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転生令嬢は悲劇のヒロイン(!?)なお父様を救う為に魔女様に弟子入りします!!  作者: 彩紋銅
二章 シンシア七歳

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32 襲撃後

 ◆


「酷いな……」


 お父様が顔を顰めて呟いた。


 その連絡を受けたのは、昨日のことだった。

 エリカさんとアンディ君を祝うパーティーのあった日の深夜、エリカさんの商会兼工房は何者かによって襲撃を受けたのだという。

 幸い、死亡者はいなかったが、警備のために夜勤をしていた従業員が、怪我を負ったらしい。


 そしてエリカさんの商会兼工房に様子を見に訪れると、酷い有様だった。

 建物自体は無事だが、中は酷く荒らされており仕事どころではないだろう。

 あ、併設している事務所の方は無事みたいだ。


「あ、エリカさん!」


 私はエリカさんの姿を見つけて駆け寄った。


「シンシアちゃん。ショーンさんも……」


 いつも気丈なエリカさんも、今は少し憔悴しているように見える。


「エリカさん、無事で良かった!」


 その傍には従業員の若い女性、アナさんが心配そうに寄り添っている。


「お怪我などは?」


 私とお父様は矢継ぎ早に問いかけてしまう。


「私は大丈夫です。でも、夜勤をしていた従業員が怪我をしてしましました。命に別状はないのですが……」


 そう言って、エリカさんは肩を落とす。

 エリカさんは、工房から少し離れたところに家を持っているので、無事だった。

 従業員は工房の近くに専用の寮があり殆どの従業員がそこで生活しているらしいが、そちらも被害はないそうだ。


 ちなみに、エリカさんの商会の夜勤の仕事は、工房内の見回り。つまりは夜の警備だ。腕っぷしの強いおっちゃん達が多いので、みんな自衛を買って出ていたらしい。

 しかし今回は彼らを油断をさせたところで大人数で工房内に押し入り、警備していたおっちゃん達を昏倒させてから工房内を荒らしに荒らしまくった。そして逃亡。

 護衛用のゴーレムも置いていたが、数にものを言わせて破壊されていたようだ。


 幸い、併設している事務所の方は無事で、事務所内の金品なども無事。

 工房内も荒らされてはいるが、特に盗まれていたものはないらしい。

 盗まれたものがなく、魔法や魔術を使った痕跡はないので、嫌がらせや脅しが目的で実行犯は魔法に詳しくないか、魔力で足が付くのを恐れたのではないかとのこと。

 丁度、出来上がった商品は納品済みで、他商品はまだ時間的余裕があるものばかりらしく、その当たりは運が良かったと言える。


 すでに衛兵による見聞は終わっており、今後しばらくは警備のために数人が配置される。この辺りの警備も強化するらしい。


「犯人に心当たりはあるんですか?」


「確定ではないですが……」


 エリカさんが暗い顔をする。心当たりがあるんですね?


「これでは、流石に当分仕事になりませんね。お客様方にご連絡しないと……。事務所が無事で良かったです。あとは護衛用ゴーレムをなんとかしないといけませんね! すみません、仕事ができなくても忙しいみたいなので、これで失礼しますね! 行きましょう、アナ」

 

 エリカさんは、大袈裟に元気よく振る舞いながら、帰って行った。

 アナさんも頭をぺこりと下げて一緒に戻って行く。


 そんな二人を私とお父様は沈痛な面持ちで見送った。


「お父様、私はエリカさんにたくさん助けられました。今度はエリカさんを助けてあげるべきだと思うのです」


「……そうだね。何か、協力できることがあれば良いんだが……」


 ◇


 私達は魔女工房に戻ってきて、その事を師匠に相談する為に師匠の部屋に突撃した。

 ちなみに、今日は陽の日なので、仕事は休みだ。


「そうねぇ。私の大切な友人のエリカに酷い事をした人間なんて、全身の皮を剥いで塩漬けにしたいところだけど、このご時世そんな事をしたらこちらが怒られちゃうものねぇ〜」


