再会〜featuring 山本〜
『久しぶり〜』
六時限目が終わる頃、友達追加してきた華奈からメッセージが届いていた。
初めて会った時よりも随分軽い感じになっていて、少し安心した。
『久しぶり』
華奈にそう返信すると、すぐに既読が付き、
『お母さんは何も予定無くて空いてるんだけど、山本さんは今日空いてる?』
と聞かれる。
「なぁーにしてんだ?」
俺の肩の後ろから武田が顔を出す。
「華奈に今日空いてるか聞かれたんだけど……」
「マジかー」
武田は少し落ち込んでいるような感じだった。
「そうだけど、なんで落ち込んでるんだ?」
と聞くと、武田は
「落ち込んでねぇよ」
と言って笑う。
「華奈って、お前の恩師の娘さんのことだろ? 今日会うってか?」
「うん、まぁね」
武田の質問にそう答えると、武田はため息をつき
「行ってこいよ。俺は一人で帰っとくから」
と言って教室から出ようとする。
「おい、待てよ!」
俺は武田を呼び止める。
「なんでお前も行かないんだよ」
「なんで俺も行くんだよ」
「寺田さんはお前が居ても気にしないから、行こうぜ?」
と武田を誘うと、武田は少し嬉しそうな顔をして
「だったら早く行こうぜ!」
そう言って俺を急かした。
「本当に待ってるだけでいいのか?」
武田は少し心配そうに尋ねる。
「迎えに来るらしいから気長に待とうぜ」
そう言って俺はさっき自販機で買ったジュースを開けて飲んだ。
──『空いてるけど、どこに向かえばいい?』
『そっちに向かいに行くよ〜』
『わざわざ手間をかけさせるわけには』
『車の方が早いから〜』
『分かった、正門で待っとく』──
というやり取りを交わしたから来るはずだ。
「なー、まだ待つんかー?」
武田は俺のジュースを俺の手から奪って飲んだ。
「おい! 返せ!」
と言ってジュースを取り返す。
「でも10分しか待ってないぞ? あと少し待ってても問題は無いだろ?」
「いやー、それがなー……」
と言って武田はため息をついたと思うと
「あ、綾瀬先輩と海藤先輩! お疲れ様です!」
門から出てくる野球部の先輩に挨拶をする。
「おー、武田じゃないかー! 今週のテスト、赤点取るなよー!」
と一人の先輩が武田に手を振って歩いていく。
「おっす!」
武田も先輩らが見えなくなるまで手を振り続けていた。
だが、先輩らが居なくなった途端、急にため息をつく。
「これが嫌なんだよな」
武田はそう呟きながら再び俺の手からジュースを奪う。
「なら場所移すか?」
「んー、待ち合わせ場所にいないっつーのは申し訳ねぇから、あと少しだけここに居とく」
そう言ってジュースを飲み干したかと思えば、
「ほい」
とついさっき空にした空き缶を手渡す。
「要らない!」
俺が空き缶を突き返すと
「じゃあどうすんだよ」
と言って武田は空き缶を見つめる。
「ゴミ箱に捨ててこい」
俺がそう言うと
「めんどくせぇー」
と言いながら
「じゃあ捨ててくっから」
と走り去る。
『もうすぐ着くよ〜』
と送られたメッセージを受け取ると同時に、空き缶を捨ててきた武田が戻ってくる。
「もうすぐ着くらしい」
「やっとか」
と言って武田は腕を組む。
「少し緊張するな……」
「ん? 何か言ったか?」
「ただの独り言だよ」
俺の呟きは聞こえてなかったようだ。
「山本さーん、ごめん! お待たせー」
と華奈はそう言いながら駆け寄る。
「あ、いや、良いんだよ」
と俺は微笑んだ。
「さーさー、お友達も一緒? じゃあ早いうちに行こ?」
と華奈は少し強引に俺らを車へと案内する。
「さぁ、乗って」
と言われて真っ赤なデミオに乗り込む。
“久々だな……緊張するが、楽しみだな!”
話したいことを頭で整理しながら、車に揺られた。