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少女の案内にご注意を! ⑦

自分が何を書きたいのか分からなくなってきた

 建物の上を飛び跳ねて移動しながら、私はチャロに話しかける。左手に腕輪として巻き付いているけれど、この状態でもコミュニケーションはとれるのだろうか?


「チャロ聞こえてる?」


 周りからは、どんな風に見えているか想像したくない。自分の腕に話しかけている様子なんて、見られても気にはならないが。

 そもそも、この世界で私のことを知っているのはリスカだけだ。


「き、聞こえています。お姉ちゃん」


 腕輪からチェロの声が聞こえてきた。こっちの声も向こうの声もしっかりと聞こえる。あくまで見た目と、それから重さを変えることができるようだ。


「私が良いって言うまで、絶対に声を出さないで」


「……わかりました」


「あと呪解もしないようにしてね」


「ど、どのくらいですか……?」


 声は少し震えており、あまり良い感じではない。最下層の人間を、一つ上の人間がどういう風に見ているのか分からないので、できるだけ魔法を解かないで欲しいけれど……。


「そうだね……限界までお願いできる?」


「……頑張ってみます!」


「お願いね」


 そこからパタリと音が止まった。魔法にも魔力など根源があるだろうし、持続させるのも大変なのかもしれない。私の《喰吐》も突然魔法が解ける可能性がある。

 こうして建物の上を移動している最中に、魔法が解けることだって有り得る話だろう。


 なんて思っていたけれど、問題なく城壁まで到着した。


「さて、ジャンプで行けるかな……」


 遠くで見ていた時には大きく見えない壁だったけれど、間近で見ると圧巻だ。少なくとも、最下層で一番高い建物よりも、城壁は大きかった。


「珍しいね。固有魔法かい、それは?」


「?」


 城壁から一番近い位置にある建物の上で、これからどうするか悩んでいると声をかけられた。当然だけど知らない声だったし、チャロの声でもリスカでもない。まったく知らない女性だ。

 着地した場所は誰もいないところを意識していたけれど、女性は建物の中から出てきたのだろうか。


 赤い髪をした背丈の高い女性は、髪と同じの赤いドレスを着ていた。最下層の人間には見えないし、どちらかというとダンスパーティーから抜き出してきた貴婦人。と考えても映画でしか見たことないけれど。


「どこか懐かしい匂いの魔法だね。受け売りかい?」


「ひぃっ!?」


 女性は私を抱き寄せて頭の匂いを嗅いできた。ほのかに香る鼻の奥を刺激する匂いがした。どことなく血の匂いに似ていた。

 すぐに数歩分の距離を取る。


「まあ、お嬢ちゃん達みたいな可愛い子が固有魔法を使うのは賛成だけどね」


「……はぁ。お姉さんも、固有魔法を使えるのですか?」


 てっきり少女だけが使えるものだと思っていたけれど。

 いや、敗残兵だけが大人になると言っていたはずだ。正確な情報か知らないけれど、それでも大人は《固有魔法》を失っているのはある種基準としていた。


 その基準は話し相手に対しての安全性だ。


「あっははは。詮索はやめよう。殺したくない」


「……」


 背筋が凍る声色だった。

 足まで震えてそのまま倒れてしまった。怖い。

 リスカが教室で同級生を全員もれなく惨殺していた時には抱いたものとは違う。確実に自分が殺されると感じた。


「ところで、上の階にどんな用があるのかな?」


 真面目に返答するか悩むところだけれど、素直に応えることにした。


「最下層にいる《アート》という犯罪組織の人に追われているので、上に行って逃げようと思ったんです」


「ふぅん。そっか。うん。手貸してあげる」


「へ?」


「どうしたの? リトルハッグでは上に行くには門を通るか、それか空を飛んで壁を越える必要があるけど……外から来たんでしょ? だったら門を通らないといけないけど――」


「あ、あの! その、どうして? ですか?」


 トントン拍子で話が進むと訳が分からなくなる。違和感しかないし、犯罪組織から逃げている私たちを助けて……待てよ。最初に《お嬢ちゃん達》と言わなかったか?


 チャロの存在がバレている。


 まさか、とは言わないだろう。こんな訳分からない登場をしている女性が《固有魔法》を見透かしていてもおかしくはなさそうだ。


 ゆっくりと立ち上がって、気持ちを整える。


「理由かぁ……おもしろそうだからだよ」


「おもしろそう……?」


「そ。あたしは面倒ごとが好きで、面倒を起こすのが好きで、面倒見の良い女なのさ」


 とんでもない自己紹介のように聞こえるけれど、そういえばまだ彼女の名前すら知らなかった。私も自分の名前を名乗っていないけれど、そんな相手を信用して良いのか分からない。

 信用していなくても拒否権はなさそうだけれど。


「とりあえず。《学校》からも、その《アート》ってのからも逃がしてやるって言ってんだよ!」


「え、あ、ちょっと……」


 見えなかった。

 突然身体を抱きかかえられて、そのまま女性は空間からホウキを取り出して跨がった。何もない場所から物質が出てくるという魔法のような場面を見たけれど、ここではそれが当たり前だった。


「そうだ。名乗ってなかったなお嬢ちゃん達」


 と、跨がると同時に今更のように女性は言った。


「あたしはヘラ。よろしくね」


 まったくよろしくしたいと思わなかった。名乗ると同時にヘラは遙か上空まで飛び上がり、その衝撃で私は失神した。



本当。うっかりでも怪我する物ではありませんね……何もかも気力が湧きません(..;)

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