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紅き宝石  作者: 神崎寧々
2/24

特別な朝



「…ま……ユリア様ッ!!」



「っ!」



「ふぅ、おはようございます。ユリア様」



「お、おはよう。リーシャ…」



侍女のリーシャに起こされ、いつもの毎日が始まる。


起き上がるとユリアの金色の髪がサラリと落ちた。


リーシャが髪を触っている間も考えるのは、さっきの夢の事。




懐かしい…私の初恋…


どこの誰かも覚えていない。


ただ小さい頃会って、遊んで、好きになって…


でも覚えているのは、さっき見た夢の部分と

黒い髪に紅い瞳…


手渡された紅い宝石と同じ色で綺麗だと思った。

貰った頃はぶかぶかだった指輪も、今じゃ、ぴったりと自分の指におさまっている。


そっと手をかざせば、指に嵌めている指輪の宝石が日に揺れて、紅がきらめく。



「ほら、ユリア様。早く支度してください。」



リーシャの声で我にかえる。

声のした方を見ると、ユリアとあまり年の変わらない侍女リーシャが腰に手を当てて仁王立ちしている。



「…リーシャ…なんか今日はりきってる?」


「もちろんです!

なんたって今日はユリア様の16回目のお誕生日ですから!」



笑顔で言うリーシャにユリアも自然に笑みがこぼれた。

そう。今日は自分の誕生日。

覚えてはいたけど、ここまで張り切ってくれると、やはり嬉しい。


微笑むユリアに、リーシャはそっと近寄ると、ユリアの手を優しくとった。



「ユリア様…お誕生日おめでとうございます。」



改めてリーシャはユリアへお祝いの言葉を述べ、頭を下げる。



「ありがとうリーシャ。」



どんな綺麗事を重ねられるより、どんな高価な贈り物より、

素直に生まれた事を祝ってくれるリーシャの言葉が一番嬉しかった。



「さて、早速準備いたしますよ~」


「張り切りすぎて、こけないでね?」


「大丈夫ですよぉー…っとお!」 



パキッと切り替えたリーシャは

ユリアの忠告通り何もない所でつまづいたリーシャに笑いかけてからユリアはもう一度、そっと指輪を見つめる。





あの方の…最後の言葉がわからない…

そして、もう一度会えると言ってから、今まで会えていない。

今思えば、社交辞令だったのだろうと思うが、未だにあの出来事はユリアの中で煌めいている。



複雑な心境を反映する様に、

ユリアの手の中であの紅い宝石がキラリと光った。




☆・☆・☆・☆・☆・


リーシャが朝食を運んでくると

紅茶の香りや香ばしい匂いがあたりを包み込んだ。


テーブルのセットをしていくリーシャをユリアはボーっと眺めていた。


すると急にリーシャは準備の手を止めた。



「あ、そうだユリア様」



何かを思い出したようにリーシャは指輪を握りしめて微動だしないユリアに顔を向けると、用意の手は止めず、予定を告げる。



「国王様がお話があるそうなので、朝食を摂られましたら謁見室へ向かって下さいね。」



「…わかったわ」



おそらく、誕生日のお祝いの言葉だろう。

そう思った直後、違和感があった。



---あれ?今年、誕生日パーティーの話聞いてないわ。



「リーシャ、今日の私の誕生日パーティーって」


「そのことについてのお話みたいです!」



やけに返事の早いリーシャに、そう。と呟いて口を閉じる。

いつもなら、毎年慌ただしく行われるパーティーの話がそういえばなかった。

当日まで気がつかない自分も大概だが、正直、あまりパーティーには興味がなかった。


できました。とリーシャに誘われれば、そのまま用意された席に着く。


お腹が空いていたので、目の前の誘惑に抗うことなく、思考を食へ変換し、香ばしい匂いの食事へ手を伸ばした。

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