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2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
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完勝~featuring 武田~

一回表の攻めの快進撃は、その裏の守備でも見ることが出来た。

 海藤先輩の鋭いスライダーと豪速球のストレート、時折投げるチェンジアップの組み合わせで三振を奪う。それが見切られ打たれても、ライトの須鎌先輩と綾瀬先輩の連携でゲッツーにしたりと、相手の加点を殆ど阻止している。

 “こんな凄い人たちと一緒に練習が出来るなんて、俺は恵まれてるな”

 俺は頭の中で呟く。まだ初戦だが、この勢いを保っていけば優勝も有り得る。俺が出る幕は殆ど無いだろうし、出てもあれほど活躍は出来ないと思う。俺の夢を叶えるために、この1年、先輩達から色んなものを吸収して、来年、若しくは再来年に活かしていきたいと考えている。

 「それでも来年か……」

 心で思っていたことが、つい口に出てしまう。甲子園に出られるだけで親父は喜んでくれるが、きっと世間的に控え先輩の俺が話題に上がることは無い。とすると、母に知ってもらうのは早くても来年になりそうだ。

 “ま、簡単に叶うことじゃないし、やっぱり今年は技術を盗むのに専念しよう”

 と気持ちを切り替えていった。

 

 俺らのチームは二回表から五回表までで6点を取っている。一方相手は、というと四回裏までで3点だ。このまま俺らのチームが勢いに乗ったまま相手への加点を許さなければ、コールドゲームは確実だろう。監督も先輩達もそのままコールドゲームに持ち込もうと考えている。

 “コールドゲームに持ち込む”

その心意気でライトの須鎌先輩が打席に立つ。

 そこからの展開は凄まじかった。

 須鎌先輩がセンター前ヒットを繰り出すと、海藤先輩の時はフォアボールで進塁。次の打者寺田先輩、神谷先輩はそれぞれヒットを出し、須鎌先輩がホームインし、1点獲得。そして満塁のチャンスの中、綾瀬先輩の打順が回ってきた。

 相手チームは投手を替えたが、その判断は逆に誤りだったのかも知れない。その投手が投げた球は綾瀬先輩が全力で振ったバットに捕らえられる。

 ── カコーーーーーン ──

 消音バットが使われているにも関わらず、大きめの打球音をグラウンドに響かせる。打球は上空を高く飛び、、そして吸い込まれるように観覧席へと入った。

 「よっしゃぁぁぁぁぁ!!!!!」

 ベンチから響き渡る歓喜の声。それよりも大きい歓声が観覧席から響く。

 満塁ホームランだ!

 余裕な顔をして帰ってくる綾瀬先輩に抱きついたり、

 「デカしたぞ!」

 と頭や肩を叩いたりする先輩達。俺も

 「綾瀬先輩、最高にカッコイイっす!」

 と声をかけた。

 

 相手チームの戦意はガタ落ちしているのがわかる。俺らのチームはその後も3点追加点をとり、その裏では相手の追加点を許さず、、18-3でコールドゲームとなり、試合が終わった。

 

 俺は山本に

 “ミーティングとかで長くなりそうだから、先に帰っといてくれ”

 とLINEを送ってミーティングに参加した。

 「まだ浮かれるには早いからな! 今日の勢いに乗じて、今後の試合も気を抜かずに決めていけ!」

 と監督からの言葉に大きな声で返事をするチームだが、未だにメンバーの顔から笑顔は消えていない。監督が今日の試合の感想、改善点などを話し始める。

 「今日は家に帰ってゆっくり休め! また明日の早朝から練習を始めるからな!」

 と監督が締めの言葉を言うと、ミーティングは終わり、俺らは球場を後にした。

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