表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
74/85

厨房〜featuring 武田〜

 “なんでピザ屋に食いに行くんだ?”

 俺は歩きながらもずっとそう思っていた。

 “せっかくイチャつけると思ったのによ”

 少し不満気な俺の横で、山本はピザ屋に行くのを楽しみにしているような顔だった。

 “何が楽しみなんだ?”

 俺は疑問を感じるが、俺がいちいち不満を口にしても雰囲気が悪くなるだけだ。

 “コイツはすぐ怒るからなー”

 そんな事を考えていると、

 「あれかな?」

 と言って目の前の店を指さす。

 「アレっぽいなー」

 俺もスマホでマップを見ながら答える。

 その店の看板の横には

 『ガラス張りのキッチンから作りたてのピザをお届けします!』

 と垂れ幕が下がっていた。

 “もしかしてガラス張りのキッチンを見たいが為に来たんじゃねぇだろうな?”

 心の中に出てきた不満を必死に隠して、先にピザ屋に入る山本の後を付いていく。

 

 「な、ここに座ろうぜ」

 山本が座った席はキッチンが良く見える席だった。

 「お前、そんなキッチンに興味があるのか?」

 「……悪いかよ」

 山本は一瞬恥ずかしそうな顔した後、俺を睨む。

 “キッチンのどこが良いんだよ”

 と思いながら山本に質問をしてみる。

 「お前、いつもキッチンの近くに座るのか?」

 「いいや」

 そう言って山本は首を横に振る。

 “だったらここじゃなくて、端の席に行こうぜ”

 と言いたかったが、それを言って怒られたくない俺は不満を呑み込んだ。

 「……んで、お前は決めないのか?」

 山本は俺の方にメニューを寄せる。

 「もう決まったのか?!」

 「……一応は」

 そう答える山本は何かソワソワしている様子だったが、キッチンが良く見えてれば落ち着かないのもわかる。

 

 俺は五分程考えて

 「これだな」

 と言って目玉焼きが乗ってるピザを指差す。

 「ビスマルクかー……じゃあ俺はペスカトーレだな」

 と言って魚介類が乗ったピザを選ぶ。

 「取り敢えず注文するか」

 俺は店員さんを呼び、俺と山本のピザを頼む。

 俺が注文している間もずっとソワソワしていた山本に

 「そんなに落ち着かねぇなら席替えねぇか?」

 と提案するが

 「ここがいい」

 と言ってキッチンの方を向く。

 「お前なー……キッチンは他の席でも見れるだろ?」

 遂に呆れた声で山本にケチを付けようとすると

 「あれは見えないだろ?」

 と言って、キッチンを指差す。

 「何がだよ」

 と言って山本が指差した方を見ると、コックがピザの生地を回し始める。

 “これが見たかったのかよ!”

 俺は信じられなかった。

 子供じゃあるまいし、こんなのに感動を覚えることなんて無いだろうと思い、

 「冗談だろ?」

 と山本に尋ねようとするが、俺はその言葉を最後まで言えなかった。

 いや、聞く必要も無かった。

 「凄いなー、なんであんな綺麗に回せるんだろう……」

 ピザの生地を回している事に感心している山本が冗談半分で見ているはずがない。

 真剣な顔つきで生地を回している様子を見ているのは子供以外見たことが無い。

 いつも何かと大人びた雰囲気とは大違いだ。

 “子供っぽい所もあるんだな”

 俺はそう思うと山本の可愛さに口元が緩んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