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第20話 辛勝



 鉄の鎧を貫通した剣先から、真っ赤な血が滴り落ちる。



 ドクドクと心臓が脈打つ音が大きくなっていく。



「ゴフッ!」



 喉を駆け上り、逆流してきた血を盛大に吐いた。



 振り返ると、そこにいたのは黒い影のような姿をした敵だった。



 傷の痛みが拡がっていく中、鑑定スキルが発動された。




【魔物名】シャドウストーカー


【系統】アンデッド系


【スキル名】隠蔽(音、匂い、熱など、あらゆる気配を遮断する効果。LVで効果範囲が広がる。相手に隠蔽看破スキルがある場合、発見される可能性が高まる) 影潜り(影に潜み物理攻撃を無効化する) 急襲(敵に素早く近づき、物理攻撃大ダメージを与える。隠蔽時はダメージ増加) 転移(既知の場所に転移できる)


【能力】ATK:B DEF:C SPD:B INT:B DEX:C LUK:D


【属性耐性】火: B 水: B 風: B 土: B 光: G 闇: A 毒:A 麻痺:A


【素質ランク】E




 やべえ……。もっと強い魔物かよ……。



 隠蔽で気配を完全に消し、背後に潜んでたのかよ。



 まさか、こんな形で不意打ちを受けるとは……。



「ゴフッ、ゴフッ!」



 せり上がってきた血が、再び口から漏れる。



 シャドウストーカーの一撃は、致命傷に近い傷を俺に与えていた。



 腹部を貫かれたことで、体の力が急速に失われていく。激痛と出血で意識が朦朧としてきた。



「おお! シャドウストーカーか! 助太刀に感謝する!」



「ヴィヴィ様より必ず殺せとのことだ。一人やられたようだが、これ以上、神々戎斗を強くさせるな」



「承知した!」



 騎士の亡霊(ファントムナイト)たちが、俺にとどめを刺そうと剣を振り上げた。



 クソ、クソ、くそがよっ! こんなところで死んでたまるかよっ! 死んでたまるかってんだ!



 脳裏に、自分を裏切った者たちが住む世界への復讐を誓った時の決意が蘇る。



 すべてをぶっ壊してやるまで死んでたまるか……。死んでたまるかよ! 動け! 俺の身体! まだ、死ぬときじゃねー!



 湧き上がる怒りと執念が、身体に残された僅かな力を奮い立たせる。



 ベルトポーチの回復薬をがぶ飲みすると、腹部に突き刺さった剣を握るシャドウストーカーの腕を掴み、そのまま引きずりながら、騎士の亡霊(ファントムナイト)たちに突進した。



「何を!? 気でも触れたのか!?」



「うるせぇ! これが俺の戦い方だ!」



「シャドウストーカー殿!?」



「急に!?」



「がぁああああっ!」



 騎士の亡霊(ファントムナイト)たちの振り下ろした剣が、無理やり引きずったシャドウストーカーの腕に直撃して切断された。



 その切り口から黒い霧が勢いよく漏れ出していく。



「腕がっ! 私の腕がぁああ!」



「す、すみません! 急に出て来たから……」



「腕の一本くらいでガタガタ言うなっての。ゴフッ、ゴフッ」



 シャドウストーカーが俺の腹に突き立てた剣は、未だに生えたままだが、気にすることなく大剣を構え、影の一撃スキルを発動させる。



「くっ! 消えた! シャドウストーカー殿、お守りしますぞ!」



「油断するな! 来るぞ!」



「おい! 後ろだ―――」




 再び姿を現した俺は、味方への一撃で怯んでいた騎士の亡霊(ファントムナイト)に狙いを定めて、大剣を振るう。



「がぁああっ! クソ! ニンゲンのくせに、我の技を使いおって!」



 振り下ろした大剣が、騎士の亡霊(ファントムナイト)の鎧を半ばまで断つ。



 もう、防御なんてめんどくせえことをしてる時間は残ってねぇ! 動けるうちに、目の前の敵を倒す!



