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2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
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再会〜featuring 山本〜

 「もし良かったら、両親のお墓に行ってみない?」

 俺らは寺田さんのその言葉で再び車に揺られる事となった。

 

 「両親のお墓は県を跨いじゃうんだけど……」

 寺田さんに言われ、俺はどもってしまう。

 “武田をここまで付き合わせるのは悪い”

 そう思ったからだ。

 だが、

 「今行かなきゃいつ行くんだよ」

 という武田の言葉に俺は背中を押されて、寺田さんと共に両親のお墓へと向かう事にした。

 

 だが、武田は昨日あまり眠れていなかったせいか、ウトウトし始めていた。

 「おい、起きろ」

 俺が小声で注意する度、

 「寝てねぇし」

 と背筋を伸ばす。

 武田には『起きろ』と言うものの、俺自身もかなり眠たかった。

 

 「あともう少しよ」

 そう言われて俺ら二人は姿勢を正す。

 「ここは?」

 俺は車の窓から見えているのが、どこの景色か気になってしょうがない。

 「私たちが小さい頃から住んでいた所。そして倖大君も小さい頃はここに住んでいたのよ」

 寺田さんはそう言うが、俺には全く思い出せない。

 「そうなんですね……」

 俺は少し寂しい気持ちになった。

 “小さい頃の記憶が無いのは仕方ないよな……”

 そう思ったものの、生まれ育った景色を思い出せないのは辛かった。

 「どうかしたか?」

 武田は俺を心配して声を掛けてくる。

 「大丈夫だよ、何も無いし」

 そう言って俺は足元を見つめる。

 

 「着いたわよ」

 寺田さんの声を合図に、車が止まる。

 「ここから少し歩くけど、2~3分だから」

 と言って寺田さんは俺ら二人を案内する。

 華奈と華奈のお父さんは車の中で待っててもらうことになった。

 「ここよ」

 寺田さんはどこからとも無く花を取り出し、お供えをする。

 「義兄さん、姉さん、倖大君を連れてきたわよ」

 そう言って寺田さんは手を添える。

 寺田さんは黙祷しながら何かを呟いたあと、

 「私たちは外すわ。終わったら車に戻ってきてちょうだい」

 寺田さんはそう言って立ち去った。

 「俺も外すか?」

 武田が気を遣って歩いていこうとするが、

 「お前はいといてくれ」

 と武田を引き止める。

 「分かった」

 そう言って、武田は俺の肩を組む。

 「話したいことあるんだろ? 話しとけ」

 武田は組んだ手で肩を叩き、背中を押す。

 俺は武田に

 「ありがとう」

 と言って話し始めた。

 

 「久しぶり。倖大だよ。俺は元気だ。そっちはどう?」

 などといいながら

 “生きているわけでもないただの石なのにな”

 そんな事を思いながら話しかけた。

 失礼なのは分かっていたが、そうでもしないと、心がもたない。

 

 「俺さ、二人の顔覚えてないな」

 俺は笑いながらそう言ったはずだが、不思議なことに目の前は涙で滲んだ。

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