助言〜featuring 山本〜
「色々ってなんだよ! 何があったんだよ?!」
俺の脳裏にはいろんな可能性が過ぎる。
“寺田さんに何かあったのでは?”
そればかりを考えていたが、答えは違うものだった。
「典子さんに問いつめられて、信用してもらう為にーって言ってたぜ?」
城之内は肩を竦めながら答える。
「アイツ……」
俺は典子に対する腹立たしさと、華奈に対する申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「それで華奈は俺の連絡先が欲しいって言ってたのか?」
と城之内に確認を取ると、頷いて肯定する。
「もしかして、華奈は山本の連絡先を交換したいが為にお前と交換したんじゃねぇか?」
武田は笑いながら城之内の肩を叩くと
「気にしないようにしてんだから!」
と武田の手を払い除ける。
“でも寺田さんに何か起こったわけでは無かったんだな”
俺はホッとして肩をなでおろす。
それが分かっただけでも良かった。
「んで、教えたけど構わんよな?」
「あ、うん」
数分前と質問の内容が変わっていたが、余程な事がない限り、教えてくれていても問題は無い。
それから少しすると、教室にクラスメイトが続々と戻ってくる。
「取り敢えず、お前が華奈と上手くいく事を祈っとくよ」
俺は城之内に微笑みながら席に戻る。
「上手くいくかな……」
やたら弱気な城之内に武田は
「いっちょぶち当たって玉砕してもいいんじゃねぇか?」
笑いながら言う。
「それが出来たら簡単かもしれんけど……」
と少し弱気な城之内に
「やってみねぇと分かんねぇだろ?」
と武田は言う。
「だからお前らにも来て欲しいんだよ……」
城之内は少しモジモジする。
「何の話だ?」
「俺の家に来るって話」
「お前……」
俺は驚きが隠せなかった。
「連絡先交換して間もない女の子を家に連れ込む事が出来るなら告白しろよ」
「そうだそうだ」
城之内の後ろにいる武田も俺の意見に同意する。
「いや、マジでどうしたら良いのか分かんねぇんだよ……」
と城之内は頭を抱える。
「俺なら……取り敢えず家に連れ込む事はしないかな」
「てか、普通は連絡を取り合って飯とかからだろ?」
俺と武田は城之内の“お持ち帰り”を否定する。
「お前って付き合った事ねぇだろ?」
武田は笑いながら言う。
「でも、何で家に連れ込むんだ?」
俺が城之内に尋ねると
「いや、先手必勝って聞いたから……」
と答える。
「まさかお前、どっかのモテ男の話を間に受けてたりはしねぇよな?」
武田がニヤケながら聞く。
「うるせぇ! そ、それのどこが悪いんだよ?」
「やっぱりな!」
城之内から予想通りの答えが返ってきた武田は腹を抱えて笑う。
「おっ、お前!」
武田を殴ろうとする城之内の手を掴み
「次からこういう事は俺らに相談した方がいいぜ?」
そう言って落ち着かせた。
“城之内よりは上手に恋愛しないとな”
俺は黒板の方を向きながら思った。