 俺は腹に生えてたシャドウストーカーの剣を無理やり引き抜くと、大剣で半ばまで断たれた騎士の亡霊(ファントムナイト)の鎧の隙間に何度も突き立てる。



「死ねよ! おら! 死ね! ニンゲンに殺されろ!」



「がふぅ、がふ、ぐふぅ。やめろ。やめろぉ。やめ……ろ。たすけ……て、たすけ……」



 騎士の亡霊(ファントムナイト)は、味方に助けを求め手を伸ばしたが、途中で力尽きたようで、そのまま地面に倒れた。



 奪ったスキルが取り込まれ、さらにスキルが成長した。



「ふぅー、ふぅー、次はどいつだよ。ゴフッ、ゴフッ」



 内臓の傷は癒え始めてるが、血が足らねえ……。目がかすんできやがる。



「ひぃ! こいつ、頭がおかしくなってるのかよ! こっち見るな! バケモノ!」



「怯むな。怯めば、こっちが喰われる」



「ですが! こんなバケモノと戦わされるなんて聞いてないです!」



「シャドウストーカーが喋れるなら、お前はいらねぇなぁ。ゴフッ、ゴフッ! スキル寄越せ! スキル!」



 魂の叫びスキルを発動させると、仲間を失った騎士の亡霊(ファントムナイト)は完全に怯み、たった一人で後退を始めた。



「ヴィヴィ様! 出してくれ! ここから出してくれ! 死にたくない! 頼む! ヴィヴィ様!」



「おい背中を見せ――」



 倒した騎士の亡霊(ファントムナイト)から大剣と剣を引き抜くと、二刀に構え、背中を見せて喚いている騎士の亡霊(ファントムナイト)に襲いかかった。




 背を向けて喚く騎士の亡霊(ファントムナイト)に、容赦なく大剣を振り下ろす。



 鎧の上からでもわかるほど、深手を負わせた。



「がああああぁ! 死にたくない……。ヴィヴィ様、シャドウストーカー殿、たすけ……」



「雷光」



 眩い光をまとった雷光に打たれ、魂の叫びで魔法防御力が下がっていた騎士の亡霊(ファントムナイト)は、弱点属性の魔法によって霧散していた。



「三匹、喰ったぞ。それと、その手は二度は喰らわねぇ」



 背後から急襲してきたシャドウストーカーの剣を避ける。



 隠蔽が解け、危機察知さえ働いていれば、怖い攻撃でもない。



「くっ! いちど」



「逃すか!」



 腹部の傷は癒され始めているものの、血が圧倒的に足りず意識も朦朧としていた。



 だが、それでも、シャドウストーカーを逃すわけにはいかなかった。



 幻影剣を発動させた大剣はいくつもの剣先を生み出し、回避しようとするシャドウストーカーの目測を誤らせる。



「くっ、強い。騎士の亡霊(ファントムナイト)たちの力を喰って、さらに力を増したか。このままでは――」



「どこ見てんだ。俺はここだぞ!」



 力を振り絞り、一気に近づくと奴の首を掴み、地面に叩きつけた。



 何度も何度も、飽きるまで叩きつけた。



「死ね! 死ね! 死ねよっ!」



 そして、最後に残った力を振り絞り、シャドウストーカーの頭部を叩き割った。



 しまった……倒すのに必死になりすぎて、生かしておくのを忘れてた。



 くそ、やっちまった……。



 目がかすみやがる……血を流し過ぎた。限界か。



 絶命し、スキルを奪ったことを示す光の球が、俺の身体に飛び込んだ。



 同時に必死に保っていた意識は限界を迎え、そこで途絶えた。




――――――――――――――――――――――――――――――――


シャドーストーカーから獲得したスキルを忘れないように書いておきました。主に自分用です。


【スキル名】隠蔽LV1


【効果】音、匂い、熱など、あらゆる気配を遮断する効果。LVで効果範囲が広がる。相手に隠蔽看破スキルがある場合、発見される可能性が高まる。


【スキル名】影潜りLV1


【効果】影に潜み物理攻撃を無効化する。影に潜んでいる間は移動不可。


【スキル名】急襲LV1


【効果】敵に素早く近づき、物理攻撃大ダメージを与える。隠蔽時はダメージ増加。


【スキル名】転移LV1


【効果】既知の場所に転移できる。移動距離で魔力の消費が増大。LVが上がると魔力消費量低減される。


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