2 誘拐犯には宣戦布告を
お読みいただきありがとうございます。
今回から、マリーたち三人の解説コーナーが後書きより始まります。
「うーん……雑魚ばっか」
「なーんも、面白ないねー」
立ち向かってきた二人組の山賊を切り伏せて、叩き潰して先へ進む。
この山賊達、ほんとに山賊なのかって思うくらい弱い。とにかく弱い。
五十年前の山賊なんて、騎士団一つを壊滅させるくらい強い人がリーダーで、その取り巻きも強かったのに。
「質の低下。剣のサビにもならない」
唯一厄介なのは、洞穴だけあって魔物がいること。まぁ、いるとはいえ、スライムとかだから、出てきた瞬間にパブロが鎌で斬ってるけど。
「アハハ、パブやん。今使ってるの剣ちゃうやん。それ鎌やろー?」
「否定はしない」
そういうカリンも、たまに出てくるパブロの斬り残しを自らの糸で斬っている。
それは、カリンの武器が糸というわけではない。
カリンは、自らの体を赤い糸で構成しているので、体を変形させることができる。
今は腕を星球武器に変える程度だけど、昔なんかは体全体を変形させて体のいたる所に銃身つけたりして。あの時はヤバかったなー。
「あ、マリやん。一匹斬り残したわー」
「ん?」
思いに浸っていると、目の前には、カリンとパブロを抜いて私を襲おうとしているスライムの姿が。
なかなかやるな。お主。
「はいドーン」
剣を使う距離ではないので、取り敢えず殴る。
数メートル吹っ飛ばして壁に当てる。まぁ、スライムだから打撃効きづらいんだけどね。
「頭をドーン」
と言うわけで、翼を使って距離を詰めて、頭をぶった斬る。スライムは敗北者じゃけぇ。
「アハハ、アハハハハ。マリやん、スライムに頭はあらへんよ?」
「否定はしない」
「真似をするな」
パブロに似せて返すと、間髪入れずにパブロが返す。いやー、面白い。
「ほんと、マリやんとパブやんと一緒におると飽きへんわー」
子猫のようにコロコロと笑うカリン。
カリンは、出会った頃から面白いことが好きで、それ故にツッコミが的確だ。というか、行動に対する感想(?)がまんまツッコミになってる。
「そんなことより、もうすぐ最奥っぽいよ」
「そうなん?一体どんな輩がボスなんかねー?」
「強者を希望」
あんまり歩いた気はしないのだが、雰囲気的に最奥が近い。
スライムを斬った剣に付着しているスライムの残骸を払って、剣先を奥に向ける。
その態度を見てなのか、カリンも笑うのを止めて、いつでも星球武器を放てるように、パブロもいつもと変わらない無表情ながら、鎌から持ち替えた馬上槍を構えている。
ゆっくり、ゆっくりと一歩ずつ確実に進み、少し小さめの空間に出たところで。
「ウラァッ!」
蛮刀を降ってきた山賊の賊長を。
「テヤァッ!」
剣の柄で一刺しした。
一割と少しの力だが、賊長を吹っ飛ばずには充分で、子供達が固めて座らされている真横の壁に激突した。
「あー……痛えなぁ」
しかし賊長は、岩にぶつけた背中を擦る程度の仕草を見せた。
「おう、テメェら三人が俺の可愛い子分を皆殺しにした奴らか?」
その目は殺意に燃えているが、どことなく余裕を感じられる。
「その通り。で、貴方が盗賊の親玉ってことでおk?」
「ああ。俺こそが、盗賊団を率いる男、ユーザだ」
ユーザと名乗る男は、再び剣を構えた。その構えには、先程のダメージが感じられない。
「貴方、ダメージ喰らってるように見えないんだけど?」
「ハッ、テメェが知る権利はねぇよ!」
大きく吼えると、ユーザはまた斬りかかってきた。
まぁ多分、斬っても無駄なんだろうけど。
「もう一回かな」
今度は、相手の刀をスレスレで回避して、腹部にカウンタージャブ。
さっきと同じように吹き飛ぶけど……。
「効かねぇぁ?」
背中をぶつけても、痛いってだけだ。
……まぁ、今の、と言うより、一発目の感覚手の内はわかったけど。
「パブロ、カリン」
「わかっとるよー」
「承知」
二人に合図を出すが、二人とも既にわかっていたようだ。それなら一層やりやすい。
「まだまだァッ!」
再びユーザが突っ込んでくる。何度も何度もしつこい。まだ三回目だけど。
「カリン!」
「任せときー」
剣が私に振られる手前で、カリンが星球武器を彼の腹部に当てる。このままでは、さっきの二の舞だけど……。
「一閃」
後ろから飛び出したパブロが、吹き飛ぶユーザの両腕を馬上槍で突き落とした。
「チッ、なかなかやるじゃねぇか」
岩に打ち付けられたユーザは、再び立ち上がった。両腕を失ってもダメージは無いように見える。さらに、傷口から流れるはずの血が流れていない。代わりに、微量ながら別の液体が流れている。それは、さっき私が剣についていたそれに似ていた。つまり、こいつの正体は。
「貴方、人じゃなくて……液体生命体でしょ?」
「……その通りだ」
ユーザは、そう言って、自分の落ちた腕を足でついた。
直後、その腕は液体となってユーザの体に溶け、腕が再生した。
液体生命体。
人間ではない、俗に言うところの魔物の一種で、多くの戦闘経験を積んだスライムの極地。『物理耐性』に『再生器官』という効果を持つ生命体で、ちなみに、カリンは、糸状生命体といって、液体が糸になったバージョン。
「テメェら、普通のやつじゃねぇな?んで持って、どこにも属してねぇだろ」
「なかなかの経験を持ってるらしいね。経験はあっても困らないからね」
まぁ、私達の前で経験とかは役に立たないんだろうけどね。この世界の人は私達の攻撃は知らないはずだから(よほどのマニアは知ってるかもだけど)。
「さて、ユーザとかいうそこのおっさん。うちらと取引せぇへん?」
ニヤニヤ笑いながら、いつもの足取りでカリンが前に出る。
「うちらの目的、別に盗賊に用は無いんよ。おとなしく子ども達引き渡してくれたら、見逃してもええんやで?」
カリンが、そう言いながら辺りをうろちょろする。
「フン、そう言っておいて、俺を捕まえることが目的なんだろ?乗るかよ、そんな取引!」
ユーザが声を荒げた。それと同時に、カリンの足が止まった。
「じゃあ、取引は決裂ってことやねー」
カリンがユーザに振り向く。その顔は、笑っていた。
「ほな、実力行使させてもらうで?」
カリンのその言葉で、平和的解決の糸目は断ち切られ、私達は目の前の雑魚を滅多打ちにすることになった。
マリー「第一回説明コーナーを始めまーす!」
カリン&パブロ「「帰ってもええ(いいか)?」」
マリー「ふざけんなよ?」
マリー「今回は第一話についてです。パブロ、任せた」
パブロ「それ、俺にせつめいさせるのか?まぁいい。第二、三話の年から五十年前に異大陸戦艦っていうやつが……」
カリン「そんなん読者様が見てくださればええやろー?」
パブロ「それもそうだな」
マリー「え、ちょっ」
カリン「次回の説明コーナーでは真面目にやるで?せやなぁ……うちらの二つ名について喋ろか」
パブロ&カリン「次回もお楽しみに」
マリー「よーし二人とも、覚悟してね」
説明コーナーでは、読者の皆様の質問に答える傍らで、こちらからの情報+小ネタをお話します。
次回もお楽しみに。