№1 異世界転生
自分には才能がない。
そう思ったのは、5歳の時からだった。
米国のバスケットボール選手マイケル・ジョーダンが言った。
「Everybody has talent, but ability takes hard work」
誰もが才能を持っている。でも能力を得るには努力が必要だ。
そもそも才能を持ってない自分は努力して能力を得るしかない。
その時点で周りとは一つ下なのである。
5歳の時から気づき始めて20年ほどたったある時。
人生で最初で最後の出来事が起きた。
それは。
死
「死んだら今までやってきたこと、すべて失うことだから絶対に死んではいけませんよ。」
と言われていたが、死は突然やってくる。
そして、目から見える眩い光が見えなくなると、魂となって天に成仏していく。
自分には才能がないから今度は才能をもって産まれたい。
そう願った。
最後の最後まで才能を持ちたいと願った。
そして自分は転生という形で新しい命に転生したのである。
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転生してからというもの、まだ赤ちゃんなので異世界の言葉は分からないし出歩いたりもできない。
ゆいつ、異世界の言葉が聞けると言えば、朝、昼、晩に来るメイド達からしか異世界の言葉が聞けない。
そんなこんなで、大体一年経ってしまった。
まあ、5か月くらいでハイハイが出来るようになり、6ヵ月で「あー」や「うー」などが発せるようになった。
それと元いた世界の言葉を話していなかったせいか、段々と忘れていき異世界の言葉が分かるようになった。
だが、まだ心の中では気になっていることが残っていた。
それは、両親に合っていないこと。
正しくは産んだとき両親は自分のことを見たと思うが、自分はまだ両親の顔を見ていない。
両親は何処で何をしているのか、王族なのか貴族なのか。
賢者なのか、騎士長なのか全く見当がつかない。
だが、その謎も直ぐに分かった。
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ある日、何時ものように赤ちゃんが読むような絵本を数人のメイドと一緒に読んでいた。
だが、いつもなら静かなはずな家がメイド達の走る音やしゃべる声が聞こえてきた。
そこに一人のメイドが部屋に入って来るや否や周りにいたメイド達を集めて何か話をし始めた。
自分は大体予想がついていた。
その予想とは、長い間見なかった両親が家に帰ってきたか。はたまた、その両親が死んだあるいは両親の片方が死んだか。
その二択に絞られた。
だがメイド達の様子から、後者の予想は違うことが分かった。
やっと、両親の顔が見られると喜んだが、その日に両親は帰ってこなかった。