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草原の穴 その後

三人称視点?

 町田仄歌とリスカが草原から出てから、残されたのは一匹の死体だけだった。言わずもがな《お隣さん》である。その戦闘から二時間ほど経過してからのことだ。


 その死体をじっくりと眺める少女が二人いた。

 栗色のショートヘアをした目つきの悪い少女と、黒色のロングヘアで死体を弄くる少女。どちらも白衣を着ている。白衣が大きすぎて後ろから見れば足首も見えない。


「どうする? ここから感じる魔力は禍々しくて馬鹿正直に報告したくないんだが」


 栗色の少女は黒髪の少女に問いかける。

 禍々しいと言えば死体を髪の毛で平然と弄くる少女の行動だが、それはどちらかと言えば悍ましい。およそ人間のできる範囲を超えている。まして年頃の少女がすることではない。


「そうねぇ……けど。この刃物傷は微量な魔力しか残っていないし《お隣さん》の首にも似た魔力が宿っていたけれど、やっぱりこの草原に満ちている魔力とは別の魔力を感じるに」


「その死体は誰がやったか推測できる?」


「魔法学校の生徒じゃないのは分かるに。けど、このレベルの《お隣さん》はB級一人で倒せるギリギリだに」


「B級がひとりでねぇ……」


 感慨深そうに栗色の少女は呟く。《お隣さん》の死体にある傷は、小さいものが二カ所。片耳の紛失と片耳も頭部が落下したときに勢いで千切れている。首を横に一刀両断されており、即死の重傷を与えた。

 戦闘において、これだけ傷跡が少ないのは異常なことだった。


「誰も補助していないってことがありえる? 軽傷がたった数度で、一般人が生首を切断することはできる?」


「うちは無理。そもそも殺戮向けの魔法少女じゃないに」


 黒髪の少女は首を横に振って死体を弄るのをやめた。もう十分なデータはとれたと判断した。栗色の少女は、その様子を見て《お隣さん》にどこからともなく取り出した拳銃を二丁とも向ける。

 少女が持つには大ぶりなリボルバー式の拳銃だ。


「じゃあ、報告内容は適当にしよう」


「そんなんで良いの? 仮にも国の顔が適当はダメだと思うに」


「いいのいいの。僕は役割を果たすけど、仕事を果たす義理はないから」


 黒髪の少女は首を傾げて、しかし何も言わなかった。わからないことを分かるように説明してくれる人間ではないことを知っているからだ。


「それに。僕以外にも国の顔はいるからね」


 気だるげに栗色の少女は言い、軽く口を動かしてから引き金を引いた。

 二発の弾は銃声と同時に《お隣さん》へ放たれた。動かない的に至近距離で当てることは少女でも出来る。ただ銃弾が魔法である以上は、受けるダメージも計り知れない。


 黒髪の少女は避難するように《穴》が発生していた位置までホウキに跨がり飛行していた。魔法少女は誰でも空を飛べるわけではないが、それでもある程度の技術と魔力があれば飛ぶことはできる。

 言葉を換えれば、ある程度の才能があれば空を飛ぶことは容易い。


「あーあ。これは流石に報告するから~」


 黒髪の少女は下に広がる花畑を見つめて呟くように言う。いつの間にかホウキの後ろに移動している栗色の少女には聞こえる。


「構わないよ。草原にあった穴は何事もなく消失し、出現した《お隣さん》は何者かによって既に殺されていた。死体は僕――リリケットが処理をした。そう報告してくれニア」


「わかったに。けど、うちは死体と現場の状況を記録するだけ。報告するのはあなたの仕事ですに」


「面倒だな」


「落としてもいい?」


「ひひひひ。冗談だからやめてくれ」


 そんなやりとりをしながら、二人の白衣を着た少女は戦争の国へと帰っていった。 

三人称視点!

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