華奈~featuring 嶋田~
一体何が起こったのか分からなかった。
“うちの典子と別れるとか、よくもふざけたことが言えるな!?”
そういう風に倖ちゃんのことを叱って貰いたかった。ああいう風に倖ちゃんの事を擁護して欲しくなかった。
お父さんが倖ちゃんに『私と別れるのは間違ってる』って教えて欲しかった。
「私と別れることを選ぶなんて間違ってる」
そう呟いて、みんなと合流しに行った。
「おぉ、愛しの典子様ではありませんか! 今日もお美しい!」
とほざく一人の男子生徒に
「私の機嫌が悪いのに、よく話しかけられるわね!」
と怒鳴った。
「なんで典子怒ってんの? また彼氏?」
と私の後ろから女子生徒が優しく声をかける。
「華奈ぁ~!」
と言って私は華奈に抱きつく。
伊集院 華奈はいつも何かと気をかけてくれる、優しい親友。彼女には私とか友達の僅かな変化にも気がつく。でも、そんな華奈には彼氏は居ない。気配りが出来て、とてもいい子なんだけど、カンが鋭すぎて浮気はもちろん、相手が何を考えてるかって事までわかることもあって、彼氏の方が華奈の事を怖がって別れられることが多いみたい。
そして、さっきうるさく絡んで来たのは土肥 航平。入学した初日に私に告白してきた、バカ。振られてるのにも関わらず、私の後ろをヒョコヒョコ付けるようなストーカーまがいの行為を平気で行う頭のイカれた男子。
「それがねー、彼氏に別れてって言われたの!」
と華奈に報告すると
「えぇ?! 典子様と別れるなんて! なんて最低最悪なクソ野郎なんだぁぁ!!! ぐほぉっ……」
華奈は顔面にストレートパンチを決めることで航平が叫び出すのを止めた。
「うるさいから黙ってもらえる?」
と華奈は航平を睨んだ後、
「ねー、華奈。別れたいって理由は聞いた?」
「友達に戻りたいって……」
と言った私のそばで
「その答え! 典子様と友達止まりの俺には憎たらしさしか感じませんぞ! ぅぐっ!」
と言った航平は、私のボディーパンチで地面に平伏す形になった。
「さっきからうるさい! それに、あんたとは友達なんかですらないし!」
と憤ると
「典子様のボディー、有り難く受け止めました……」
と蹲りながらも馬鹿らしい事を言う。
「とりあえず、彼に会って、何かを探って欲しいの」
と華奈に頼み込む。
「えぇ~? 私が典子の彼氏に会いにいかないといけないわけ?」
と華奈は驚いていたが
「華奈の能力で彼が好きな人がいるか見破って欲しいの!」
と懇願してみる。
「能力って……」
と呟き、ため息をつく華奈に
「じゃあ……」
と耳打ちをすると、華奈の顔は輝きだし、
「仕方ないなぁ~」
と何故か体をほぐし始めた。
「じゃあ、今日帰るときに、ね?」
「今日、帰るとき!受け取りは明日!」
私と華奈はがっちり握手をした。