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転生

「今ならキャンペーンで転生待ちの行列を追い抜いてすぐにでも転生させてあげれますよ?」

「いらんわ! はよ「グングニル」に帰してくれ!」

「いえいえ、そんなの謙遜しないで下さい、すぐに済みますので」

「どこぞのアンケートみたいに言うなよ!」

「面倒ですね! もう行きましょうか!」

「ふっざけんな! 早く帰してくれ!」


 どうしてこんな状況になったのか俺にもわからない。

 頭を整理するために少し前に遡ろう。




「お待たせしました、転生してくれるんですね。ありがとうございます」


 羽衣を纏い髪を結った緑色の髪の女性が現れそう俺へと告げた。


「おう、もしかして試験中の職業への転生ですか? それにしてもGM(ゲームマスター)と会話するなんて不具合以来だな……オリジナルアバターになったんですね」


 俺が知っているGM(ゲームマスター)は皆同じアバターだったはずだ。こんな特徴的なアバターは知らない。社内で意見が出されて変更されたのか? まぁGMに会うのがまず珍しい。


「あの……私はGMではなく女神なんですが……」

「へぇ、ロールプレイもしてるんですね。ああ、GMだと世界観が壊れるからですか? 世界を守護している女神って設定ですか。なかなかいいですね」

「えっと……そういうわけでは……」


 なにやら落ち込むGM、そして片手をこっちに突き出しそこに画面が現れる。


「これをよく見てください」

「ん……新職業のチュートリアルですか?」


 俺は映し出された画面を見る。そこにはフルダイブ装置を頭につけた男性が痙攣して穴という穴から血が噴き出ているスプラッタな動画が流されていた。正直えぐい!


「な、なんですか? このスプラッタな動画は……こんな動画を見せて……これは立派な職権乱用ですよ!」

「……もっとよく見て下さい。ここに写っている人は誰ですか?」

「ん?」


 俺はよく目を凝らし動画を見る。本当はあまり見たくないが……それにしてもなんだか見覚えのある部屋――つうかこの部屋俺の部屋じゃないか?


「お、おい! これって――」

「ようやく気付きましたか? これはあなた自身の映像です。リアル進行形の――」

「は? なんで! いやいやあり得ない。こんな状況になっていたら強制的にゲームは終了して現実世界に戻されてるはず――」

「あなたは選択肢でYESを選んだ時点で即死しました」

「選択肢?」

「転生するかどうか聞いたはずです。その際選択肢でYESを押した時点で肉体は即死し魂だけがこの天界に来たのです」

「天界? ここはゲームの世界「グングニル」の中じゃないのか?」

「はい、あなたは死んで天界に魂が来たのです」


 ちょっと待ってくれ。理解ができない。

 ええと……ゲームを楽しんでいて俺は選択肢に気付きそれを「YES」と返答した。

 そしたら肉体は即死ダメージを負い魂が天界であるこの場に贈られたとそういうことか?

 意味が分からない、一体全体どういうこった。そんな事を俺が思っていると女神が――


「あなたは転生者として選ばれました」

「ふざけろこんちくしょう!」

「光栄に思ってください」

「今すぐ俺を「グングニル」に帰せ!」

「さぁ! 旅立つのです! 勇者よ!」

「人の話聞かんかい!」

「今ならキャンペーンで転生待ちの行列を追い抜いてすぐにでも転生させてあげれますよ?」

「いらんわ! はよ「グングニル」に帰してくれ!」

「いえいえ、そんなの謙遜しないで下さい、すぐに済みますので」

「どこぞのアンケートみたいに言うなよ!」

「面倒ですね! もう行きましょうか!」

「ふっざけんな! 早く帰してくれ!」

「ですがあなたの肉体は既に――」

「いやいや! そんな映像信じないぞ!」

「困りましたね……一応生き返るには転生してもらわないといけないのですが……」

「ふざけんな! 今すぐ俺を帰してくれ!」

「もういいです。本当は肉体強化か強力な武器かを選んでもらうのですが――武器でいいですね。それでは異世界にいってらっしゃい! あなたの活躍を楽しみにしていますね!」

「おい!」


 手を振る女神が急に遠くなる――っていうか異世界転生とかふざけんな! 俺は元の世界で十分満足してんだ! 今更異世界に行かれても困る!

 遠くなる女神に俺は「家に帰せ!」としか叫べず意識が薄らいでいでいく。

 そして――




 ドスン! と俺は自分の体が宙から落ちたことで目が覚める。


「知らない天井」


 そんな事を俺は呟く。


「おお、神よ。降臨されましたか! 待っていましたぞい!」


 俺は首を横に傾けると何かを祈っている人たちがいた。所々から「神だ」「神が降臨なされた」と言っている。中には爬虫類の人型をしたファンタジー種族もいる。

 どうやら俺は本当に異世界に来てしまったようだ。

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