類似〜featuring 武田〜
「やっと着いた……」
山本の顔は死んでいるかのように真っ青になっていた。
「おい、大丈夫か?」
「……暑苦しすぎて死ぬかと思った…………」
山本は息切れ切れに返事をする。
「人混みは苦手なのか?」
「慣れてないだけだから……慣れないといけないし、そもそも……」
真っ青な山本から返ってきたのは支離滅裂な答えで、思わず話を遮り
「かいつまんで言うと苦手って事なんだな?」
と言ってしまう。
山本は頷き、フラフラしながら歩き出す。
その様子を見た俺は危なかっしくて落ちつかなかった。
俺は山本の肩を支え
「ほら、行くぞ」
と一緒に歩き出す。
「一人で歩けるし、一時的なものだから……」
と山本は弱々しい声で言っていたが、わざと聞こえないふりをした。
駅から出て暫く歩くと
「もう大丈夫だ」
と言って、俺の腕を振りほどく。
「ほんとに大丈夫か?」
「お陰さまでさっきよりは随分マシになったよ」
顔色も幾分か良くなった山本は微笑みながら答える。
「お前って人混みは大丈夫なのか?」
山本は不思議そうに尋ねる。
「大丈夫って言うんかな……」
俺は少し考え込み、
「ま、人混みが好きなわけじゃないが、少なくともお前みたいな拒否反応は出ないぜ?」
と答える。
「凄いな」
どうやら山本は感心したようだった。
「これからお前と学校行く時はもう少し早めに出ないとマズイな」
俺が山本にそう言うと、
「いや、そこまでしなくてもいいよ」
と返される。
「何でだよ。いちいち無理する必要は無いぜ?」
「いや、慣れないといけないから……」
山本はそう言うだけ言って前に進むが、何か言いたげな表情を見逃しはしなかった。
「おい、何か言いてぇ事でもあんのか?」
やはり山本は何か思い当たる節があるようだが、
「何でもないから」
と笑いながら歩き出す。
“何を聞いても無駄か……”
呆れ笑いをした俺は山本に置いていかれないように小走りで進む。
教室に入るやいなや、
「おぉい! また仲直りしたのか!」
城之内は大声で俺らを出迎えるが、山本は相変わらずいつものテンションで
「別に」
と言って席につく。
そんな山本を見て、城之内は舌打ちをするが
「お前らが喧嘩したら俺にまで被害が来るんだからな」
城之内は何故か俺に釘を刺す。
「あー、わかったわかった」
俺も山本に倣って同じような感じであしらいながら席につく。
「お前ら似てきてるよなー」
そう言いながら城之内も席につく。
「どこがだよ」
「何言ってんだよ」
俺と山本は同時に似たようなことを言うと城之内は笑い出した。
そんな城之内を山本は頭を叩き、俺は椅子を蹴る。
「わーったわーった!! 取り敢えず落ち着け! な?」
城之内は両手を挙げる。
「落ちつくから黙れよ?」
山本は城之内に忠告をして前を向く。
「友達なら似てくんのは当たり前だろ……なんでこんなに俺がやられるんだよ……」
城之内の呟きは俺には聞こえていたが、山本には聞こえていないようだった。
「俺ら、似てきてんのか……」
俺はそれが何気に嬉しかった。
「これからもっと似てくるんだろうな」
“これから先、楽しみだな!”