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転生令嬢は悲劇のヒロイン(!?)なお父様を救う為に魔女様に弟子入りします!!  作者: 彩紋銅
二章 シンシア七歳

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24 魔剣調伏?

 私がサンドイッチをアンディ君の目に置くと、ケンカを買ったと言わんばかりにアンディ君の影から影の触手が伸び、サンドイッチを掻っ攫って行く。


「わ、わわっ!」


 慌てているアンディ君はちょっと可愛い。


「影の方が食べても、アンディ君がお腹いっぱいになるわけじゃないんだよね?」


 今更だけど確認。


「うん」


「なら、まだまだ大丈夫そうだね! クチーナさん、おかわり!」


「アイヨー」


 そうして次から次にサンドイッチをおかわりし続けると……。


『──っ』


 とうとうアンディ君の影は、サンドイッチに触手を伸ばさなくなった。


「これでお腹いっぱいってところかしら?」


 実にサンドイッチを七皿ちょいを完食。

 ……結構食べたわね。


 八皿目には二つサンドイッチが残っていたので、私とアンディ君で食べ切る。


「ええっと? シンシア、アンディ君。これは?」


 お父様とジョニーさんが食堂にやってくる。

 私とアンディ君の前には、サンドイッチの乗っていた皿が積み上がっている。

 まあ、不思議な光景だよね。


「アンディ君に取り憑いている魔剣は、お腹が空いていたみたい。だから、満足いくまで食べさせてみたの!」


「な、なるほど?」


「アンディ殿、体調は?」


 お父様は困惑し、ジョニーさんはアンディ君を気遣っている。


「大丈夫です」


「なら良いが、一応アガサに診てもらえ」


 アガサは、師匠の人間としての名前だ。


「はい」


 食器の片付けを手伝い、そのまま師匠の部屋に向かう。

 師匠は、昼食は食べないので、この時間は大抵自室にいる。


「は〜い」


 師匠の部屋をノックすると、すぐに扉が開いて師匠が顔を出す。


「あら、シンシアちゃんにアンディ君。どうしたの〜?」


「実は──」


 私は、先程起きた事を師匠に話した。


「あらあら。それは面白──、いえ、大変〜」


 今、面白いって言いかけた? 師匠……。


「それで、ジョニーさんが一応、師匠に診てもらった方が良いという事になりまして」


「それなら、さあ、入って〜」


「失礼します」


「失礼します……」


 師匠の部屋は、外から見るよりも広い。

 どうやら空間魔法を使い、広くしているらしい。

 お香でも炊いているのか、不思議な香りがする。


「では、座って頂戴〜」


 レトロなデザインのソファーセットがあり、そこにアンディ君と並んで座る。

 対面には師匠。


「じゃあ、シンシアちゃん。視てみなさい」


「え?」


「〝分析〟使ってみて〜」


「あ、そうか!」


 キョトンとしているアンディ君に、私は自分の特異魔法を説明する。


「私は〝分析〟と〝修復〟の特異魔法を持っているの」


「へえ……」


 そして、この二年でそこそこのレベルアップをしている!

 なので、生き物の不調なども、分かるようになったのだ。

 他にも光属性の魔法は、大体使えるようになったよ。修復の魔法も上達しているのだ。

 相変わらず治癒魔法とかの生き物を治す系の魔法は、使えないけど。


 ただ、ちょっと問題もあって……。


「それじゃあ、ちょっと触るわよ」


「え? わ!?」


 私はアンディ君の両ほっぺたを両手で挟み、じっと彼の目を()()()()()()()

 視界の色が反転し、脳裏にアンディ君の肉体情報が流れ込んでくる。


「……」


「〜〜っ」


 頭部は何もない。大丈夫。

 次に胸部を、腹部を──と、全身隈なく視る。


 そう、生き物に対して分析を使う場合、常に触れて至近距離で目を合わせなければ使えないのだ。

 ちなみに、目を合わせれば全身の状態を視る事が出来る。不調なら、その部分が赤くなるのだ。

 一応、()()()()()()も視えるが、精度は落ちる。


 ──肉体の不調は無さそう。でも……。


 胸の辺りに白く輝く玉見たいのがある? それに黒い魔力? が絡みついている?

 これは──。


「アンディ君。これ──」


 視界を元に戻し、アンディ君の顔を見ると、真っ赤になっていた。目も若干潤んでいる。


「どうしたのアンディ君? 顔赤いけど……」


 視た時には、怪我や病気の不調は無かった筈だ。


「な、何でもない!」


 アンディ君がバッと離れる。


「?」


「うふふ、シンシアちゃん、どうだった?」


「肉体的には不調は無いみたいですね。ですが……」


「ですが?」


「肉体では無い部分、というか、もっと奥の方? そこに白く輝く玉があって、それになにか……」


「まあ!」


 師匠の顔がパァッと輝く。


「シンシアちゃん、視えたのね!」


「え?」


「アンディ君の魂に、黒い魔力が絡みつくのが見えたでしょう?」


「あ、あれ、魂!?」


 そして黒いヤツは魔力!?

