転生先は幼女の楽園でした。
短いよ
大きくて広い海の中。光はなく上も下もわからない。小さくて分別のある魚たちがせわしなく
泳ぎ回るなかでゆっくりと二人の体が沈んでゆく。向かい合わせになった二人の、手の片方は
強く結ばれている。一方の少女はその顔に微笑みをたたえ眠っているようだった。
突如他方が目をひらいた。だけれども果てしない暗闇が彼を迎えるだけであった。
「あるいは、電車に揺られて
「おにいさん起きてください。終着駅ですよ。」
あるいは、森を分け入り、
「樹海です。」
あるいは、地平線を目指して
「静かな崖です。着きました。」
死ぬ決心がつかないでいた。一緒に心中してくれる手頃な女の子をみつけたはいいものの、どこかでまだ、死ななくともいいんじゃないかと思う自分がいる。生きるという選択を捨てないほうに最善のルートがあるとしたらと考えてしまう。
「ではお兄さんこうしましょう。私がお兄さんの選択の自由をとりあげます。
そしてお兄さんは何を選択せずとも、おのずから死ねるのです。私にも切らす痺れがあるのでね、優柔不断な主人公系おにいさんのかわりにですね、ルートを一つに収束させてあげます。
dead or deadなのです。」
そういいながら、たもとからまさしく鈍器のようなものをとりだす。そして唖然とした僕の脳天をみすえておおきく振りかぶる。」
ところまでは覚えている。そのあと気絶した僕は好きなようにされたのだろう。
簡潔に述べると僕は生きている。意識がある。しかし僕は死んだはずだ。地獄なるものが存在するならば今の状況を説明できるだろうが、唯、今現在僕の立っている世界を形容するなら「楽園」という言葉が最も近いんじゃなかろうか。ところで皆は楽園と言われたらどんな場所をイメージするだろうか。お花畑、確かに典型的な見方をするとそうなる。否、バット、しかし、楽園というのは私たちひとりひとりの心にそれぞれの楽園があっていいものだろう?。十人いたら十の楽園がある。
僕の場合は果たしてどうだろうか。僕自身が最もよく分かっているはずだ。
刮目せよ、この眼前にはしゃぎまわる幼女の群れを。群れなす幼女を。これぞパラダイスと言わずして何と言うのか僕は知らないしあなたも知らないだろう。思わず手近の金髪碧眼の娘に抱き着こうとする。だがしかし、抱き着く前に何者かが僕のあたまを殴りつけ静止する。うっ頭が。
「何をするんだ。ジーザス。」
「何をするんだじゃありませんよ。ナニしようとしてるんですか。このロリコン。ったく一緒に死ぬんじゃなかった。まあ死にきれなかったみたいですけど。」
楽園まできて死にたがりの少女だ。
「私にとっては楽園じゃないんですよ。絶対おにいさんのせいだ。とち狂ったおにいさんの変態脳のせいで汚い欲望を反映した世界にとばされたんだ。」
「ふーん。まあいいけど。じゃあね、僕は僕で好きにするから。」
といいはなち立ち去ろうとすると
「ちょっと待ってくださいこうなったのもすべておにいさんの責任です。きっちり、おとしまえつけてもらいますよ。」と死に損ないの少女が僕にすがりつく。
「えー。僕何も悪いことしてないし。いやだいやだ。幼女と遊ぶの。」
「馬鹿いってないでさっさと行きますよ。」と無理やりひっぱってくる。
「といってもなにするのさ。」
「この世界で生きるための手だてを探すのです。」
「もう自殺はやめたのかな?。」
「ええ。すでに一回死にましたしね。これで現世とのしがらみともおさらばです。さらだばー。」
「まさかとは思いましたが、悪い予感が的中しました。」
「そうかい?僕は良い予感が的中したよ。わあい。」
近くに見えた町らしきものに入ったわたしとロリコンのクズおにいさんですが、
町中いたるとろどこをみてもわたしより二回りほど小さな幼女しかおりません。
「これじゃあ私たちが目立ってしょうがありませんよ。」
思えば最初から異様ではありました。高い壁に覆われた町にせよ、私たちを旅人として迎え入れた
舌足らずなかわいらしい門番にせよです。
門に隣接した小屋の窓口からひょっこり顔をだす。
