初陣終了しました。
「M82A1バレットレイフルx∞」を手に入れた俺はガッツポーズをする。
ガチャの出口からゴロンと対物ライフルが転がってくる。
こんなんチート武器やん! ∞とか!
「村長! 星5以上の武器はないんだな?」
「いえ、伝説上の武器になりますが星6武器があります」
「どうやって区別してるんだ?」
「主に神様が<鑑定>を使います」
俺にそんなスキルあるのか?
(正直に答えますとありません)
だろうな。
(ですがここでとってしまうことも可能です)
ほぉ……。
(取得しますか?)
頼む。
(取得項目……処理。取得作業……完了。構築……完了。表示言語……日本語。視覚表示……これは脳内処理の方が裕一郎様向けですね。フルダイブ仕様に変更……完了。すべての項目完了しました。裕一郎様、<鑑定>と唱えてください)
う、うむ。
「<鑑定>」
すると対物ライフルの所に文字が浮かんでいる。まるでゲームでの武器のステータス表示のようだ。じっと見つめ――
「やはり星6か」
「なんと! この武器は星6ですか! 素晴らしい!」
わなわなと震える村長を無視しつつ対物ライフルへと歩を進めしゃがみ込む。そしてもちろんながら――持ち上がらないわな……こんな重いもの。
仕方ないのであぐらを組んでその上になんとか対物ライフルを乗せる。そしてくるりと回しながら弾倉を取り外す。そして中に弾がある事を確認し一つの考えが浮かぶ。それは――「属性」だ。
ここはMPポーションなんてある世界だ。剣と魔法の世界で間違いない。そしてエルフっぽいラピス。爬虫類――トカゲ属としておこうか――のエドガーがいる時点でファンタジー世界。そんな中で気になるのは「属性」である。この弾丸が無属性として属性を扱えるものが使うと「属性弾」なんかを打ち出すことができるんじゃないのか? そんなことを考えながら俺は対物ライフルを地面に置く。
カーンカーンカーン!!
どこからともなく鐘の音が聞こえてくる。
「これは?」
「大変ですじゃ! 神様! あの小賢しいゴブリン共がまた攻めて来ましたじゃ!」
「ゴブリン? また弱いモンスターを……」
「確かに弱くて相手にならないのですが数が……」
「ふむ、俺は何をすれば?」
「戦場に――」
「断る!」
当たり前の反応だ。聖剣はおろか対物ライフルも持てない。撃てば反動で確実に肩が致命傷になるだろう。そんな危険は冒したくない。
「ならば指揮を――」
「指揮ならなんとかできるか……それには指揮に必要なトランシーバー的なものが必要だ。村長、さっきガチャからでてた「意思疎通の魔石・中」があったよな?」
「はい、これですかの」
「<鑑定>」
俺が<鑑定>すると魔石の説明が映し出される。
意思疎通の魔石・中……10㎞先の人間に対して意思疎通ができる。大きな魔石が親機、小さな魔石が子機。
ふむ、俺が親機をもち小隊長クラスの人物に小さな魔石をもたせればいいのか。だが小さな魔石は5つしかない。持たせる人物は村長に任せよう。
「エドガー」
「は、はい! 神様!」
「お前はこの対物ライフルをもち俺をゴブリンが見えるところに案内してくれ」
「はっ! 了解しました」
「村長、この大きな魔石は俺が持つ。小さい奴の一つをエドガーに。ラピスは戦闘に参加しないよな?」
「まさか!! ラピスは高ランク魔法の使い手ですぞ」
「ふむ、エドガーの後衛にラピスを付け小さい魔石をエドガーからラピスへ。あと4つの魔石は各小隊長に持たせてくれ」
「はい? カクショウタイチョウ?」
「ん? ああ、パーティのリーダーって言った方がいいか」
「ぱーてぃ? あのう、なにを言っておられるのやら……」
「んん?」
何か違和感を感じる。
「よし! まずは外に出よう」
「こっちですじゃ!」
俺は村長に連れて行かれるがまま「ガチャの間」を後にし岩でできたバルコニーのようなところに出る。下を見るとどうやらこの建物はピラミッド状の建物のようだ。
そして視線の先には小さく見えるゴブリンがわらわらと数百匹はいる。望遠鏡がないのがもどかしい。
(手を丸めて覗き込み<マグニファイ>と唱えてください)
俺はラフィーの指示に従い手で円筒をつくり覗き込む。そして<マグニファイ>と唱える。
すると望遠鏡のように拡大されて見える。
(さっきの<鑑定>もそうですが<マグニファイ>もれっきとした魔法ですのでMP残量には気を付けてください)
MPか、どこから見える?
(HP、MPを裕一郎様の視界の右上に表示します。視覚表示……完了。表示化……完了。これで見えるはずです)
俺は右上を見る。HP300とMP50……まぁレベル1くらいか? 一般人レベルですね。いえ、一般人なんですが。
そして<鑑定>を2回と<マグニファイ>を使ったことですでにMPが20減っている。<鑑定>が1回につきMP5として<マグニファイ>がMP10もっていかれるのか……MPどうにかしないといけないな。
ゴブリンの集団の一番奥には総大将なのかマントを羽織ったゴブリンが屈強なゴブリンに担ぎ上げられた椅子に座っている。ご丁寧に杖も持っていることからゴブリン・ロードだろうなぜ腕に座らず腕に椅子を固定しそこに座っているのか……この世界は謎だらけだ。
「エドガー」
「はっ、なんでしょう? 神様」
「対物ライフルであの一番奥のを狙ってほしい」
「えっと……この剣はどう使うんでしょう?」
「ふむ」
すっかりファンタジー世界なのを忘れていた。こんな世界に対物ライフルなんてあるわけがない。
俺はエドガーに一通りの説明をして――
「それじゃ風を読んでっていっても初めは無理だよな。とにかく一番奥のマントを羽織ってるのを狙ってうつのよ! シンジ君!」
「しん……え?」
「ごめん、悪ノリした。とにかく狙って打ってくれ」
「へい」
ズドン!
放たれた弾は綺麗に当たった――屈強なゴブリンに……。
頭がはじけ飛びそのまま後ろに崩れ落ちる。それと同時にゴブリン・ロードも倒れこむ。
そして混乱しながらなにか叫んでいる。
「村長! このまま兵士をゴブリンに突撃させろ! 陣形はもういらん!」
「は、はいですじゃ!」
「エドガー! もう2、3発打てるか?」
「へ、へい! あと数発なら」
「よし、あのゴブリンの偉そうなのを打ちまくって無理そうなら預けている聖剣で前線に行って武功を上げてこい!」
「へい!!」
そのあとズドンズドンといい音色が数発響き肩を抑えながら対物ライフルを置き聖剣を携えピラミッドの中へと走っていくエドガー。前線に行く気だろう。
「あ、あの……神様、私は何を?」
「ラピスか……適当にそこらへんで見ていていいよ」
「は、はぁ……」
なぜ適当なことを言ったかって? なんせエドガーが放った対物ライフルの弾がゴブリン・ロードの腹に風穴を開けていたからだ。指揮系統を失った敗残兵……これ以上は残党刈りでしかない。
こうして俺の初陣は華々しく有終の美を飾ったのであった。
対物ライフル=聖剣以上のチート武器やん。