想起〜featuring 山本〜
「……落ち着かないな……」
俺は背後に警戒しながらシャワーを浴びていた。
理由は簡単。
“武田が風呂に乱入して来ないか”
それを意識し過ぎて気を休めることができない。
だが、そんな風にビクビクしながらシャワーを浴びて10分後。
結局武田が乱入する事は無かった。
“おかしいな……”
武田が風呂に入って来ない事に少し落胆している俺自身がいることに気付く。
“いや、俺は武田がいつもと違うから少し気にかけてるだけで、別に入ってきて欲しかった訳では……”
そんな言い訳をしながら湯船に浸かる。
『お前からキスしてくれたら』
武田はそう言っていたが、俺に出来るはずがない。
どうしても恥ずかしさが先行してしまい、攻撃的になってしまうのは考えものだ。
それに反射的に攻撃してしまう為、気がついた時にはもう遅い。
「はぁ…………」
大きなため息の後に、ふと押し倒された時を思い出す。
前回押し倒された時はキスから逃げるのに必死だったから考えもしなかった。
武田の力強さ、俺を見下ろした時の顔。
いろんなものを意識してしまった。
“何考えてるんだ!”
俺は急に穴があったら入りたい気分になる。
“好きな人とはいえ、男に押し倒されてドキってするなんて、女みたいじゃないか……”
俺は30秒ほど湯船に全身を沈め、気持ちを落ち着かせようとした。
“俺って女になった……のか?”
馬鹿げているが、そういう風に考える事も出来る。
「俺が女って、そんなことある訳ないだろ!」
俺は俺自身を叱った。
その後もいろいろ考えていたが、それもある程度落ち着いた頃、俺は急に疲れを感じた。
確かに今日は色々ありすぎた。
疲れてしまうのもわかる。
俺はその後は、武田が居ることも忘れ、ただ寛ぐだけにした。
“眠くなってきたな……”
俺はどうやら長く浸かりすぎてのぼせてしまったらしい。
湯船の中で寝落ちしてしまったら最悪溺死だ。
“とりあえず風呂から上がってベッドで休もう”
俺は冷水のシャワーを浴び、風呂から上がる。
俺は入浴後は基本、全裸で活動する。
俺はその状態で“誰も居ないベッド”で寝そべる。
ベッドの端に寄せられていた布団を被ろうとして引っ張ると、何やら違和感を感じる。
“また壁との間に布団が挟まってるのか?”
そう思い、取り敢えず布団を勢いよく上に持ち上げる。
実際、布団は壁との間に挟まっていたわけじゃない。
俺が布団を取るのに違和感を感じたのは、俺が忘れていた存在によるものだった。
俺は武田を見て思い出す。
“そういえばコイツも居たな。
寝かすのはベッドの上だとすると寝かすスペースが減るな”
そんな事を考えていると、武田は俺を見て少し驚いた表情をする。
「なんだ? 誘ってんのか?」
「じゃあお前は床で寝るのか?」
「いや……そうじゃなくてよ……」
俺は二人同じベッドで寝る事を言っているのかと思ったが、違うようだ。
「お前、服も着ずにこんなことするって本当に大胆だな」