「旅人さんでありますか?背が大きいのでありますね。絵本でみた巨人です。」
そういって手元の帳簿になにやら書き出す。
「壁でありますか?。私たちはつくってはいませんのですよ。最初からあったのです。」
「そうは言われましても最初からあったのですから分からないのであります。」
「わーい☆。わーい☆。」
「馬鹿能天気でいられて羨ましい限りですね。私は頭がパンクしそうです。」
とりあえず親切な門番さんのおしえてくれた寝泊りできるところにいくことになりました。
ホテルというよりは民宿のようなものですかね。
「わあああい★☆★☆」
案の定またしても出迎えるのは幼女でした。
「うちは旅人に寝床とご飯を提供しているだけだ。」とぶっきらぼうに。
「ありがとう。是非お礼のハグを。」
「・・・・・・・・・・。」
「しなくていいですから。」
「せめて剥ぐだけでも。」
「ひどくなってます。」
油断も隙もあったものじゃありません。女の子たちの貞操までも守らなければいけないようです。
気さくな幼女達におにいさんがなりふり構わず話しかけるほどにこの世界の現状についての理解がますます混迷を深めていきました。
町には人工的な光が存在せず、夜になってしまうと辺りは真っ暗になってしまい、
微かな月明りだけが頼りでした。
「ベッド一つだね」
「おにいさんには床があるじゃありませんか。床もおにいさんのことを求めてます。
お似合いですよ。」
「じゃあ家主と寝てくるね。」
「まってください。ここにきて面倒事を増やさないでくださいよ。」
女の子の純潔のために仕方なく、やむを得ず、不本意におにいさんとねることになった。
「これは何の真似かな?早くほどいてくれるカナ。僕は幼女にしか興味はないよ。」
「うっ。だとしてもです。夜中にこっそりベッドを抜け出さないとも限らないでしょう。
私が次の朝目覚めるまでは拘束されといてください。」
「ちっ。ばれたか。」
「・・・・・・・・・・。」
風が木枠の窓をかたかた鳴らす。かたかた。部屋の隅で羽虫がうずくまって死んでいる。
蝋燭を消した室内に少女の曖昧な影がしずかに伸びた。夜の空白を埋めるように嫌なことばかりが思いおこされる。
「まだ起きてますか。」
「寝てるよ。」
「おにいさんは、元の世界に帰りたいですか?」
「まったく、ちっちゃい子は最高だぜ。」
「質問に答えてえてくれる気はないんですか。」
「ちょっぴり後悔してるんですよ。その、おにいさんを無理に心中させたこと。」
「いや、僕が言い出したことだよ。」
「・・・・・・・・・・。」
「何で私としようと思ったんですか?。」
「タイプだから。」
「嘘つきですね。」
「・・・・・・・・・・。」
「何で自殺しようと思ったか聞かないんですか?」
「聞いてほしいの?」
「わかりません。」
「僕のほうの理由は聞きたい?」
「長くなりますか。」
「うん。」
「なら、また今度にしましょう。」
今度か。今度ね。あんまり実感が湧かないけれど。
透き通ったガラス窓に朝日が差し込み小鳥が競ってさえずり始めるころ
少女は眠りからさめ、そこで初めて彼女が「おにいさん」と呼ぶひとりの青年の胸に顔を埋めていることにふと気が付く。彼女はとっさに身を翻したが、青年がまだ心地よさそうに眠っているのに気が付くとそっと胸を撫でおろした。そうしている自分が馬鹿らしく青年をおこさないよう心のうちで微笑する。なにかを抱いて寝るという前世からの彼女の癖はなかなかぬぐえそうになさそうだった。
そこへ家主がてとてと、とやってくる。
「朝ごはんを準備しているぞ。」勿論お前たちの分もあると小さく付け加える。
「何から何までありがとうございます。」
「ところで何故彼は縛られているんだ?」と澄んだ瞳を少女にむけつつ首をかしげる。
それに対して少女はひと際大きく「ふぇっ」と可愛らしくも素っ頓狂な声をあげ、顔を紅潮させることしかできなかった。
こうばしい香りが少女の鼻腔をくすぐる。少女のからだは空腹を訴えていた。
読んでくれてありがとう。よかったら感想ください。高校の時作ったよ。