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13話

 シュルバート王国の城に辿り着いたハルトは、本来シュルバート王国の国王が座るはずの玉座に我がもの顔で座っていた。そこがまるで自分の定位置と言わんばかりに。


「それで……何か言い分はあるか?」


 ハルトは玉座に上で足を組み、床に這いつくばっている連中を見下ろす。ヴァンは玉座の後ろで静かに控えている。


「りゅ、竜国が謀反人であるそいつを匿っているからだろう!! そいつの首を渡せ!」


 金髪碧眼の少年がこちらをきつく睨みつけながら声を荒げた。多分こいつがシュルツ王子だろう。


(ふ、勝った。俺の方がかっこいいではないか)とハルトは内心で呟く。


「ほう……我が義弟の首を寄越せと言うのか?」


「そう、だと言って、いる。って我が義弟?」


 ヴァンを義弟という竜王にシュルツ王子は首を傾げた。


「ああ、ヴァンは俺の番にとって大切な弟だ。どうして俺がお前らみたいなゴミ屑のために義弟を手にかけなければならない? 納得できる理由を言ってもらおう」


「そ、そいつはシュルバート王国を隣国に売ろうとした。そして、国民から集めた税を私利私欲のために使ったギルバート公爵家の者だ!」


 そう言い捨てるシュルツ王子を、ハルトは鼻で笑う。


「なるほど。では、次にそこの女に問う。お前の犯した罪を言え」


 ハルトはシュルツ王子の隣でブルブルと体を震わせている女性に問いかけた。


「わ、私は悪くない。私はこの世界のヒロインなのよ。だから、何をしても許されるの」


 突然意味不明なことを言い出す女に、ハルトは眉を寄せる。


「ヴァン、この女は何を言っているんだ?」


 ハルトがヴァンに問いかけると、ヴァンも分からないと首を横に振った。


「俺はお前自身が犯した罪を言え、と言ったんだ」


「私は悪くないわ! あの女はいつも私を見下した目で見てきたの! だから、あの女を夜盗に見せかけて襲うようにお父様に頼ん……あ……」


 自分の失言に気が付いた女が、両手で口を押さえるが、ハルトの耳にはその内容がはっきりも聞き取れてしまった。


(この女が……エレナを……)


 女の口から吐かれた事実にハルトの視界が真っ赤に染まり始めた。衝動的に目の前の女の首をはねようと腕が動きそうになったとき、誰かがその腕にそっと触れた。


「ハルト、帰りが遅いから来てしまったじゃない」


 そう言ってハルトの横で可愛らしく微笑むのはエレナだった。


「エレナ……どうしてここに?」


「うーん、ハルトの帰りが本当に遅いから、このネックレスにハルトのいる所に連れてってお願いしたら、お願いが届いたようなの」


 自分でも何が起きているか分からないと笑うエレナにハルトの目が大きく見開かれる。多分エレナは無意識に転移(テレポート)を使ったのだろう。

 転移(テレポート)は空間時空魔法の最上位に位置し、人族が単独で使えるなど聞いたことがない。それを普通に使ってしまうエレナはやはり規格外な存在のようだ。


「……で、これはどういう状況かしら?」


 エレナは不思議そうに周囲を見回してハルトに問いかける。


「お前を陥れた奴らを断罪している最中だ。ちなみにギルバート公爵と公爵夫人を殺した奴らもいる」


 ハルトはそう言ってローズ男爵とその娘を指差す。


「なるほど……」


「そ、その目が気に食わない!」


「……え?」


 突然喚き出すローズ男爵令嬢にエレナは視線を向ける。


「権力も、美貌も、何もかも持っていて、いつも余裕な顔をしている貴女が憎くて憎くてたまらなかった。だから、貴女を夜盗に襲わせたのよ。貴女を捕まえて、凌辱して、身体もプライドもボロボロにしてって頼んだの! あのときは本当に愉快だったわ。ああ、それとギルバート公爵一家を謀反人に仕立て上げたのも私よ! どう? 私が憎い? 殺したい?」


 狂気に顔を歪めたローズ男爵令嬢に、シュルツ王子を始めとする王族達も唖然としている。


「……そうですわね。私は貴女がとても憎かった。お父様とお母様を陥れた貴女を今すぐに殺してしまいたい。でも……私は今とても幸せなのです。ハルトが私を必要としてくれる、それさえあれば私は何もいりません」


 エレナがそう告げると、ハルトが嬉しそうに笑みを浮かべ、エレナを引き寄せた。


「俺もエレナさえいれば、何もいらない。しかし、こいつらを野放しにはしておけないな。ホロン、後はお前に任せる。くれぐれも手を抜くなよ」


「承知しました」


 それを聞いたハルトは満足げに頷き、エレナを抱き上げ、その場から颯爽と出ていった。

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