 それ、視て大丈夫なやつ?


「それは、取り憑いている魔剣の魔力よ!」


「は〜、あれが……」


 今までは魂まで視た事は無かったけど、魔剣の魔力によって視やすくなった?

 いや、もっと良く視れば普段でも見えるのかも?


「アンディ君!」


 バッとアンディ君を見る。


「!?」


 ビクッとしたアンディ君が距離を取ろうとするが、その分距離を詰める。


「アンディ君、もっとよく視せて!」


「え? え?」


 思わず、アンディ君にしがみつくような感じ時になったが、私はアンディ君と目を合わせて再び分析で視る。


 再び、アンディ君の魂を視る。

 

 白く輝く魂。

 それに絡みつく黒い魔力。

 よく視れば、黒い魔力にはコブ状になった部分がある。そこから魔力の蔓が発生している?


 そのコブに半円の線が走り、そして()()()


「──!」


 そして、()()()()()()()()


『!?』


 私も驚いたが、なぜか相手(?)の方が慌てている気配がする。


「シンシアちゃ〜ん、そろそろアンディ君を離してあげて〜」


「え?」


 視界を戻してアンディ君を見ると、真っ赤な顔をしてグテーッとしている。


「アンディ君!? どうしたの? 大丈夫!?」


 その瞬間、アンディ君の影がブワリと広がりそこから、ズルンと長い物が出てきた。


 黒い、剣!?


 (ガード)の中心部分に、爬虫類の眼のような赤い宝石がはまっている。

 そこから赤い線が血管のように全体に走っている。

 なんとも禍々しいデザインだが、私は前世でお土産屋さんによく売っていた、あの剣のキーホルダーを思い出した。


「あらあら。出たわね──」


 師匠が私とアンディ君に防御結界を展開する。


「魔剣ネロ」


『──貴様』


「!」


 魔剣ネロは私を()()()()。私に言っている?


『オレ様は別に、お前に負けた訳じゃねーから!!』


「へっ!?」


 意外と小物臭のする喋り方。


 師匠も驚いているようだ。


『バーカ、バーカ!』


 わわわ、語彙力!


 でもここで、上下関係をはっきりさせておかないといけない気がする。


光の帯(ライトリボン)!」


 私は床に安易的な魔法陣を形成して、そこから光の(リボン)を発生させ、魔剣を拘束した。


『な、なんだ!?』


「あらあら」


 さてどうしよう。

 思わず、拘束したけど。


 ちなみに、光の帯(ライトリボン)は、光属性の魔法の一種。

 その名の通り、リボンみたいな平たい光の帯が幾つも発生して対象に巻きつき、動きを封じたりする。派生技に光の蔓や光の糸等もある。違いは、使う人のイメージのしやすさだ。


 さて、魔剣を捕まえた後はどうするか考えていなかった。


 とりあえず、分析で視て見るか。


「え?」


 この魔剣、なんか全地的にボロボロだな。

 全体に走る血管みたいな赤い線は、良く視るとヒビだ。

 雰囲気でそういうデザインかと思ったが、分析で見るときに不具合部分にマーキングされる赤い印だったわ。

 それに剣身の真ん中あたりに刺さっている、円錐型の棘みたいなのは何だ?


 魔剣から伸びる黒い魔力がアンディ君の影にに繋がっている。

 これが取り憑かれているという事なんだろう。


 とりあえず、〝修復〟してみる?


 一応、魔剣とはいえ物に分類されるから、多分直せる、はず?


 分析の魔法を修復と同調(リンク)させ、魔剣の最良の姿を確認する。

 しかし、それは黒く塗りつぶされており、視ることができない。

 なら、ワンランク下げてみる。


 あ、これなら大丈夫だね。


 その姿になるように修復の魔法を発動。

 が、なんかうまく行かない。

 

 なんでだ?


 あ、この棘のせい?

 魔術動具か何かかな? いや、魔法使いが使うような魔法具?


 それを光の帯を使って引っこ抜くと、修復の魔法は無事発動。

 魔剣は、現状できうる限り最も綺麗な状態に直された。


 そう、分析と修復の得意魔法を連動(リンク)させると、治す対象の直せる()()を視ることが出来るようになったのだ。

 これも修行の成果だ。

 直したい段階(レベル)を選択して修復すると、その段階で直すことができる。

 ただ、たまにこちらの練度が低いからか、なんらかの妨害かで、上位の状態を視れない事もある。

 今回は後者だったようだ。


『え? え? 呪いの杭まで!? しゅ、しゅごい!!』


 しかし、そこで私の意識は無くなった。


 意識をなくす瞬間、魔剣に羨望の眼差しで見られたような気がするが、多分気のせいだろう。






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