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2人はその時、本当の愛を知った  作者: 楯山 鐘光
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回想~featuring 嶋田~

何がなんだか分からなかった。突然の電話、そして

 「友達に戻ってほしい」

 という言葉。天地がひっくり返ってしまったような衝撃だった。

 「なんで? なんで私の事を捨てようとするの?」

 と呟く。

 なんとなく、こうなる気はしていた。だって、倖ちゃんはいつだって受け身で、私の事を思って色々してくれてた。だけど、唯一私が気に食わなかったこと。それは倖ちゃんから

 「好き」

 と言ってくれなかった事。

 

 倖ちゃんは中学2年くらいの時、倖ちゃんのお母さんが亡くなった時くらいから自分の感情はなかなか出さなくなった。誰かに言われて、始めて口にする程度。

 “私と付き合えばなにか変わるはず”

 と思っていたけど、実際、何も変わっていなかった。その証拠に、倖ちゃんは自分から、私に

 「好き」

 と自分から言ってくれなかった。

 「私たち、2年も付き合ったんだよ? それなのに、いきなり別れようだなんて…」

 私は椅子に座り、天井を眺めながら涙を零した。そして、輝かしい笑顔をした倖ちゃんの写真が入った写真立てを手に取り、

 「私の何がいけなかったのかなー」

 と問いかける。だが、写真から返事が聞こえるわけもなく、

 「そりゃ、そうよね」

 と言って写真立てを伏せた。

 私は頭が良い方ではなかった。成績は中の中くらい。でも、倖ちゃんは上の上とか、上の中くらい。倖ちゃんはそれくらい頭が良かった。倖ちゃんが“鹿野高校に行く”と聞いた時、私には到底無理だと思ったけど、倖ちゃんの為ならという事で、塾にも通い、必死に勉強した。

 しかし、結果は不合格。私は倖ちゃんと同じ高校に行く為に頑張ったけど、報われなかった。そして、私は滑り止めの如月高校へと進んだ。倖ちゃんは“俺も如月高校に行くか?”と聞いてくれたが、倖ちゃんは、立派な大学に行くために有名な進学校に進んだのが分かっていたし、私の家と違って私立に通うお金は無いはず。だから、“私と同じところに来なくて良い。”と伝えた。あの時は正しい選択だと思っていた。

 でも、今ではあの時の選択は間違っていたと思っている。もしもあの時、倖ちゃんに無理をしてもらってでも如月高校に来ていたら、こんなことにならなかったと思う。

 私はため息をつき、倖ちゃんが別れようと言う理由を、頭の中で考えてみた。倖ちゃんは

 “友達としての好きなのか、恋人としての好きなのか、どっちの好きなのかがわかっていなかったんだ。”

 と言ってた。

 

 「誰なの?」

 と呟いた。

 「誰がこの好きって気持ちの違いを気付かせたの……?」 

 もし、その“誰か”が気付かせてくれなければ、私はこんなに悲しむ事はなかった。倖ちゃんは、自分の中の私への“好き”という気持ちに疑いを持っていて、それを誰かが確信に変えたんだと思う。もしそうなら、憎むべき相手は倖ちゃんではなく、その“誰か”なんだ、という結論に辿りついた。

 私はカレンダーを睨みつけた。明後日、倖ちゃんに会ってみれば分かることだと思った。もし、誰かが倖ちゃんと親しくしていたら、その人を問いただそう、と考えた。

 “何故、彼女がいると知っていて近寄ったのか”

 “あなたは倖ちゃんに何を言ったのか”

 聞きたい事は山ほどある。私は紙とペンを取り出し、その人を見つけ出した時に質問する項目のリストを書き始めた。

 

 「私の倖ちゃんは、絶対に渡さない!」そう呟いた。

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