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鍛鉄の騎士  作者: 和鯰ん
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暗い森の中

 男は走っていた、深く暗く飲み込まれそうな森の中を只一人。背後に迫る三人の気配を感じながら、それでも振り返ることはせずに。


 クソみてぇなことをやってたから国を抜けた。ただそれだけでこんなに追手をかけられるとは思っていなかった。完全に読み違えた、だが逃げ切ることはできる。


「きっつい、ここまで真剣になってまで俺を追う理由はなんだ!?おいっ!」


 当然だがそんなことを叫んでも追手達から返事はない。


「つまんねぇ奴らだな」


 茶化す様な呼びかけにも当然返事はない。


 走るうちに追手の足音が近づいてくる背中に掛かる圧が強くなる、自然と歩幅が広がる、周囲を木々に囲まれた森の中では背中に背負うロングソードでは戦いにくい。故に走る、すぐ先には少し開けた空間があるのだから。


「あと、少し、ちょっとぐらい待ちやがれ!」


 待ってくれるわけは・・・ないですよね、ここで戦ったら負けると訴えてくる本能を無理やり戦闘用のものに切り替える。


 開けた場所まであと数メートル、だがその数メートルが果てしなく遠い。背後の足音はすぐ後ろに追いついてきている。


 覚悟を決めねばならない、死ぬかもしれないという恐怖と不安を感じ、それども死ぬわけにはいかないという決意で恐怖を塗り替える。目の色が変わる、先程までの茶化した様な雰囲気はどこにもない。そこにいるのは抜身の剣の様な鋭い殺気を放つ獣だ。


 そのあまりの変わりように追手の足が僅かに鈍る、その僅かな時間で獣は駆ける。先程よりも速く、その様子は獣が野を駆ける姿を追手錯覚するほどであった。


 木々の間を走り抜け、開けた場所に出ると、獣は問いかける。


「一つだけ聞きたいことがある、テメェらのインゴットプレートはなんだ?死にゆく者にそれぐらいは教えてくれてもいいだろう?」


 二人の追手はは少しの間を置いてから答える。


「シルバーだ。アイアンのお前には過剰戦力だとは思うがな」


 インゴットプレートそれは騎士としての格を表す一つの指標になっている。


 見習いのブロンズ、一兵卒のアイアン、魔法適正の高い騎士見習いのシルバー、正騎士として認められたゴールド、上級騎士として人々の思いを背負うプラチナ、魔法に特化したミスリル、すべての騎士の憧れであるオリハルコン、世界最強の名を持つアダマント。これらの階級で分けられる、一つ階級が違うと強さとしてのレベルが大きく変わるとされている。アリがゾウに勝てないように下剋上は無い。そんな世界だ。


 しかし、階級が違う相手二人に睨まれてなお獣の口は歪んでいた。


「シルバー・・シルバーか・・。俺も舐められたか?」


 その呟きは二人の騎士見習いの自尊心を傷つけるのに不足はなかった。


「アイアン如きが調子に乗るなぁぁぁ!」


 一人の叫び声に合わせて二人が腰のショートソードを抜き放ち、斬り掛かってくる。片方が抜き放ちざまに横に一閃、もう片方は少し遅れ、タイミングをずらしながら大上段に構え、そのまま真っすぐ振り下ろす。


 動きにディレイをかけ、二人で確実に仕留める連携をするのはさすがシルバーと言ったところだろうか。もっとも人を仕留めるための技術が獣にどれほど役に立つのだろうか。


 獣は不敵な笑みを浮かべたまま背中に手を伸ばす。

 

 横薙ぎの一撃をバックステップで躱し、追撃の振り下ろしを体をそらし躱す。背中のロングソードの手を伸ばし横薙ぎの一撃を放ったことで少し体勢を崩した男を()()()()()、剣を思い切り振り下ろしたことで体が下向きになった男を()()()()()

 


「まぁ、只のシルバーごときに負けるほど腕はなまっちゃいねえな。」


 蹴り飛ばした男の首を刎ねながら、獣はぼやく。しかし、腕はなまっているようだ。


 二人の男を仕留めきり油断していたのだろう。獣は忘れていた、追手の気配は()()()だったことを。


「これからどこへ行くか、とりあえずラビリンスでも潜るカ、ッハ。ウグゥ」


 背中に突き立てられたのは、月明かりを反射する銀色のダガー。突き立てたのは吊り目が特徴の優男。そう、先の二人は囮でこの優男こそが本命の殺し屋。


「カハッ、なるほどさっきの奴らは囮で本命はお前ってことか、シルバーバレッジぃ」


 苦しげに喋る獣に対してニヤついた表情で優男は話し出す。


「役職名で喋らないでくださいよぉ、()()。只のインゴットではあなたを仕留めるのにはぁ、ちょっと無理があるでしょう?仕方がないので僕が来たんですよぉ」


 表情こそニヤついてるがその目は笑っていない。


「先輩なんで止めまでは刺さないであげますよぉ。まぁ、この森で手負いの人間が生き残ることは無理でしょうけどぉ。ハハハハハッ」


 来たときと同じように気配すら残さず闇に飲まれていった、優男を睨みつけながら獣は意識を手放そうとしていた。


 遠のく意識の中で獣が最後に見たのは、自分を包み込む暗い闇であった。


 今回は今までの和風ものから一転して純ファンタジーを書いてみました。

 あなたの評価と感想、ブックックマークを貰えると作者が発狂します。ここから3日連続で更新するので読んで行っていただけると幸いです。


 ではまた物語の中で

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