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紅き宝石  作者: 神崎寧々
7/24

境界の夜



「今日は此所で野宿です。」



世話しなくテントを張っている兵士達を背後にシーグルはにこやかにユリアへ言った。



「ここは光が少ないので…一人で何処かに行かないで下さいね?」


「……いきませんわっ。」



フローリアとエスカールとの境界線近く。

今夜が、本当にフローリアでの最後の夜になる。


明日にはもうエスカールに入っているだろう。



「ユリア様。」



リーシャに呼ばれ振り替える。



「テントのご用意が出来ました。」



シャッと入り口の布を上げてくれている。



「リーシャ、ありがとう。」



そっと足にくっついていた猫を抱き込み、ユリアはテントの中へ入っていき、その後をリーシャが入っていく。


真夜中、寒いと身震いし目を覚ましたユリアは、胸に抱いて寝たはずの猫が居ないのに気付いた。



「あれ…どこ行ったんだろう…」



体を起こし、辺りを見渡す。

すると入口近くで ニャーっという声がした。


入口へ目をやると、入口に向かって座り込み、泣いている猫を見つけた。



「みっけ。」




ゆっくりと足を地面につけ猫へ近づく。

そして猫の隣にしゃがみ、優しく猫の頭をなでる。



「リーシャが寝てるから静かにね?」



ユリアの声に返事をするかのように猫が鳴いた。


にっこり笑ったユリアは、目が覚めたからと言って、猫を抱き上げ、テントを出た。



「月が近いね」



見上げた空は山にいるせいか、いつもより近く見えた。


手を伸ばせば届きそうなほどに。


東の空を見れば、微かに明るくなっていた。



もうすぐ夜が明ける。



少し目を細くして昇ってくる太陽を見ていたユリアの顔には少しの影が差した。


その時ふいに手の中で猫が暴れ、ストッと地面に着地した。


そしてユリアへ一声なくと、森へ駆け込んだ。



「え、ちょ………」



いきなりの事態に驚いたユリアはどうしようかと辺りを見回した。



「……どうしよう…」



リーシャを呼びに行こうかと迷った時、頭に浮かんだのは嫌みっぽいアルトの顔。



『せっかく俺が拾ったのに逃がした?まぬけ。』



そう言うだろう。

安易に予想がつく。


アルトに嫌みを言われるのはごめんこうむりたい。



「……見つける。」



でもそれ以上に、ユリアはあの猫を気に入っていた。

意を決したユリアは、猫の後を追い、森へ入っていった。

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