戯事~featuring 武田~
「わかった。お前にはどうしても床に寝て欲しくはない。だから、こうしよう。2人でお前のベッドに寝るってのはどうだ?」
その答えを待っていたはずなのだが、そう言われた俺は半信半疑だった。
「いい…のか?」
という俺の問いに、
「仕方ないだろ?」
と山本は肩をすくめた。
俺は風呂場で、山本に触れるという欲求に逆らえなかった。もし、ベッドの中でそのような事になってしまったら、俺らは2度と一緒には居られなくなるのかもしれない。
「………いや、俺は別の場所で寝るよ…」
と言い、部屋を出た。でも、山本はすぐに追いかけてきた。
「おい、どこで寝る気だ?」
そう言った山本の顔を見れば、俺のことを心配しているのがわかる。俺はため息をつき、
「悪い、やっぱり湯船に浸かってくる。お前は先に寝といてくれ。ちゃんとベッドで寝るからよ」
と言った。山本は
「あぁ、わかったよ」
と静かに部屋のドアを締めた。
俺は湯船にお湯を張り、静かに浸かった。
“俺が欲求を我慢していれば、アイツと浸かることも出来たかもしれないのにな”
ありもしないような事を後悔していた。
“何焦ってんだよ…”
己の弱さを実感し、明日の試合に打て込めるかどうかも不安になってきた。
「ダメだダメだ! 試合と山本とは別だ!」
と自分の心に、口に出して言い聞かせた。暫く浸かっていると、のぼせてきた為、俺は風呂から上がる前に冷水を浴びて、頭の雑念を振り払った。風呂から上がり、冷やしてあったスポーツドリンクを飲み干した。
1度心を落ち着かせ、部屋に向かった。
「寝てろよ…山本………」
と呟き、ドアを開けた。山本はベッドで眠っているようだった。
「良かった」
と呟き、俺は山本の隣で横になった。
“山本がいると落ち着かねぇな”
と感じたが、隣で寝てくれるのはとても嬉しく、夢のようだった。
始め、俺は山本に背を向けて横になっていたが、山本の寝顔が見たくて、山本の方を向いた。山本は俺に背を向けて眠っていたが、山本の姿を見るだけで嬉しくなる。そして、山本を愛おしくて感じて頭を撫でようとしたが、触れる寸前で手を引っ込めた。そして、
「我慢しろっ!」
と自分を律するように呟いた。その瞬間、山本は寝返りを打ち、俺の方を向いた。
“起こしたか?”
と思ったが、山本は静かに寝息を立てていた。
俺は暫く“山本に触れるか、触れないか”で悩んでいた。だが、山本の寝顔を見てるいと、触れずには居られなかった。俺は山本の頭を撫で、頬に触れた。
そして、ダメだとは思いながらも、山本の額にキスをした。