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2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
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従姉〜featuring 山本〜

 ピピピピッ!ピピピピッ!

目覚まし時計の音は俺を夢の中から現実世界へと連れ戻す。

 「朝か……」

ダルい体を起こし、いつも通りに支度をしていつも通りに登校する。何もかもいつも通りだったが、武田ともいつも通り、という訳には行かなかった。

 今の俺には武田に合わせる顔がない。俺は武田を傷つけたはずだ。その証拠に武田も俺とは目も合わせなかった。

 

 「なーなー」

城之内の調子もいつも通りではなかった。

 「なんだよ」

俺は後ろを振り向かずに返事をする。

 「あの子って彼氏いると思うか?」

城之内は少しソワソワした様子だ。さっぱり見当もつかない俺は城之内に聞き返す。

 「あの子って誰だよ」

 「あの子はあの子だよ」

そう言って城之内は机から身を乗り出し

 「お前の……元カノの友達だよ」

俺の耳元で囁く。

 「知るかよ」

俺は前を向いたまま答えるが

 「あんな美人さん、相手が居てもおかしくないよな……」

独り言を呟き自分の席にきちんと座った城之内に

 “城之内にも春が訪れそうなのか”

と心の中で少し祝った。

 

 それから約1週間、俺と武田はろくに顔を合わせず、学校を過ごした。いつもなら気にかけてくれる城之内も今回ばかりは自分の件で忙しいらしい。その証拠に『華奈さん……』と時々呟いている。

 その間に、俺らの高校が地区予選に出ていたが、その時でさえも俺と武田は言葉を交わす事はなかった。

 

 “仲直りしたい”

俺は常にそれを思っていたが、それを口に出す事が出来なかった。

 “武田は常に歩み寄ってくれたが、俺が歩み寄った事はあるのだろうか……”

 そんなことを考えながら下校していると、

 「倖大……さん?」

と後ろから女性の声がする。振り返ると、そこにいたのは典子の友達の華奈が少し走り気味で追いかけてきた。

 「あ、あの時の」

俺は華奈に会釈をする。

 「あ、いえ……」

華奈も会釈を返す。

 「城之内の件でか?」

 「いいえ、違います」

華奈は俺の質問にハキハキと答えてくれる。さすがお金持ちの学校出身。育ちの良さというのを感じる。

 「じゃあ何の件なんだ?」

 「今ここでお話するわけには……」

華奈は俺の問いに周囲を気にしながら答える。

 「あちらのお店でどうです?」

 「別にいいけど……」

華奈が指差した方向にあるファーストフード店で話すという事になった。

 

 「ごちそうさまでした」

華奈は両手を合わせた。華奈は注文したバーガー、ポテトを上品に平らげた。どうやら腹が減っていたようだった。

 「すいません、今日のお昼が少なかったので、つい……」

 「あ、いや、全然大丈夫」

 遠慮しないでファーストフードを食べるのは典子も同じだが、典子とは違う感覚だった。どこをどう取っても『The・お嬢様』って感じだった。

 

 「さて……」

華奈はそう言って、俺を真剣な目で見つめる。

 「……今日お話したい事は城之内さんや、典子の事ではなく、あなたのご家族についてです」

 「どういう事だ?」

 華奈の落ち着いた声に嘘などは感じられなかったが、何を言いたいのかも理解出来なかった。

 華奈は深呼吸をして

 「あなたの、ご家族の事です」

ともう1度繰り返した。

 「違う違う、そういう事じゃなくて」

と否定された華奈はキョトンとしていた。

 

 「その……俺の家族と華奈さんに何の関係があるんですか?」

そう言うと華奈は再び深呼吸をして

 「あなたは……私の従兄弟にあたる……はずです」

と告げた。

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