表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
45/85

真相〜featuring 武田〜

 「よー、武田! 今少し話せるかー?」

ダルイ四時限目が終わった瞬間、城之内はいつもより小声で俺を呼ぶ。

 「なんだよ」

俺は顔も上げずに返事をすると、城之内は後ろを気にしながら

 「山本の事なんだけどよ……」

と話し始める。

 

 「山本か……」

 「そう! 山本!」

俺の呟きに城之内はすぐに反応した。

 「んで、山本がどうかしたのか?」

俺は山本の事を尋ねる。

 「それがよ……」

 「やっぱり屋上で話さねぇか?」

俺は城之内の会話を遮り、屋上へ行くよう促す。

 「おぉ、良いぜ」

と城之内は快諾してくれた。

 

 “山本か……”

次は心の中で呟いた。

 山本とはキスの件以来、顔も合わせていない。しかも今回は城之内が俺らの間に入ってくる事も無く、俺らの距離は縮まらなかった。

 確かにあのやり方は強引ではあったが、俺に振り向いてもらおうと焦っていた。それに、山本の言動が気に食わない。俺に好意を寄せてる様な物言いの割には、俺が触れようとすると拒絶する。

 それに、山本は受け容れられていない。俺が山本と築こうとしている関係の事を。確かに“普通”じゃない。だが、“普通”じゃなくて何が悪いのか、俺にはさっぱりだった。俺らが関係を持った所で、誰に迷惑を被るのか。誰も迷惑を被らないのであれば止める必要も無いのではないか、と思う。

 俺らは特殊かも知れないが、“普通”の人達の恋愛の本質は一緒では無いのだろうか。もし“普通”の恋愛の本質が繁殖なら何も言えないが、好きな人と人生を共にしたいというのであれば、なんら違いは無いと思う。それ故に、同性同士の関係が世間では受け容れられないのか、そして山本が受け容れられないのかが理解出来なかった。

 それ以前に、山本が俺と付き合うことが出来ないのならはっきりそう言ってくれた方が俺としてもやりやすいのだが。

 

 「……武田聞いてるかー?」

 「あぁ、すまん、聞いてんかった」

城之内は俺の顔を覗き込んでいた。

 「ったく……。じゃ最初から話すぜ?」

 「すまねぇな、頼む」

城之内はまた一から俺に話してくれる。

 「山本ってさ、別れたんだよな」

 「みてぇだな」

 「んでさ、好きな人が居るってのは聞いたか?」

 「知らねぇよ」

俺は山本が俺に対して好意丸出しってのは有り得ない。俺もその相手のことが気になった。

 「んで、誰なんだ?」

 「伊集院 華奈って名前の山本の元カノの友達」

と言いながら彼女の写真を見せる。

 「てかこの写真……山本も写ってんぞ?」

 「昨日華奈さんが山本を呼び止めてた、なんか怪しいと思ったからつけてみたらこうなってたってわけよ」

 「つまりはストーカーして盗撮もしたってことか?」

 「ひ、否定はできんけど……。華奈さんのことが好きだからよ…………」

と恥ずかしそうにする城之内はほっとく事にした。

 そして俺が拒絶された理由が分かった気がした。

 “やっぱり俺じゃダメなんだな”

そう思った瞬間、屋上のドアが勢い良く開いた。

 「城之内! お前昨日俺の事をつけてたな?」

山本は腹立っているようだった。

 「あ、いや……華奈さんと会ってたから、なんかあんのかと思って……」

 「ったく! そのせいで華奈は典子に散々問い詰められたとよ」

 「マジか?! それは悪かった……」

俺には話が見えなかったが、どうやら城之内がストーキングした直後、何かあったようだ。

 「でもよ、華奈さんと山本ってどんな関係なんだ?」

城之内は真剣な顔だ。

 「もし好きって言うなら奪いに行く覚悟だ!」

城之内が男らしさを見せるが、山本はそれを鼻で笑った。

 「いや、そうじゃないんだよなー……」

と言った山本は後頭部を掻きながら話し始める。

 

 「俺と華奈は従姉なんだよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