何かを感じることができた。


 ナニコレ!? いや、魔力だ!!


「魔力の流れがわかった? それなら、今度は自分の魔力だけを感じてみて」

 

「はい……」


 目を瞑り、自身の魔力に集中する。

 

 お? おお?


 青白い光みたいのが流れているのを感じる。いや、見える? 目で見ているのではなく、脳裏で見ているような? 第六巻第六感ってやつ? いや、分析の力かも! 違うか!? 分からん!!


「わかった? それじゃあ、しばらくはそれを続けて」


「はい!」


 ……今日の実践はそれだけで終わった。


 ◆

 

 それから二日後。


 なんとか自分の魔力を認識できるようになったので、今日から本当に本当の実践だ。

 私の使える光属性の魔法は、治癒、肉体強化などの肉体に関するものが多く、攻撃魔法は少ない。

 理論上は同属性の魔法は使えるらしいが、やはり個人で得手不得手はあるようで、私は肉体強化と防御魔法には適性が高かったが、生物の治癒魔法には殆ど適性がなかった。これは修復が特異魔法だからかもしれない。

 その他は平均的。修行すれば使えるそうだ。

 分析の方も人によって分かるものが違うらしいが、こればかりば使ってみないとわからない。


 ちなみに特異魔法は、なんの勉強や事前準備なく使える個人が有する魔法らしく、前世の世界でいう超能力扱いらしい。もちろんある程度修行しないと、精度や威力は上下するし、手順や時間は掛かるが特異魔法を持っていなくても一応は再現は可能らしい。

 

 まずは修復の魔法からやってみる事になった。


 修復の魔法は物を治す魔法。

 言い方を変えれば、物を治癒する魔法だ。


 とういうわけで、私の適職は修理師という事になるか?

 この国では、魔動具や魔法技術が発達しているので、おそらく食いっぱぐれることはないだろう。

 いやむしろ、ビッグマネーの予感!?

 優秀な修復士になって、ホイホイと稼いでみせる! まだ借金がいくらになるかは、わからんけどね。


 っと、私のビッグな野望は置いといて、修行修行。

 私は師匠に渡された、真っ二つに割れた皿を治す事に集中する。

 

 師匠にコツを聞いたが、師匠は修復の魔法は持っていないらしく「わからないわ〜」といい笑顔で言われた。

 

 師匠?


 なのでどうやって治しているのかと聞いたら、普通に道具を使うのと、生物用の治癒魔法の設定を少しいじって直しているらしい。

 え? 魔法の設定って弄れんの?

 いや師匠というか、魔女様たちは普通とは違うので考えるだけで無駄か。


 さて、割れた皿をくっつける作業に戻ろう。

 とりあえず、魔力を皿に流してみる。

 うーん、皿が魔力を帯びただけでくっ付く気配がない。

 

 前世で皿を治すといえば金継ぎ、だっけ?

 確か漆かなんかに金粉混ぜて接着剤にするやつ。

 それなら魔力を接着剤がわりにするとか?

 やってみるか。


 お、くっ付くいた?

 ……いやダメだ。

 魔力を流している間はくっ付いているが、止めると取れてしまう。


 うーむ。

 なら治癒魔法に置き換えて考えてみるか?

 治癒魔法は、生物の怪我や病気を治す魔法。

 今の状況は生物が、怪我をしているような状態だ。

 生物の怪我を治癒魔法で治す場合、大抵は魔力を使って傷を治す。当たり前だけど。でも、それが相手のか術者のかは知らんが。

 これは生物の回復力を高めているのかもしれないし、魔力を回復力に置き換えているのかもしれない。

 回復魔法についてはよくわからないが、多分そんな感じだろう。

 

 では、物の怪我をした(壊れた)状態とはなんだろう?

 元々、くっ付いていた原子が衝撃かなんかで離れてしまって、それが物全体に広がって割れてしまった状態。

 しかし、物には回復力はない。

 金属なら一度溶かして再形成すればいけそうだが陶器の皿はそういうわけにはいかない。

 それを再びくっ付ける。再生する。修復する。

 接着剤ではなく、再び原子同士をくっつける? 

 いや()()()()()

 

「……」


 私は、割れた縁同士を合わせ原子が混じり合い、再びくっ付けるようなイメージを浮かべながら魔力を流した。

 すると、割れた縁青白い光が走り、そして、くっ付いた。


「お、おお!?」


 しかし、修復箇所はガタガタだ。というか、少しズレている。

 失敗だぁ〜!

 ……いや、たとえ失敗でも修復の力なら、ここから直せるのでは?

 そもそも、くっ付いてはいるのだから失敗ではないのでは?

 うーむ、何かが足りない? 






クリムゾンではなくクリムソン王国です。


濁らない理由? なんとなく!

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