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2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
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自爆〜featuring 山本〜

 ──ピピピピッ!

 「もう朝か……」

 舌打ちをしながら伸びをした俺は、いつも通りに眠れていた事に違和感を感じる。

 隣で寝ていた筈の武田が隣に居ない。

 寝る前に抱いていたのは布団ではなく、武田の筈だ。

 “……武田は?”

 部屋中を見渡すと、机の上で力尽きてる武田が目に入った。

 “俺に密着されるのがそんなに嫌だったのか?”

 人には良くくっついてくる癖に、自分がくっつかれるのは嫌ってことが納得出来なかったが、取り敢えず武田が起きてると何かと邪魔される為、寝ている間に朝食と弁当を作る。

 

 キッチンで忙しく動いていると、

 「ドンッ!!」

 と何かが落ちる音がした。

 驚いて振り返ると、武田が椅子から転げ落ちた様だった。

 俺は急いで火を止め、武田の元に駆け寄る。

 「おい、大丈夫か? このバカ」

 「……最後まで聞こえてるぞ、このアホ」

 俺の言葉に少し遅れてはいたが、武田は反応した。

 「ならいいけどよ。 俺、朝食作ってるから」

 と言って大丈夫そうな武田を放置して料理の続きを始める。

 

 「美味そうだなー」

 なんともマヌケな声をしながら俺の元に近寄ってきて、後ろから抱きついて来る。

 「だから! 危ないって言ってるだろ!」

 と武田に昨日と同じことをしようとしたが、武田も負けてはいなかった。

 「昨日と同じ手が通用すると思うなよ?」

 「こっちは火を使ってるんだよ!」

 意地悪そうに笑う武田を後ろ蹴りして追い払ってから、また続きを始める。

 “なんでこんなにベタベタしてくる癖に、机で寝るような真似をしたんだ?”

 俺はその事でイライラしてしょうがなかった。

 

 「早く食べろ!」

 寝ぼけ眼を擦っている武田に早く食べるように急かす。

 「なー、なんでイライラしてんだ?」

 相変わらず寝ぼけた声で俺の神経を逆撫でするような質問してくる。

 「俺にくっつかれるのが嫌ならそう言ってくれないか?!」

 俺は武田に向かって朝から怒鳴ってしまう。

 “朝から怒ったらその日は良いことが起こらんよ”

 父さんの声が頭の中で響くがそれも無視する。

 「……お前って俺にくっついてたのか?」

 武田はキョトンとした顔で俺を見つめる。

 「あぁ! 抱きつくものが無かったから仕方なくお前に!」

 こんなこと言うのは恥ずかしくて仕方無かったが、イライラしてたからつい口走ってしまう。

 「だからかー」

 武田は妙に納得したように呟く。

 「どういう意味だ?」

 話が見えない俺は武田に尋ねる。

 「お前って何かに抱き着いてないと寝れねぇんだな?」

 武田にそう言われて俺は恥ずかしかったが、否定出来ず頷く。

 「いやー俺さ、寝返りを打った後お前の腕をずっと潰したまんまだと思っててお前の腕を退けたんだよな。んで、お前の寝顔を眺めて眠りにつこうとしたらお前に布団を取られたんだ」

 心当たりがありすぎて否定出来なかった。

 実際、過去の修学旅行で人の布団を奪い取った経験がある。

 「…………そう言われてみればそういう気がする」

 「それで俺は布団なしで眠ろうとしたんだけどよ、やっぱり眠れなくて『よし、勉強しよう!』って机に向かったら寝てたってわけよ」

 武田の話を頭の中で一通り整理した。

 「……つまり、俺のせいか?」

 「まー、そうだな」

 と頷く武田に

 「くっつかれるのが嫌って事は無いのか?」

 と聞く。

 すると武田は笑い出し

 「もちろん! 大歓迎だぜ? ほらほら」

 と両手を広げる。

 「ちょ、調子に乗るな!」

 俺はまた武田に怒鳴ったが、武田は笑うのを止めなかった。

 

 “……自爆してしまった……”

 俺はそればかりを考えながら朝食を食べるハメになった。

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