表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/41

第19話 危機からの危機


「ふぅ、ふぅ、はぁ、はぁ、もう少しくらい苦戦するかと思ったが、案外やれたな」



 鱗蛇は激しく体を痙攣させ、やがて動かなくなった。



 同時に、収奪スキルが発動し、鱗蛇の持っていたスキルが、俺の身体に取り込まれる。




【スキル名】硬い鱗 LV1


【効果】噛みつきや爪、刺突などの物理攻撃のダメージを軽減する。




【スキル名】毒牙 LV1


【効果】噛みつき攻撃時に確率で毒を付与する。毒のダメージは微量で、持続時間も短いが、放置すると徐々に体力を奪われる




 激闘の末、倒した鱗蛇の新たなスキルが俺の身体に宿ったのを感じた直後、危機察知スキルによって、新たな赤い輝点が生まれ、けたたましく警告音を鳴らす。



 敵か? それとも鱗蛇を倒したことで発生したトラップか?



 赤い輝点に触れ、鑑定を発動させる。




【魔物名】騎士の亡霊(ファントムナイト)


【系統】アンデッド系


【スキル名】魂の叫び (敵に精神的なダメージを与える咆哮。敵全体に「恐怖」状態を付与したり、魔法防御力を低下させる) 幻影剣 (剣に幻影を纏わせ、攻撃範囲を広げたり、敵を幻惑したりする。追加効果として、確率で敵に「混乱」や「幻覚」の状態異常を付与する) 影の一撃(一瞬姿を消し、敵の背後や死角から奇襲をかける。クリティカル率が高かったり、防御力を無視する)


【能力】ATK:B DEF:C SPD:C INT:C DEX:D LUK:D


【属性耐性】火: B 水: D 風: C 土: C 光: G 闇: B 毒:B 麻痺:B


【素質ランク】G~E



 強い……。それが三体か……。



 赤表示ってことはもうこっちを認識してるんだよな。



 武器を構え直し、警戒しながら周囲を見回すと、鱗蛇の巣穴の入り口付近に三つの人影が見えた。



 全身を重厚な鎧で覆い、剣を携えた騎士たちだった。



 こちらに近づくにつれ、隠そうともしない敵意をむき出しにする。



「おい! 止まれ!」



 俺が誰何しても、彼らは一切答えず、沈黙のまま剣を抜いた。



 問答無用とばかりに、いきなり斬りかかってくる。



 騎士の亡霊(ファントムナイト)たちの斬撃を鉄の大剣で受け止める。



 分厚い大剣がミシリと嫌な音をあげた。



「こっちを殺す気、満々ってことかよ! いいぜ、そっちがその気ならやってるよっ!」



 騎士の亡霊(ファントムナイト)たちの剣を押し戻すと、一番近いやつの横腹に蹴りを入れて蹴とばす。



 吸血のブーツの刺々しい突起によって、騎士の亡霊(ファントムナイト)の鎧がわずかにへこみ、吸い取ったもので身体が少し楽になる。



 ついさっき鱗蛇との死闘を終えたばかりで、体は疲労しているままだった。



 それでも、迫りくる騎士の亡霊(ファントムナイト)剣撃をなんとか受け流し、回避する。



「くっ! この動き! いつの間にこんな早く!」



「ヴィヴィ様も油断するなと申されていたはずだ! 囲むぞ!」



「承知、自由に動き回らせぬ!」



「なんだ……。お前らは、喋れるのか。なら、ぶっ殺す前にいろいろと聞き出さねえとは。けど、残すのは一匹だけだ。後は死んで俺の糧になってもらうぞ!」



「ニンゲン風情が、我らを愚弄しおって!」



 騎士の亡霊(ファントムナイト)たちの連携は完璧で、休む間もなく次々と俺に向かって攻撃を繰り出してくる。



 幻影剣、影の一撃といったスキルを使った攻撃が、まるで波のように押し寄せる。



 そんな息つく暇もない連続攻撃に晒され、俺は完全に防戦一方に追い込まれた。



 反撃する隙がねぇ……。さっきは強がって殺すと言ったが、今の俺にやれるのか……。



 ちっ! クソがっ! 鱗蛇との戦いがなければ……。互角以上に戦えてるはずなのに……。



 心が折れそうになる必死の防戦の中、相手の攻撃パターンを注意深く観察し、わずかな隙を探る。



 いや、弱気になってどうするんだ! こいつらを倒さなきゃ、何も始まらねえって思え! ここを出て、俺を裏切った世界をぶっ壊すことも叶わねえんだ! こんなところで終わってたまるかってんだよっ!



 騎士の亡霊(ファントムナイト)の一人が、仲間の攻撃を遮らないよう気を取られて一瞬、体勢を崩した。



 俺は、その隙を見逃さなかった。



 腐敗毒スキルを発動させ、霧状の毒を放つ。



 腐敗毒の霧は、騎士の亡霊(ファントムナイト)の鎧を急速に錆びさせて劣化させた。



「くっ! 卑怯な!」



「何とでも言えっての!」



 鎧が錆びた騎士の亡霊(ファントムナイト)に向けて、狂化を発動させた筋力を使い、大剣を思いっきり振り下ろす。



「があぁっ!」



 大剣が錆びた鎧を断ち斬り、騎士の亡霊(ファントムナイト)の左半身を斬り落とす。



「雷光」



 魔法が発動すると、眩い光とともに発生した雷が、騎士の亡霊(ファントムナイト)の身体に命中した。



「がぁあああああっ! ぬかったわっ! ニンゲン風情に……やられるとは……。後は……頼む。ヴィヴィ様の期待に……」



 雷光を受け、黒焦げになった騎士の亡霊(ファントムナイト)がさらさらと塵になって消えていく。



 奪ったスキルが俺の身体に取り込まれた。




【スキル名】魂の叫び LV1


【効果】敵に精神的なダメージを与える咆哮。敵全体に「恐怖」状態を付与したり、魔法防御力を低下させる。LVで効果範囲拡大。




【スキル名】幻影剣 LV1


【効果】剣に幻影を纏わせ、攻撃範囲を広げたり、敵を幻惑したりする。追加効果として、確率で敵に「混乱」や「幻覚」の状態異常を付与する。LVで攻撃範囲と状態異常確率アップ。




【スキル名】影の一撃 LV1


【効果】一瞬姿を消し、敵の背後や死角から奇襲をかける。クリティカル率が高かったり、防御力を無視する。LVで物理攻撃力向上とクリティカル率上昇。



 新規のスキル効果を確かめてる余裕はねえ。



 すぐに仲間の仇討ちをしようと、別の騎士の亡霊(ファントムナイト)が斬りかかってきた。



「よくも、我らの仲間をやってくれたな! 許さん!」



「ニンゲン風情に、やれる方が悪いだろ! 弱いやつが悪い!」



「我らが弱いだと! 思い上がりおって!」



 一体、仕留めた。これでけっこう負担は減るはず。このままもう一体倒しに――。



 もう一体の騎士の亡霊(ファントムナイト)に斬りかかろうとした瞬間、背後から強烈な衝撃が走った。



 腹部に鋭い痛みが広がり、体が強ばる。



 信じられないことに、背後から剣で貫かれていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