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2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
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決別~featuring 嶋田~

「多分好きな人、いないよ?」

 華奈の言葉は1番聞きたくない事だった。

 「なんでそんな事わかるの?!」

 私は華奈に怒鳴ってしまった。

 「じゃあ、なんでそんな事が分からないの?」

 華奈は私に質問を返す。

 「なんで私が質問してるのに華奈が質問するの?」

 完全に取り乱してる私とは対照的に華奈は落ち着いてた。それが余計に腹立たしかった。華奈はため息をついて

 「私を頼りにしてくれたなら、少しは信じて貰ってもいいんじゃない?」

 と言って

 「彼氏は女子と歩いてないし、友達と話してるだけじゃない。別に好きな人がいなくても別れたくなるって。それに、彼氏のことばかり責めてるけど、自分のその性格に非は感じないの?」

 と私の1番気にしてる性格について指摘された。

 「なんでみんな倖大を庇うの?!」

 と怒鳴るつもりが、涙が出て思うように怒鳴れなかった。突然倖大の隣にいた男子が

 「疑いたのもわかるけど、俺もコイツに好きな人が出来たとは思えないよ」

 と言う。

 「アンタには関係無いでしょ?!」

 という言葉も鼻声になってしまった。普段はあまり泣かないのに、涙が止まらなかった。

 「ね、典子」

 と華奈は私の肩をさすって

 「もし落ち着いて話せるなら、他の場所で静かに話さない?ここ、人が多いから」

 と優しく話しかけてくれた。さっきまで華奈に怒鳴っていて、嫌われててもおかしくないのに、こういう風に優しく声を掛けてくれるというのが嬉しくて、妙に腹立たしくて、でも有り難かった。

 “落ち着いて話せるなら”

 そういう自信は無いけど、でも華奈が私に愛想を尽かさずに一緒に居てくれてるから、華奈の為にも落ち着いて話そう、そんな気になり、華奈の問いに泣きながらも頷いて答えた。

 

 ── 私の性格に難があるのは自分でも知っていたし、倖大が実は私の事があまり好きじゃないのかも知れないって思ってたし、それでも私に合わせてくれようとしてたけど、何かと求めすぎてしまったり。

 恥ずかしいが故に感謝とか、謝罪とかも出来なくて、そんな性格を責めたりすることもあったり。

 別れ話も遠くない将来にすることになる事も薄々気づいていたけど、別れたくなかった。好きだから。

 でも、倖大は私と無理して付き合うより、好きな人と付き合えた方が良いだろうし、好きな人が出来なくても私に呆れたり、愛想を尽かして去っていくのかも、とも思ってた。

 とにかく私に非があるって事を知っていても、倖大のせいにしたかった。 ──

 

 私と華奈と倖大、そしてその友達はファーストフードの店で話し合うことにした。お父さんには『少し遅くなる』と連絡を入れた。私はお店で、私の考え、気持ちを全て伝えた。誰一人私のワガママな気持ちを否定したりしなかった。全部話しきった後、私はしばらく泣いていた。そんな私に華奈は胸を貸してくれた。

 ひとしきり泣いた後、私は倖大に最終確認をとった。

 「本当に私と別れたい?」

 「…………うん」

 倖大は少し沈黙した後に答えた。

 「………………そっか」

 と呟き

 「わかった。 別れよ」

 と言った。

 「……………………ごめん」

 倖大は俯きながら、自分はそんな悪くないくせに謝っていた。付き合ってた頃も頻繁にこんな事があった事を思い出して、

 「倖ちゃん」

 と声を掛け、

 「今までごめんね。 あと、ありがと」

 そう言ってお店を後にした。華奈もすぐ私を追いかけて来て

 「何かあったら相談乗るからね?」

 と言ってくれた。

 「華奈にも言わなくちゃ。 さっきはごめんね」

 「ううん、大丈夫。 気にしなくていいの」

 華奈は微笑む。

 「……ありがと」

 と感謝した後、

 「これからもこんな私だけど、友達で居てくれる?」

 聞くのが少し怖かったけど、聞いてみた。もし嫌と言われたら、迷惑をかけないようにしないといけないから。

 「もちろん! 私達はずっと友達だよ!」

 華奈の元気な声は私を励ましてくれた。

 

 「ありがと。 じゃあ、またね」

 そう言って私は華奈に手を振り、お父さんの車まで歩いていった。

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