押倒〜featuring 武田〜
「だ、誰がキスするかよ!」
山本は俺の拘束から逃れようともがくが、俺はそんな山本の腕を押さえつけて身動きが取れないようにする。
「なぁ、そんな暴れんなって」
「は! な! せ!!」
「だから、俺にキスしてくれたら離してやるからよ。ほら!」
「誰がするかよ!」
暴れてるせいか、それとも照れてるせいか、とりあえず顔が真っ赤に染まる山本を見ていると、何故か煽られてるような気持ちになる。
「一回くらい良いだろ?」
「嫌だ!」
「何でだよー」
「とりあえず離せ!」
山本が俺の言うことを聞いてくれないため、俺はため息をつき山本の上に倒れ込む。
「重いだろーが!」
「お前がキスしてくんねーからまともに座れんくなったんだよ」
「いい加減にしろ!」
「お前こそいい加減キスしろよ!」
「ふざけた事ばっか言うな!」
話は相変わらず平行線を辿る一方だった。俺は馬乗り状態に直り、
「お前って何でそんな冷たいんだ?」
「別に冷たくないし!」
「でもキスしてくれねぇじゃねぇかよ」
山本に素朴な疑問をぶつけると
「は、恥ずかしいからだよ!!」
山本はそう言うと顔を横に背ける。
俺はその仕草が可愛すぎて
「お前可愛いな」
と山本を褒めたが、山本はそれが気に食わなかったのか、俺の言葉の直後、俺の両脇腹に刺激が走る。
どうやら俺が態勢を変えた時、俺は山本の腕を拘束し続けるのを忘れていたらしい。
「ぅがぁっ!」
俺はその衝撃で床に顎を打ち付ける。
その隙に山本は俺の下から抜け出し、
「俺はまだ夕飯食べ終わって無いんだぞ?!」
そう言って山本は残りの夕飯を食べ始めた。山本の顔は少し悲しそうだった。
悲しそうな山本を見て急に罪悪感を感じた俺は、顎をさすりながら
「すまん……」
と謝ったが、効果は無いようだった。
「……ごちそう様でした」
山本はそう言って片付けを軽く済ませた後、
「風呂に入る」
と山本は独り言かのように呟き、風呂場に向かった。
“俺も一緒に入る!!”
と言いたかったが、そう言える雰囲気でもなく、
「行ってらっしゃい」
とだけ言って見送った。
山本の入浴中、俺は山本のベッドの上で寝そべっていた。
「可愛かったなぁ……」
押し倒したあとの山本の反応が可愛いかった。あれじゃあ煽りとも取れる。だが、敢えて自分からだけではなく、山本からもアクションを起こして欲しかった為、俺からキスすることはしなかった。
俺は山本の布団を被り、
「これが山本の匂いがすんな……」
なんて呟きながら俺は徐に目を閉じた。