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2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
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寺田〜featuring 山本〜

 「どういう意味だ?」

俺は華奈の言っていることが理解出来なかった。

 「私はあなたの……亡くなった母親の妹の娘なんです」

華奈はそう告げた。

 「なんでこの事を言う必要があるんだ?」

俺は平静を保とうとしたが、声には戸惑いが表れる。

 「もし、助けが必要なら……と思いまして……」

 「助けってなんだよ」

俺は華奈の言葉に呆れるしかなかった。

 「それに、今頃何が出来るって言うんだよ」

俺は問い詰める。

 「はぁ……」

華奈は深いため息をついた後

 「私の母があなたの事をサポートしたいと申しているのです」

華奈は俯き、首を横に振る。

 俺にはその行動の意図が読めなかった。

 「あなたの御両親が亡くなった時、私の母は経済的な理由で引き取る事が出来なかったのです」

 「知ってる」

俺は養子に出された事に対して不満はない。それに、経済的な事情なら仕方ないだろう。だが、経済的に厳しい家庭が私立など行けるのだろうか。

 その疑問は華奈の次の言葉によって解決する。

 「ですが、2年前に母が再婚してからは幾らか生活に余裕ができ、私も如月高校に通うことが出来ました」

 華奈は続ける。

 「母はあの時、引き取れなかった事に罪滅ぼしをしたいと考えているのです」

華奈の顔は真剣だが、俺はつい笑ってしまう。

 「なら、華奈の母親に何も恨んでなんかいないし、そういうのはしなくて大丈夫って伝えてくれないか?」

だが、俺は何故華奈が俺の両親の事に気づいたのか疑問だった。

 「なー」

 「なんでしょう?」

 「なんで俺が華奈の母親と関係がある事に気づいたんだ?それに、俺は華奈の母親に会った覚えがないぞ?」

俺は華奈の顔には見覚えがあった。恐らく典子がたまに送ってきた写真に載ってるのを見たのかもしれない。だが、母親の方となると見当もつかない。

 「あなたの声に聞き覚えがあったからです」

華奈はそう告げる。

 

 「この写真を見れば信じてくれる、と母が」

そう言って1枚の写真を取り出す。

 俺はそれを見て、思わず声を上げる。

 「寺井さん……?!」

その写真に写っていたのは、俺が里子だった事を知り、荒れてた時に俺の事を救ってくれた人だった。

 「覚えているみたいですね」

華奈は安心したように微笑む。

 確かに目の前にいる華奈に目元、口元が似ている。もしかすると華奈を見た事は無いが、その母親、寺井さんの面影を無意識に華奈に探していたから見覚えがあると思ったのかもしれない。

 「寺井さんは元気か?」

俺は寺井さんに、華奈の母親に会いたいと思った。

 「えぇ。 一応は……」

俺は華奈の『一応』という言葉が気にかかる。

 「一応……って?」

 「いえ、気にしないでください! 元気ですよ! 一応って言ってしまうのはいつもの口癖なので……すいません」

華奈は立ち上がって否定する。

 「あぁ……なら良いけど……」

俺は何かと気にかかるが、華奈がそこまで言うなら、と忘れることにした。

 

 「俺、寺田さんに会いたいな……」

と呟くと、

 「母にその事、伝えておきますね!」

華奈はニコッとして

 「連絡先交換しておきましょうか」

と言ってLINEを交換した。交換が終わると、華奈は立ち去ろうとする。

 「待って」

俺は華奈を呼び止める。

 「寺田さんには充分救われた。だから、俺の事を気にかけないでくれ、って伝えてくれるか?」

俺がそう言うと

 「わかりました」

と手を振って店を出て行った。

 

 「寺田さんに会えるなんてな……」

恩師に会えるのを楽しみにした。

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