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紅き宝石  作者: 神崎寧々
16/24

発見



あの日以来、アルトは絶対1日に最低1回はユリアを訪ねるようになった。


公務が忙しくて夜遅くになることもあったが、絶対に訪ねに来る。



「良かったですね、ユリア様」



ユリアの髪を透きながらリーシャは笑顔で言う。



「べっ…別に良かったとかじゃないわよ。当たり前って言うか…」


鏡に向かっているユリアは鏡に移るリーシャの視線を避け、小さく呟く。



「あ、そうだ。」



思い出した様にユリアの膝で寝ていたネコを抱き上げると、名前考えたの。と笑う。



「まぁ、なんて付けたのですか?」


「スノー」


「…………は?」



唖然としたリーシャをお構い無しに、ユリアは白いネコをなでまわす。


「だって!!こんなに可愛いし、フワフワだし、真っ白でしょ?雪みたいじゃない?」


「可愛いは関係ないと思いますけどね」



苦笑しながらリーシャはユリアの髪を纏めあげていく。



「いいじゃない、雪も可愛いわ、ね、スノー」



ユリアへの返事なのか、スノーは一声鳴くと、またユリアの膝で眠りに着いた。




リーシャは最後に青い花を髪に挿すと、手を腰に当てた。



「はい、完成。」



「はやーい」



頭の上で綺麗に纏められた髪に青い花が生える。


ありがとうとお礼を言い、立ち上がると、丁度コンコンとドアが叩かれた。



「あ、いらっしゃいましたね」




その音にユリアは少し固くなる。


そんな様子をみてリーシャは軽く笑うと、ドアへ向かった。



「いらっしゃいませ、アルト様」



ドアを開けると、待ちかねた人物が立っていた。



「ユリア」



姫の名を呼びながら部屋へ入るアルトと入れ違いにリーシャは外へでる。


パタンと扉を閉めると、近くにシーグルが立っていた。



「お疲れ様です」



「あっ…はい。……アルト様の付き添いですか?」



リーシャの問いに苦笑すると、両手に持った資料や服を少しあげる。



「公務から直行ですから」



「まぁ…ふふっ。お疲れ様です。」



シーグルにつられ、軽く笑うとリーシャがシーグルからアルトの服を取り上げる。



「リーシャさん!女性に持って頂くわけには…」


「大丈夫です。これくらい持ちます」


「でも……」



それでもリーシャから服を取り替えそうとするシーグルにリーシャは笑って避けた。



「後で、重い物を運ぶ予定なんです。良かったら…手伝って頂きたいので。」



と アルトの服を見せる。

そう言うと、シーグルは、そう言うことならと、笑顔で応じた。



「良かった。なら参りましょう。」


「はい。」



2人はそのまま、肩を並べて去っていった。



部屋ね中では、先ほどの会話をユリアはドアに耳を当てて聞いていた。


去っていく音を聞きながらユリアはにやりと笑った。



「………悪趣味なやつ」



そんなユリアを見て一人ソファーに座っていたアルトはため息混じりに言う。



「ま、失礼な!だって気にならないの?殿下の付き人なのに」



アルトの言葉に反論するようにユリアは腕を組ながら近寄っていく。



「あの二人、いい感じだと思うんだけどなぁー」


「今はそっちより、こっちを考えて欲しいんだがな」



近寄って来たユリアの腰に手を回すと、引き寄せ抱き締める。



「ちょ…いきなりっ……!!」



慌てて抵抗して離れようとするが、全く意味がない。



「二人きりなんだ。俺の事だけ考えて?」



アルトは座って、ユリアは立って密着してる。

となれば自然と真下にアルトの顔があるわけで。


俯く顔も全てみられる。

赤い顔を見られたくなくて横を見るが、アルトの手が伸びてきて頬に触れる。




触れてきた手が無理矢理に視線を合わせられる。


少し前までは触られるなんて嫌だったのに、今のユリアの中にアルトに対する嫌悪はない。



「っ……殿下っ……ん!!」



見つめられ、耐えきれなくなったユリアが小さく呟くとアルトはすぐ唇を塞いだ。



「……!!んなっ!!何をっ!!」



唇が離れると、真っ赤な顔でユリアは唇を手で隠す。


抗議するユリアを軽くあしらい、笑顔で言う。



「なんで口づけしたか?お前が悪い。」



「……………は?」



何かしたかと思い返すが、何も浮かばない。

何もしてない。



「ちょ…本当に分からないからっ…!!」



未だ腰に回っている腕を解こうと手にやると、更に引き寄せられ、アルトの膝の間に横向きに座らされた。



「ちょ………でんっ!!」



今度は言い終わらない内にユリアの唇を塞ぐ。



「……分かったか?」



唇が離れ、イタズラの様な笑みを浮かべるアルトにユリアはもう一杯一杯だった。




「わかん…なっ………」



肩で息をするユリアの頬を片手で掴んだアルトは

息が掛かるほど近くへ顔を近づける。



「…………お前………俺の名前しらないのか?」



「……………は?」




突然の意外な言葉に目を丸くしたユリアは離れたアルトを見た。


真剣な表情で見つめるアルトに照れくささから無意識に離れたくなるが、背中に回された手がそれを許さない。



「ちょ……」


「ほら、言えよ」



顎を捕られ、無理矢理ゆっくり口を開く。

ただ3文字の名前を言うだけなのに、全く口が動かない。



「………………あ………………ると………」



絞り出した声はとても小さくて、聞こえたか不安だったが、アルトの顔が徐々に嬉しそうになるのを見て、聞こえたんだと安心する。



安心した時に不意討ちでアルトが抱きついて来た。


「わっ。」


痛いくらいに抱きつくので、戸惑いながらもアルトの背に手を回す。


すると更に強くなった腕の強さに痛いながらも幸せを感じた。


ポスッとアルトの肩に顔を埋めると、アルトの匂いがした。


幸せに浸っていると不意にアルトが耳元で囁く。



「…これから俺のこと殿下とかで呼んだら、どんな場所でも時でも、その唇を塞いでやる。」


「え……ちょ……え!?」



いきなりの宣言に驚いて顔を上げると奪われる唇。



「………何も言ってないのに。」



少し睨むが、真っ赤な顔が邪魔をする。


そんなユリアを見て、いつも通りの意地悪そうな顔でアルトは笑った。



「嫌じゃないくせに」



その言葉に反論出来ないユリアは真っ赤になって無言を貫いた。


そんなユリアをみてアルトは笑う。


こんな平和がずっと続くと思ってたのに。


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