アイドルと芸能と
成り上がりという観点を多恵子は考え、今回芸能界という存在をイメージしてみたようである。
芸能界? なにそれおいしいのといった感じではあるが、芸能界の世界を一度も考えずにアイドルを目指していたので、エージェントの話しは唐突ではあるが、何かざわざわした感じもあったのである。
「何かざわざわする感じが、何か嫌なものでも憑いたらまずいわね。スタートダッシュする前に何か嫌な事が……」
急に悩みがわく多恵子であった。芸能界の世界は一寸先は闇と感じる多恵子であったが、それは園子も同じであったようである。
アイドル活動を芸能の活動とかイメージしてこなかった多恵子であったが、いきなりであるが、パンチを食らった感が一気に来たようである。
小市民多恵子であるが、そのイメージは園子も同じであった。野望とかそんな意味ではなく、小市民的な感じでスタートは始まっていたのである。
恐怖感と不安感がごちゃごちゃに混ざり合い、それが、自分に立ちはだかる訳になったが、観客の応援の事を考えると、それが全てマイナスになるとも感じなかった。多恵子的には得られるものもあるとの打算的な考えが浮かんだ。
その事を園子に伝えるかも思い悩んだが、結局は最後は自分ひとりの決断との結論により、園子に頼る事をしなかったのである。そう、最後は自分ひとりだとの意識で、自分の答えを今の時点では出すのであった。
園子は別に芸能界に対して、期待している訳でも無く、むしろ嫌な思い出が出来るのではと考えていた方であるが、マイナスのイメージから、プラスに変えたいとも考えていたようである。親の期待に応じたいという意識も働いていたが、自己保身が若いうちから芽生えようとしていた。芸能界は怖いと考えていたようである。
「アイドル論と芸能の世界は、切っても切れないのか? 果たしてどういう結論に辿り着くのか、やっぱり怖いなこの世界」
園子が悩みだすと、姉の京子がちらっと覗いていたのである。姉の京子は会社員ではあるが、妹の将来について、興味はあったようである。夢とか希望とかの世界に対し、いいなと思いながら、その世界を見守ろうとしていたようである。姉からすると、将来の希望を託したくなる妹であったが、園子からすると、心配の方が優先されるみたいである。
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