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紅き宝石  作者: 神崎寧々
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素直に




華やかに飾られたエスカールの街。


その中央にそびえる城で、男女が向かいあっていた。


「…………ユリア……」



呆れた様に名前を呼ぶと、彼女はビクッと肩を揺らした。



「分かってるけど…だって…」



渋る彼女に無理矢理顔を近付ける。



「きゃっ…!!」



触れ合うはずの唇は反らされる。

先ほどからずっとこの押収が繰り返されている。



「……誓いのキスだって言っただろ。ユリアは誓わない気か??」


「そうじゃない!!じゃなくて……」



チラッと周りを見る。

どこからも視線を感じる。


「みんな見てるから恥ずかしいの!!!」


「結婚式なんだから当たり前だろ!!」


「それでも恥ずかしいの!!!」



涙目で見上げてくるユリアにアルトは軽く舌打ちしと無理矢理顎を掴んで引き寄せた。



「ちょ……んっ」



ようやくキスしたことで観客が沸く。


あちこちで拍手が起こった。




肩を並べて国民へ手を降る。

さっきの不意討ちのキスが気にくわなかったようでユリアが嫌みっぽく呟く。



「バカ。バカアルト」


「…うるせー。また口塞ぐぞ」


「―――っ…!!」



手をふる手も止まる。

そんなユリアにとどめのようにアルトはユリアの耳元で囁いた。



「今夜は覚悟しろよ?」



さぁーっと血の気が引いていくのが分かる。

ぎこちなくアルトの方をみると、ニヤッと笑った。



「長年の片思いが漸く叶ったんだ。」



いままではユリアの胸にネックレスとして輝いていた紅い宝石は指に輝いている。


その手をとると、アルトは指輪にキスを落とした。



「ずっと愛し続けるから」


「――――っ!!!」



その顔、反則。


ユリアは首を縦に振っていた。



*・*・*・*・*・*・*・*・*・


それからエスカールでは、ある話が語り継がれた。



椅子に座って外の景色を見ている老婆の元へ、小さな影が駆け寄る。



「おばあちゃま!お話して!お話!!」



膝に飛び付くと、彼女は驚いた表情を見せるが、すぐに笑みを浮かべた。



「あらあら。本当にお話が好きなのね。何のお話がいいの?」


「宝石!!おばあちゃまとおじいちゃまのお話がいいの!!」



目を輝かせて訴える孫に彼女は微笑んで抱き上げる。


膝の上に座らせると昔を懐かしむように話し始める。




「昔ね―――」




優しく頭を撫でる手には赤く輝く宝石。


気持ちよさそうに向かいにある鏡にうつった指輪を見つめる。


それは夕日を浴びてよりいっそう紅く輝いた。





―――END―――



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