第1話*ゼロに限りなく近い男*
まだまだ学園系ではない短いお話です
馬鹿みたいに目が痛い。
先ほどあの国王の魔法に目をやられてしまったのだろうか。チカチカして目を開けることができない。
「くそぉ、こんなに眩しいのなら先に言っとけよ!」
と文句は言うもののあんな自分勝手なお願いをしたのだ。相応の対価ぐらいに思っていた方がいいかと考え直す。
次第に目が開けれるようになり、何となく自分がいる場所の風景や雰囲気が分かるようになってきた。
「・・・見た感じ・・・森の中だよな・・・」
見渡す限り、木、木、木
誰がどう見ても森の中にいるのだと判断できるな。
だが放置された感じの森じゃない。木の高さはもちろん違うものの、しっかり手入れされているように感じる。つまりは明らかに人の土地という結論に行き着く。
「うわぁ、なんか面倒臭いとこにきたなぁ・・・。不法侵入とかで訴えられたりしないよな?うーん、兎に角今は探索か・・・」
人様の土地というのは気が引けるが、なにぶん情報が全くと言っていいほどない。まずは歩き回ってみる。
「よっこらせっ!って、んんんん!!??靴がない?・・・なんで?なんで靴ないの?!」
王が送りわすれたからだ
「マジかよ・・・、いくら手入れされてそうだとはいえ森の中を裸足で歩くのは・・・・・・、まあ、無いものはしょうがないか・・・」
ガックリと背中を丸めてキョロキョロしながら裸足で歩き出す。その様子はまるで初めての場所に戸惑う猿のようだ。
しばらくその様子で歩いていた勇者だが1つ気になることがあった。そういえば前の世界で持っていたアイテムやカンストしたステータスはどうなったのだろう。
普通そこが1番に気にするべきことなのだがあまりの目の痛さにすっかり忘れていた。
ちなみに武器は向こうに置いてきてしまっている。まさか言ってすぐ送ってもらえるとは露ほども思っていなかったので、そこそこの防具だけ装備して手ぶらで王に会いに行ってしまったのだ。
今は体を見ると防具は付けているので「しまった・・・」という感じだ。武器も持ってこれたのに・・・などと後悔している。
だが防具を持ってこれたのならアイテムにも希望が持てる。
早速アイテムの確認をした。前の世界でのやり方だが、まず手をグーからパーに開く。すると画面状のホログラムのような物が現れる。そこのアイテムとかかれた欄をもう片方の手でタッチして確認を行う。ステータスやレベル、装備などの確認も同様のやり方になっている。
確認してみてひとまずホッとする。対魔王用に必死に集めたランクSSの「神の御薬」と呼ばれるMP、HPフル回復+全ステータス1分間1.5倍やその他SSやSの強化用アイテムや回復アイテム
今まで集めた材料などは無事残っていたからだ。
しかし良く見るとアイテムは無事なもののあるものがスッカラカンである。
お金だ。
これには凄く焦った。やはり通貨が違うから使えないのか・・・。と考えてみたが前の世界での事をよく思い出してみると
「っ!!......そういえばオレ金なんてもってなかった......」
まあ、もちろん持っていたとしても先ほどの考えのように使えない可能性が高かったので絶望が少ない分良しとした。
だが、これよりももっと重要な事がある
それはステータスだ。
カンストしたままの状態だとその世界特有の魔法や能力を強くする以外育成の楽しみは無くなるのだが、
やはりレベルが高い方が生きやすいはずだ。一度死ねば終わりなのだからできれば安全な道を歩きたいと思うのが人間である。
早速確認してみると、衝撃の事実がそこにあった。
「・・・・・・・・・っ!!」
「無い!無い!オレのスキルも!レベルも!ステータスも!全然無い!≒0!あれ、でも・・・」
―――――――――――――――――――――
黒木勇人 (♂)
レベル 1
HP 5-4
MP 56000
(初めなのでわかり易く)
攻撃:Attack(ATK) 1
防御:Defense(DEF) 1
魔法攻撃:Magic Attack(MAT) 1
魔法防御:Magic Defense(MDE) 1
敏捷性:Agility(AGI)50
命中率:Dexterity(DEX) 1
回避率:Evasion(EVA) 1000
クリティカル:Critical 50
❮使用可能武器❯ 剣、刀、杖、歯ブラシ
❮属性❯火、水、木、光、闇、無
称号︰ 『身勝手』『亜勇者』『毒舌耐性弱』
「・・・・・・・・・・・・ふ、ふむ。」
ツッコミどころ多すぎでどこからつっこんでいいのか全然分からん。
まず、なんだよ、HP5-4って。1ってかけよ!遊び心いれてんじゃねーよ......
