報告〜featuring 武田〜
「はっら減ったぁー!!!」
四時限目のチャイムの後に城之内が叫ぶ。
「なー、一緒に飯食おうぜ! 飯!」
城之内は前の席の山本と、後ろの席の俺を誘う。
「おう!」
「あー、うん」
俺と山本はほぼ同時に誘いを受けた。
「お前、何かいいことでもあったのか?」
山本は弁当を開けながら言う。
山本の弁当には二品のおかずとご飯が入っていた。
山本が作ったにしては品数は少ない方だが、その代わりに量は多い。
「いやー? 特には」
城之内はニヤケながら山本の言葉を否定したものの、何かあった事くらいはわかる。
「お前嘘ついてんだろ」
そうは言ったものの、城之内の事より、山本の手作り弁当を開けたくて仕方無かった。
俺はワクワクしながら弁当箱を開ける。
「ん? お前のと中身が違うじゃねぇか」
俺は山本と俺の弁当を目で確認しながら言う。
俺の弁当にはご飯と豚肉巻き、唐揚げ。
山本の弁当にはご飯、マカロニサラダと牛肉の炒め物だった。
「同じが良かったのかよ」
「いや、俺の為に別のやつを作るんじゃなくてよ、同じもの作ったほうが楽じゃねぇか?」
朝の少ない時間で俺の為に別のものを作ってしまっては、時間はいくらあっても足りないだろう。
「俺とお前の弁当に、同じように盛り付けるのがめんどくさいから、まとめてたってだけだけど」
城之内と俺は山本が何を言いたいのか分からず、顔を見合わせる。
「どういう意味だよ」
と意味を問うと、
「俺とお前の弁当のおかずを、俺ら二人で分け合うんだよ」
山本は頭を掻きながら答える。
「なんだよ」
何か言いたげな城之内に、山本が尋ねる。
「お前ら一緒に住んでんのか?」
「バイトもしてない男子高校生二人が一緒に住めるかよ」
城之内の突拍子もない質問に、山本は速攻で否定する。
「じゃあ泊まってたんか」
と城之内は一人で納得し、飯を食い進める。
「んで、何か良いことがあったんだろ?」
忘れていた頃に山本が再び城之内に聞く。
「何も無いって」
城之内はニヤケながら否定する。
「教えろよ、オラ!」
俺は城之内の背後に回り、城之内の脇腹をくすぐる。
「おまっ! やっめろ!」
「どうだ? 教える気になったか?」
「わかったわかったわかった!! 取り敢えず座れ」
俺は椅子に座りなおし、山本と一緒に話を聞く。
「……華奈さんとLINEを交換したんだよ」
「…………」
あまりインパクトが無い報告で、思わず沈黙してしまう。
「なんで黙っちまうんだよ!」
「あー、いやー……いいんじゃね? おめでと」
返答に困った俺は取り敢えずおめでとうと言った。
「お前適当だな!」
と城之内に突っ込まれる。
「あれだけ俺から聞き出そうとしてこれかよ……」
少しイライラ気味の城之内に
「お前がこんなしょうもない事を、教えるのをもったいなぶったからだろ?」
と山本は更に城之内の神経を逆撫でする。
「お前っ!!」
「はいはいはいはい、落ち着けって」
立ち上がろうとする山本の両肩を抑えて制止する。
だが、山本はその様子を見て笑うだけだった。
「お前もやめろよな」
と山本にも注意すると、山本は咳払いをして笑うのをやめた。
「俺、めっちゃ頑張ったんだからな……」
と言う城之内に
「取り敢えずおめでとう」
と同じような言葉をかける。
「そう言えば、華奈さんにお前の連絡先教えても構わんよな?」
城之内は思い出したかのように言う。
「あれ? 交換しただろ?」
俺が戸惑いながら聞くと
「まー、色々あって消したってよ」
城之内は肩を竦めて答える。
「色々ってなんだよ! 何があったんだよ?!」