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2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
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英語〜featuring 山本〜

 「もう寝るか」

 そう言って武田は机の上を片付け始めた。

 武田は少しずつではあるが、公式の使い分けも理解も出来てきている。

 「今のお前だったら赤点は免れるだろうから、頑張れよ」

 俺が武田を励ますと

 「実はな、お前に言ってないことがあるんだ……」

 何やら深刻そうな顔になる。

 「なんだよ」

 “何かとんでもない事でもあったのか??”

 俺は不安になり、少し引きつった顔になる。

 すると武田は

 「俺さ……英語もダメなんだ」

 と言う。

 「…………は?」

 俺は頭の中がフリーズしてしまう。

 「英語は数学よりも出来ねぇんだ」

 「冗談だろ?」

 武田の話が信じられなかった。

 「嘘じゃねぇよ」

 「この残り数日で赤点を免れる自信は?」

 「…………」

 俺の問いに武田は沈黙し

 「ない」

 と答える。

 「お前な! こういうのは先に言えよ!」

 「……すまん」

 武田は俺に頭を下げる。

 「このページの文、どれ位理解できる?」

 俺はかばんから英語の教科書を開き、武田に見せる。

 「……“私は”………………」

 武田はそれを言って黙り込む。

 「おい、冗談だろ?」

 「……分かんねぇんだよな…………」

 武田は頭を垂れる。

 俺はただただため息しか出なかった。

 「中学の時の英語の成績は?」

 「1以外取ったことがねぇな」

 “……うん、壊滅的だ”

 「お前なー……」

 俺も俺で武田の英語がある程度のレベルはある、と何も知らずに思っていた節もあったから、俺にも少しは責任がある。

 だが、相談が急過ぎる。

 「数学よりも覚える事が沢山あることを、なんで後回しにしたんだ??」

 と聞くと

 「嫌いだから……」

 そう言って俯く武田の頭を教科書で叩く。

 「痛ぇよ!」

 「嫌いで避けてたらいつまで経ってもできるようにならんだろ!」

 と言うと

 「だから、悪かったてば」

 と謝る。

 

 「取り敢えず、寝ないとな」

 俺は1度心を落ち着かせて、武田に声をかける。

 「そうだったな早く寝ねぇと……あ」

 と武田は、何かを思い出したように言う。

 「なんだよ」

 と俺が武田に聞くと

 「お前、寝るときどうするか?」

 と返される。

 「同じベッドで構わないけど?」

 「いやいや、そういう事じゃなくてよ」

 武田は俺の答えを否定し、

 「お前、何か抱いてないと寝れねぇんだろ?」

 と言う。

 「あー……そりゃーそうだけど……」

 “別にお前に抱きついて寝ても良いんだけどな”

 俺は心の中でそっと呟くと

 「じゃあお前は先に寝とけ」

 武田の予想外の答えに俺は驚くしかできなかった。

 「え? お前は?」

 「お前が寝てから布団を奪う」

 「いやいや、そんな事しなくていいから……」

 武田は俺の事を考えてくれてるらしいが、それじゃ俺としても気まずい。

 “武田がかわいそうだよな……”

 俺はそう思い、言う言わないで葛藤したが、

 「じゃあどうすんだ?」

 と言われ、答えることにした。

 

 「………………お前の腕とかに抱きついて眠るから……」

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