他もほとんど1だけどMPが異常に多いな......
前の世界でレベル1だったとき1000だったぞ?仲間の魔導師でさえ5000だったのに、これはこの世界でも高いほうなのか......?
分からないな。
回避率も高いね......カンストしたときでさえ790だったのに1000て、HPとATKが1ってことを考えると妥当な気もするけど俺逃げるしかなくね?
せめてMATが高けりゃMPに物言わせて戦えるんだろうが1って......。プヨモンにも時間かかるじゃん。
逃げ足だけ早い塵なんじゃ?
あと一番気になったのが使用可能武器だな。
前三つは分かるけどなんだよ、歯ブラシって。
歯を魔法使って全力で磨く機会なんかねーよ!
というか、皆歯ブラシ使えねーの?汚いな!
まあ、武器としてじゃなきゃ使えるんだろうけどさ
あとは......称号か。
まあ、それはなんか身に覚えがあるのが多いからなんとも言えないけど毒舌耐性をマゾって読むのに驚きだな...。
...あ、俺はマゾじゃないぞ!
まあ、そんな事は今はどうでもいいや。
...良くないけどひとまず置いとこう
というかまじでどうしようかな
勇者はステータスの確認後相当な気力を無くし、しゃがみこんで項垂れている。
まあ、HP1なんかちょっと「プヨモン」にぶつかっただけでも死に至る。
状況的には蟻が踏まれる二秒前って感じだ。もうすぐそこまで死が迫っているのだから項垂れるのも無理はない。
HP1だとせっかくの回復アイテムも使えないし
相手の攻撃は全部一撃必殺になる。
今本当にヤバイのだ。
「・・・ん〜、とはいえこのまましゃがみこんでるだけじゃ空腹で普通に死にそうだしなぁ、どうしたもんか」
近くにあった岩に座り裸足の足を組んで
落ち着いて考えてみることにした。
――――――――――――――――――
しかし、なんだろう
周りから人が走っているよな音が聞こえる
なにやら叫んでいるようにも感じる。
まずい、地主でも来たか・・・
地主で言い方合ってんのかな…、まあいいや。
そう思い、木の影に隠れようとする
すると
「ああっ!!!いましたわ!」
「っ!?」
後方数メートルから女の子の声が聞こえた
それは明らかにハヤトに向けられた声だった。
「ちょっと、あんた!止まりなさい!ずいぶん探したのよっ、もう手間かけさせるんだから!まあ、新入生がここに迷うのはよくある事だけどね」
ずいぶん探したのよ?・・・まて、まるで遭難者が山から助けられる瞬間のようではないか・・・
あの声の主は敵ではない?のか?
なにぶんHPが1なので疑り深い。しかし敵意は感じないので振り向いてみる
「 ―――っ 」
そこに立っていたのは驚くような美少女だった
白の半袖カッターシャツに青のチェックのミニスカート、胸元には真っ赤で大きなリボンが飾られている。髪の色はリボンの色に近い赤色で瞳は金に輝いていた。175cmであるオレよりは少し低い感じなので並ぶといい感じなのではと今の状況には不相応なことを考えてしまう。
「ちょっと?あなた新入生でしょ?今入学登録の最中なんだけど男子生徒が1人足りなくて2年で探してたのよ、あんたのことでしょう?」
ほう、2年か。
ヴォルフも良かったがお姉様というのも悪くな・・・ゲフンゲフン
あと今の話だとここは異世界の学校の敷地内ということか?男子生徒が1人足りないとはなんとも都合がいい。
良すぎるくらいだ。その生徒君には申し訳ないが俺が新入生ということにさせてもらおう。
登録中ということのようなのでまだその生徒君はちゃんと生徒として登録されていないのだろう。
心配するなよ、生徒君!俺が代わりに青春を満喫してやるからな!
なんとも順応性が高い勇者である。
にしても、綺麗な赤髪だな〜、麦わら帽子が似合いそうだ。
そんな事を考えつつ、勇者はお姉さんについて言った。
明日にでも更新したいです




