森の守護者
「お主を守っておったのはこの森の三大勢力の一つ雷越のウォルフの群れだ。お主を見つけたのもアヤツの遠吠のおかげじゃよ。礼を言いたいのなら早く行ったほうが良いと思うぞ」
少し含みのあるその言い方に疑問を持ったグランは問いかける。
「早く行ったほうがいいとはどういうこった?」
「簡単じゃよ。あやつは今、決死の戦いに出とるこの森の秩序のためにの」
その言葉を聞いたグランは目を見開き少し口調を荒げる。
「恩人をそうそう死なせるかよ、場所を教えやがれ。それと、俺の剣を返しやがれ」
「そう急くでない若人よ、何せ戦いの現場は・・」
ドオォン、爆音が鳴り響く。雷光が走り火花が散る。えぐれた土が窓ガラスに叩きつけられる。
「この家の真上なのだからな。戦っている相手は黒狼のガルグだ。新参者のガルクが森を荒らしたから守護者の一人であるウォルフが出張って来たんじゃ。が、はっきり言ってウォルフじゃ勝てん。ガルクはかなりの年月を生きた魔獣じゃからウォルフじゃ年季が足りん」
魔女の言葉はまるで未来を見ているかのような、結果はわかりきっているといった諦めの混じった言葉だった。
「なぁるほどね。んじゃ、人外の戦いに首を突っ込んでくるかね。俺の剣を返してくれ」
鳴り響く雷鳴、大地を揺らす地響きにも怯えず気負った様子すらもなくまるで散歩に行くかの様なかる口調で死地へ行こうとする獣。
止めようと思った魔女だったがその瞳を覗き込んだときに確信した。自分には止められない・・・と。
「剣はベッドの脇に置いてある。死にに行く気か?勝つつもりなら一つアドバイスをくれてやろうか?」
剣を手に取り軽く振りながら振り返らずに返事をする。
「ありがてぇが遠慮しておかぁ、先入観を持つと剣先が鈍っちまう」
「そうか、なら言うことは無い。死んだら墓ぐらいは立てといてやるわい」
その言葉には答えずに部屋から出ていったグラン。魔女が出ていった扉を見て何かを考えているとその扉が開く。
「あー出口ってどこ?」
今度こそ家から出るとそこには地獄が広がっていた。
きれいに手入れされていたであろう庭は跡形もなく、空には真っ黒な雷雲が広がっておりその下で二匹の巨大な狼がぶつかり合っている。片方は金色の毛並みの雷を纏う獣、もう片方はどこまでも落ちていく深淵様な真っ黒な毛並みの獣。
しかし、金色の狼の毛並みは乱れ、体中から血をポタポタと流している。それに対し黒の狼は多少ホコリで汚れているものの目立った傷はない。
この地獄に獣がもう一匹現れる。
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ではまた物語の中で