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2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
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確信~featuring 山本~

「好きだよ」

 

武田は俺を抱きしめてる時に、そう耳元で囁いてくれた気がした。俺も嬉しかったが、まだ素直に喜べはしない。

 「もういい加減離せよ」

 と言って武田の背中を叩いたが、

 「もう少しだけ」と囁かれ、少し強く抱きしめられた。思わずため息をつき、言われた通りもう少し待ったが、離してくれる様子はなかった。

 「おい!」

 とさっきよりも少し強い力で背中を叩くと、

 「わかったよ」

 と言って武田は俺を解放してくれた。武田は、俺の肩に手を置き

 「ありがとな」

 と言った。抱きしめられてる時でさえ赤かった顔が、さらに赤くなった気がした。武田はそんな俺を見て

 「可愛いな」

 と言って、からかう。俺はからかう武田のスネを蹴った。武田は痛みで悶絶してその場に踞るが、少しすると立ち上がった。立ち上がった武田に俺は

 「早く昼飯食わないと。それにお前の好きな唐揚げもあるぜ」

 と昼飯を食べる為、教室に戻るように催促すると、

 「唐揚げ? マジか?! 今行く! 早く食いに戻ろうぜ!」

 と言って俺に駆け寄ってきた。

 

 帰りのHRも終わり、帰る支度をしてると

 「山本」

 と武田は俺に声をかけて歩み寄った。

 「なんだ?」

 と返事すると、

 「明日、地区予選だろ? それで………お前も来るのか?」

 と聞かれ、

 「当たり前だろ?」

 と即答した。すると、武田はモジモジしながら、

 「今日、俺ん家に泊まりに来ねぇか?」

 と言ってくれた。俺は嬉しくて、笑顔で

 「OK、わかった」

 と答えた。

 すると、武田は公衆の面前で思いっきりハグしてきた。

 「おいっ、武田…」

 と言った直後に、こちらは思いっきり武田の足を踏みつける。武田は 

 「痛っ!」

 と言って俺を睨むが、

 「勝手に俺に触るからだろ」

 と忠告した。そして、

 「さっさと練習して来い!」

 と武田を教室から送り出した。

 

 「さて、と。」

 そう呟いた俺は、1度家に帰った。そして着替えを準備して、武田用に唐揚げを20個くらい揚げた後、また学校へと向かった。

 まだグラウンドでは野球部の声が響いていた。グラウンドの端で座って、野球部の練習を見ていたのだが、気づけば武田の事を目で追っていた。

 「俺ってやっぱり武田の事、好きなのかな…」

 そんな独り言を言い、呆れ笑いをしていると、武田がこっちに向かって手を振っているのに気がついた。俺は立ち上がって武田に見えるように大きく手を振る。すると武田は満足そうにして練習に戻った。そんな無邪気な姿を見ると、武田のことが愛おしくて堪らなくなる。

 「典子にこんな風に思ったこと無かったのにな」

 と呟き、やはり典子への気持ちと同じ“友達としての好き”という気持ちではないんだ、と確信する。

 俺はふと思い出したようにスマホを見るが、典子からの反応は何も無い。

 「典子のやつ、連絡して来ないな。分かってくれたんかな…」

 ともうすぐ暗くなる空を眺め、目を閉じた。

 

 “そういや、昨日はあまり眠れなかったな”

 と心の中で呟くと、いつの間にか深い眠りについていた。

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