三匹の獣 其の三
雷電を纏い金狼は駆け出す。小さき獣が稼いだ隙を活かすために、最高速度で駆け出す。体から流れる血にが後を引きその血にすら雷を纏わせる。
その様は地上を駆ける金色の流れ星のようであり、無慈悲な破壊をもたらさす凶星でもある。
凶星と呼ぶにはいささか美しすぎる気もするが・・・。
この世界の魔法は色によって分けられ属性と相性がある。赤は炎、青は水、緑は風、茶色は土といった風にだ。そして相性がある、炎は水に弱く、水は土に弱いといったように。今この場にあるのは二色、黒色と金色である。そして逸脱色言うものがあるその色は他の色からの干渉を受けない、自然から逸脱している。故に逸脱色というのである。
今、相まみえた二匹の狼一匹は金色、もう一匹は黒色。金色はすべてを破壊する逸脱色で黒色はすべてを飲み込む逸脱色だ。この本来であれば黒色は金色の破壊すら飲み込んでしまうために黒ろ金の相性は最悪とも言えるであろう。先程までの戦いで黒狼が金狼相手に終始優位に立てていたのはその色の相性のおかげであり、その色は全身を覆う黒毛が元となっている。
金狼は戦い方を変えていた、先程までの戦いでは魔力を雷に変えて相手にそのまま叩きつけていた。故に黒毛に防がれ、魔法を放った後の動けない硬直時間に噛まれ、叩かれ、吹き飛ばされ、そしてボロボロにされていた。
黒毛は健在、魔力は後少し、体は限界、勝ち目は薄い。
それが先程までであった。だが、一人の男の乱入それにより変わったことがある。
魔力は後少し、体は限界。これは変わらない、こんな短時間じゃ変わりようが無い。なら、変わったのは二つ。
先程までは体全体を覆い、すべての魔法を打ち消していた黒毛。だが、その黒毛は小さな刃により絶たれほころびが生じている。そしてほころびが生じたことにより薄かった勝ち目が明確になっていく。わずかだった勝ち目が目の前にある、掴み取れるかどうかは己の魂と力に掛かっている。そして駆ける。
金色の疾風が吹く、全身に雷を纏い、風を切り裂き大地を踏みしめ、前へ前へと踏み進む。
グランは大切な物を背負っているとき以外は後ろを振り返らない。否、後ろを振り返る余裕は無い。背中に背負うのが弱いものであればあるほどグランは後ろを振り返る。この戦いでグランは一度も振り返っていない、背中に背負っているものが弱者ではないと知っているからだ。守る必要が無いと知っているからだ。
その嵐に気づいたのは黒狼であった、潰そうと思っても潰れない足元に纏わり付く虫に対して本能のまま、力任せに腕を振るっていた黒狼であったが。大きな魔力反応を感知して、飛び退った。
飛び退り顔を上げた黒狼の視界に文字通り飛び込んできたのは金色疾風だった。黒狼は自分の体毛に絶対の自信を持っていた。どれほど雷を打ち込まれようとも、どれだけ噛みつかれようとも、これまでの人生で全くと言っていいほど断たれたことのない自慢の毛並み。
だがしかし、金色の疾風と衝突した後に残ったのは噛まれ、叩かれ、吹き飛ばされボロボロにされた毛並みと毛の無い所に浴びせられた雷によって全身から肉の焼ける匂いのする満身創痍の黒狼であった。
だが、金狼も無事ではない。すべてを破壊する雷を身に纏ったせいで体中がボロボロになり、美しかった毛並みはくすみ見る影もない。体の中も雷を走らせたため内蔵に重大な被害を被っており、立っているのがやっとである。
二匹の獣の戦いは決着した、結果は両者の痛み分けとなった。黒狼は森を侵略するだけの力を失い森を去っていった。金狼も森を守り続けるだけの力を失い、隠居することとなった。
グランは二匹の衝突の余波をくらい森の奥深くまで吹き飛ばされた。
三匹の獣が去った後に残るの破壊の後と呆れ果てる魔女だけだった
今回も読んで頂きありがとうございました。今回は戦闘シーンをメインに書き上げたのでブックマーク、感想、評価等をお願いします。もし、評価等を貰えたら作者がジャンピング感謝で皆様に感謝を伝えます。
次は設定等を更新する予定です。
ではまた物語の中で・・。