「師匠、気持ちはわかりますが、おっとりと怖いこと言わないでください。あと、どのご時世でも怒られるだけじゃ済まないと思います」


「あら、ちゃんと後で元通りに治すから大丈夫よ?」


「そういう問題ではないです〜」


 師匠の冗談はいつもと変わらない調子でぶっ込んでくるので、本気かそうじゃないかがわかりずらい。


「アタシの護衛ゴーレムを派遣したいけど、ちょっと難しいわねぇ。レオパルドプランタ子爵領にほとんど貸し出しているし……」


「そうでした」


 お父様のご実家のレオパルドプランタ子爵の領地は現在、記憶水晶の採掘でかなり裕福になった。

 その裏側には私や師匠、そしてエリカさんが色々と頑張ったのであるが、公には秘密。

 その為、色々とガラの良くない方々もやって来るので、師匠の護衛ゴーレムが欠かせないのだ。一応、庇護者のチランジア公爵の伝手で、騎士も派遣してもらっているけど念には念を、なのだ。

 そろそろ、私兵を雇おうとか、爵位を上げようかとか色々話も上がっているらしい。

 当主のローマン伯父様は、渋っているみたいだけど。


 ちなみに、この護衛ゴーレムは仁王像のような姿をしている。エリカさんのところで使っていたゴーレムは、プレートアーマー(全身甲冑)を着込んだ、人のような見た目だ。もちろん中に人は入っていない。こちらは現在、修復中だ。


「それなら、チランジア公爵に協力してもらいましょう! ……エリカはしばらくご実家に帰ったほうがいいかもしれないわねぇ。護衛ゴーレムの手配が済むまでは、丸腰になるし〜」


「なるほど、チランジア公爵の商会はゴーレム開発の先駆者ですからね。ウチの実家にも協力してもらっていますし……」


 と、お父様。


「エリカのご実家は、魔動具の先駆者の子孫よ」


「え? ……ああ、そうか。アンダースノウといえば、アンダースノウ侯爵!」


「そうなんですか?」


 そういえば魔女工房にはたまに一般の人も修理品を持ち込むけど、その商品には殆どアンダースノウのロゴマークがあったような?

 ちなみに、アンダースノウのロゴマークは、雪だるまみたいな形をしている。


「チランジア公爵家、アンダースノウ侯爵家、そしてスターアイズ公爵家のご先祖様は、アタシの師匠であり親友のシナバーの魔女の弟子だったのよ〜」


「そうなんですね」


 そういえばそんな話を前にしたかも?


「ゴーレムのチランジア。魔動具のアンダースノウ。医療器具のスターアイズという感じでこの国では有名だね」


 と、お父様。


「スターアイズって、なんか聞いたことがあるんですが……」


 なんだっけ?

 ()()の『リザンデラ』にもチラッと出てきた気がするけど、あまり覚えていない。


「ああ、チランジア公爵家のライバルみたいな感じだよ。……その、ルビア女伯爵の庇護者でもある」


「あ!」


 つまりは私の実母であるヘザーの協力者。

 

「ルビア女伯爵は治癒魔法が得意だったし、その辺りで協力関係にあるんだろうね。たまに邸宅に来ては彼女と何かを相談していたよ。僕には内容は教えてくれなかったけどね」


「悪巧みじゃないですか?」


「多分ね!」


 昔はヘザーの名前を出すのも嫌がっていたお父様も、最近では軽口を言える程度には何も思っていないらしい。

 トラウマが少しでも良くなってくれていれば良いけど。


 その後、師匠は護衛ゴーレムの代わりに、エリカさんに連絡&転送用のフワフワゴーレムをつけることにした。私やお父様、アンディ君に付いている子達と同じヤツだ。

 クリーム色の毛並みの子でポワワと命名した。エリカさんの魔力も記録(使用者登録も)したので、これでいつでもエリアさんと通話できる。


 チランジア侯爵にゴーレムを貸し出してもらう件やご実家に行く件も納得してもらい、後日護衛も兼ねて、私とお父様、それと師匠が一緒に行くことが決まった。


 私とお父様、いらなくない? と思ったが、エリカさんのご実家の領地の近くにメンテナンス予定の魔動装置があるらしい。なので、同行することになった。

 私が同行するのは、修行の一貫との事だ。お父様も研修的な感じらしい。


 出発は四日後となった。






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