出会い
・・・・・・山の中枢部。人が麓の住人が足を踏み入れない場所。その奥に小さな館がボツンと建てられている。
館は木製であり、自然を壊さないように作られ、あたかも元からそこに存在していると思われるほどだ。
住んでいるのは一人。夜を思わせる漆黒のローブ、同じく漆黒の帽子を被りはたから見れば魔女と呼ばれてもおかしくなかった。
本人にもそれを理解しており自分から、自分は魔女だと。豪語した。
魔女は山で取れる薬草を取り、調合し、麓の村に薬を下ろしいる。最初は格好のせいもあり引かれていたが薬の効能がよく、時間がたつ頃には、そういう格好を好んでしてる変人と結論をきめた。薬の腕は信用できるので村人達は魔女が売って来る薬を待つようになった。
霊山の森の中。そんなある日の日の出前。魔女が山で薬草を集めているときだった。向こうの茂みから泣き声が聞こえる。
はて?動物の子供でも生まれたのか。しかし、このあたりは動物の巣はないはずなんだがな?
・・・・・・ふと、気になり。泣き声の元まで向かうと・・・・・・赤子がいた。
木製の網籠の中にシーツにくるまれて泣いている。
このまま見なかったフリをしてもいいし、ここから去って動物に食べられてもいい。こっちには助ける義務はない。
・・・・・・しかし以外だ。いまさら、こんな山の中の中枢まで来る馬鹿がいるとは・・・
山の効能で動物がおとなしくなったとはいえ、動物にとっては人もまた食料。おとなしくしても動物は動物、生きるためには肉を喰らう。
人だろうが関係ない。これが自然の摂理だ。
【ハルメリア山】は登れば上るほど濃度が上がり、効能も強くなり、病状も落ち着いていき、完治するのが早くなり一時期登山をする病人が増えたがそんな虫のいい話があるわけがないデメリットもある。
重病の病人が山の効能目当てで麓の村にくるも、早く治したい気持ちで焦り、山を登り、病状の治りが早く完治しても。
下山中に高すぎる濃度の関係で体が耐え切れず動かなくなりその場で倒れふせ、死亡してしまう。ゆっくりと時間を掛けて少しずつ上れば体に耐性がついていいものを。
これが何度も多発し、ここ十年は登るバカはいないのだが。・・・網籠の周囲を調べる。赤子を連れてきたものの足跡がないかと調べるも足跡はない。籠が一人で動いたとかもないな。
見た感じどこにもである籠だし。・・・・・不思議だ。××年生きているがこの濃度の中、生存してるのには驚きを感じ得ない。こんなのは初めてだ。
見てみぬフリでほっとこうと思ったが・・・・・興味が沸いた。
青天の霹靂。壺からサラマンダー。薬草入りのバッグを肩に担ぎ、泣いている赤子を包まっているシーツと一緒にそっと、優しく抱きしめる。ゆらゆらと体を揺らし、赤子の背中をポンポンと優しく叩く。
泣いていた赤子が泣くのをやめた。心地いいゆれと適度な振動で赤子をそのまま眠りに突く。
現金な子供だね~。知らない人の腕の中で、右手の親指をしゃぶり、ぐっすりと寝ている赤子に魔女は声をかける。
「お前は今日からうちの子だ。・・・名前は何にしようかね?」
赤子の名前を考えながら自宅までの歩を進める。気分が良くなり、口から歌が口ずさむ。魔女の背は新たな未知に対して楽しそうに歩き出す。
魔女が赤子を拾って十数年。変わらず日々を過ごす。